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2026.01.23 17:00

気鋭のZ世代経営者が明かす「“SNSネイティブ世代”の正体」


SNSネイティブであり、タイムパフォーマンス(タイパ)を重視し、エモさを消費の基準にするZ世代。そんな彼ら彼女らの心を動かし、共感を呼ぶマーケティングを得意とするのが「僕と私と株式会社」だ。

自らもZ世代の当事者であり、同世代ならではのリアルな“感覚”や“感情”を知る代表の今瀧健登氏は「エモ消費の潮流を抑えることが、商品が選ばれるか否かの分かれ目になる」と語る。

Z世代を理解するためのポイントや、抑えるべき勘所について今瀧氏に聞いた。

SNSネイティブのZ世代が“自分ごと化”する共感軸のつくり方

── 会社では「餅は餅屋に、Z世代はZ世代に」をコンセプトに掲げていますが、具体的にどのような支援を手がけているのでしょうか?

企業がZ世代のインサイトを正しく理解し、共感や好感度を高めたいという目的でプロモーションを支援するケースが多いです。

通常、企業がZ世代向けのプロモーションを行う場合は実際にヒアリングを行ったり会議に参加してもらったりと「一度理解するプロセス」を挟みます。対して、当事者のZ世代自身が企画すれば、そうした過程を省けるため、最初から等身大でリアルな感覚を反映することができます。

また、Z世代向けの企画で「違和感があるかどうか」を判断する目安としては、「若者」という言葉が使われているかどうかだと思っていて。Z世代自身は自分たちのことを「若者」とは呼ばず、この表現は上の世代が下の世代を指すときに使うため、企画や広告に「若者」という言葉があると、Z世代の感覚には合わないと感じてしまいますね。

── Z世代をターゲットに商品やサービスを展開する際に大事なことは何ですか?

よく例えに出すんですけど、海外でラーメン屋や和食屋に入ったときに、「日本人が監修しているお店」と「ひらがなや漢字などの文字を並べただけの“日本風”を演出しているお店」は、入った瞬間にわかるじゃないですか。知らない人から見ると“日本っぽさ”を感じるかもしれませんが、わかる人には表面的に取り繕っているだけだとわかる。

こうした現象が、今まさにZ世代向けの表現にも起きていると思っています。

Z世代は情報を調べたり商品を購入したりと、消費行動の中にSNSが組み込まれているのが当たり前になっている「SNSネイティブ世代」です。

Z世代マーケティングでは「エモい」というキーワードが一つの起点になっていますが、相手が自分ごととして受け取り、共感が生まれてコミュニケーションが広がっていく状態を作るのがマーケティング上の「エモ」だと考えています。

しかし、本来の「エモい」という言葉自体は、僕らの世代にとってはかなりシンプルな形容詞で、「これいいな」と感じた瞬間に自然と出てくる言葉なんですよ。

例えば、ショート動画に真似したくなるようなダンスを取り入れ、「自分もやってみたい」と思ってもらうのが理想としたときに、その一歩手前の段階として「自分が見たい動画」だと共感してもらうことが重要です。

少し言語化しづらいですが、多くの人が共有できる広い共感軸こそ、「エモ」だと考えています。

ウォークマンで倍速再生していた時代とかは、有線イヤホンが当たり前で、コードがすぐ絡まっていましたよね。そうした記憶に触れた瞬間に生まれる感情は、すごくエモさを感じる。

このような日常の中にある共感を、いかに昇華させてコミュニケーションやコンテンツにしていけるかが、とても重要なポイントだと言えます。

人の共感や感情に訴える「エモ消費」がキーワード

── Z世代が心を動かすマーケティングを考えるうえでは、「エモ」を抑えることが大事なわけですね。

最近はあらゆるものがコモディティ化し、パッケージ変更などの工夫はあっても、商品の中身自体での差別化がどんどん難しくなってきています。

機能や価格がほぼ同じ商品が並び、情報も溢れ返っている時代においては、「なんかこれいいな!」とまずは感じてもらい、選択肢の一つとして頭に入れてもらうことが重要になります。その最初の入り口をつくる手段として、エモいコミュニケーションが有効だと考えています。

これまで消費行動の流れにはモノ消費、コト消費、トキ消費、イミ消費といったものがありましたが、その次の段階として「エモ消費」が来ると思っています。

モノ消費は、かつて物自体が手に入りにくかった時代に、「所有したい」「手に入れたい」という欲求が中心でした。それが次第に、物そのものよりも体験に価値を見出すコト消費へとシフトしていきます。

さらにトキ消費では、「いつ」「どのタイミングで」「どんな体験をするか」という点に価値を感じるようになり、イミ消費ではSDGsや環境配慮といった「なぜその消費をするのか」という観点に焦点が当たるようになりました。

しかし情報が飽和し、機能的な差別化が難しい時代になると、次第に消費自体に意味づけすることが難しくなります。

そこで登場するのが「エモ消費」で、人の共感や感情に訴えることで、消費者の選択に影響を与える新しい消費の潮流だと捉えています。

つまり機能性や合理性だけでなく、共感や感情に響くかどうかで、その商品が選ばれるかどうかを左右する時代になっているというわけです。

世代を問わず普遍化する「タイパ」の重要性

── Z世代が重視する「タイパ(タイムパフォーマンス)」も意識したほうがいいのでしょうか?

タイパも非常に重要ですね。以前の世代だとタイパを選ぶ選択肢が少なかったので、時間の使い方が遅めになっていたりしますが、Z世代はタイパが当たり前の環境で育ってきていることから、効率よく物事を進めることが自然になっています。

ですが、このタイパというのは「一番時間が短く、コストパフォーマンスがいい」という意味なので、その重要性自体は世代問わず変わらないと考えています。ちなみにタイパという言葉自体は日本独自のもので、海外にはコストパフォーマンスはあるんですが、タイムパフォーマンスにあたる言葉はありません。

要は、日本人が時間を重視する文化が反映されているのがタイパだと言えるのではないでしょうか。

── SNSで話題のボードゲーム「タイパ至上主義」とはどのようなものですか。

タイパを徹底的に追求し、あらゆるゲームの本質を最短時間で最大限に楽しめるゲームブランドです。具体的にはルールを簡略化し、だいたい5分で1ゲームが終わるように設計しています。

麻雀は通常だと牌が多く、一局に時間がかかりますが、牌を減らして初心者でも遊びやすく、かつ既存のプレイヤーでも楽しめる工夫を凝らしています。そのほか、麻雀以外にも花札や百人一首、ポーカーを展開しています。

百人一首は12首に絞り、読み上げスピードも徐々に速くなる仕組みにしており、残り枚数が少なくても退屈せずに楽しめるようにしています。

── Z世代以外が気づいていないZ世代ならではの感性は他にあったりしますか。

世代ごとに分断されているわけではなく、むしろグラデーションのようになっていて、例えば29歳と35歳のデジタルネイティブに違いがあるかでいうと、ほとんど一緒のイメージなんですね。

ですので、実はZ世代ならではの感性というのはそんなに多くなくて、基本はSNSネイティブであるということを理解しておくといいでしょう。もちろん一概にZ世代を今の高校生や大学生と29歳を一緒くたに考えてしまうのは違いますが、共通する特徴としては、年賀状や結婚式の招待状などもデジタルでのやり取りが当たり前になっています。


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