司法試験断念から月収100万円も「ありがとうと言われない仕事は虚しい」…波乱万丈のキャリアを歩んだ“二刀流社長”の教え
「自分の理想の仕事は、弁護士しかない」そう信じて疑わなかった学生時代。就職を選ばず、司法試験の勉強に専念したが、志及ばず断念。人生の方向性を見失い、「大きな挫折」を経験。
そのままでは駄目だと一念発起、独学でインターネットビジネスを学び、月100万円を稼ぐアフィリエイター、年商2億円のベンチャー創業を経験、現在は大企業の幹部と子会社の社長を兼務する「二刀流」の働き方を実現したのが株式会社エナジィスト代表取締役の田中浩敬氏です。
どん底から這い上がり、波乱万丈のキャリアを歩んできた田中氏。彼が、もし今、学生に戻ったらどんな働き方を選ぶのでしょうか。彼の言葉から「キャリアを切り拓くヒント」を探ります。
もっと沢山の大人、沢山の仕事と出会っていれば、苦しまなかった
もし今、学生だったらどんな働き方を選びますか?
この質問に対し、関西大学法学部出身の田中氏は、自身の学生時代を振り返りながら語り始めました。
「僕、高校生の時に『困っている人を助けるヒーローのような仕事がしたい。自分は文系だから、弁護士になりたい。』っていう夢ができて、法学部に行ったんです。あの時って本当に、自分の理想とする仕事、つまり、『困っている人を助けるヒーローのような仕事=弁護士』という頭になっていたんですよね。弁護士以外にも、理想を実現できる仕事は沢山あるというのに…。」
社会に出て様々な仕事や働き方があることを知った今、大学時代にもっと「仕事の選択肢を増やす経験」をすべきだったと痛感していると明かします。
「いろんな仕事をしている人と出会うような経験を、大学の時にもっとしてれば良かったなと思います。大学の先生、OBOGの弁護士だけでなく、様々な仕事をしている社会人とつながっていれば…。最初の仕事に何を選ぶかで、これほど苦しまなかったと思います」
彼の言葉には、自らの経験から得た「確信」が込められていました。
「ありがとう」と言われない仕事って、やっぱり虚しい
大学卒業後、数年間 司法試験に挑むも、弁護士の夢は叶いませんでした。
20代中盤で「大きな挫折」を経験し、「どう生きたらいいかわかんなくなってしまって」と、約1年間 悶々と自分の仕事や人生の方向性を見失って、行動が起こせなかった期間があったそうです。
しかし、彼はそこで終わりませんでした。
「そのままでは駄目だ」と一念発起し、ITの世界で起業。完全独学で、SEO(検索エンジン最適化)やコピーライティングを学び、インターネットビジネス(アフィリエイト)を立ち上げました。最終的には最高月商100万円を稼ぐまでに。驚くべきことに、HIKAKIN氏よりも先にYouTubeで収益を上げていたそうです。
ただ、お金は稼げても、その心は満たされませんでした。
「誰にもこう『ありがとう』って言われないんで。なんか『ありがとう』って言われない仕事ってやっぱ虚しいなみたいなのがあって……」
この虚しさが、彼を「新たな道」へと突き動かす原動力となったのです。
初めてお客さんを作れた時、仕事が楽しいと思えた

自分探しの末、次に目指したのはコンサルタント。弁護士以外で、「困っている人を助けるヒーローのような仕事」として、彼の中でしっくりと来た仕事でした。
しかし、社会人経験の乏しい自分がコンサルタントになるために「尖った経験」が必要だと考え、知人と共に歯科医療のベンチャーを立ち上げます。
就職せずに司法試験に挑戦する道を選び、「新卒」というブランドを捨ててしまった彼にとって、そこは「社会人としての基礎をゼロから学ぶ場」でした。
名刺交換の仕方さえわからない状態から、「毎日100軒の歯科医院に飛び込め!売れるまで帰ってくるな!」と言われる日々。今なら間違いなく「スーパーパワハラ組織やブラック企業と呼ばれると思います」という過酷な環境。それでも、「修羅場をくぐらないと人生這い上がれない」と覚悟を決め、新規開拓の飛び込み営業に明け暮れました。
そして、約500軒もの歯科医院を回った頃、ついに初めての受注を勝ち取ります。
「僕は、新しくお客さんを創れるスキルが、スキルの中で一番価値が高いと思ってます。結局、ビジネスって、お客さん創れなかったらどうしようもないんで」
この時、彼は初めて「仕事が楽しい」と心から思えたと言います。自らの手で顧客を掴み取るという経験が、彼のキャリアにおける大きな転換点となりました。
量をこなさないと、絶対に質は上がらない
20代で最も重要だったことは何だったか。
そう問うと、田中氏は「ビジネス書を読むこと」と「仕事の量をこなすこと」の2つを挙げました。
彼は自分探しの手段として、インターネットビジネスで稼いだお金で「ビジネス書」を大量に買って読んだそうです。法律しか興味がなかった自分の視野を広げるために。ビジネスとは何か? マーケティングとは何か? マネジメントとは何か? さまざまな仕事を経験した、様々な大人の知恵を学んだといいます。その結果、視野が広がり「コンサルタント」という仕事を知りました。

そんな彼は、特に今の学生が読むべき本として、マネーリテラシーの基礎が学べる『お金の大学』と、これからの時代の新しい生き方、働き方が示されている『ライフシフト』を推薦します。「基本的なお金の知識」と「未来を見据えた働き方の知識」を体系的に習得できるからだそうです。
そして、何よりも大切だと強調するのが「(仕事の)量をこなすこと」です。
「何でもそうなんですけど、仕事っていえばね、最初に量から行かないとダメで。質から行こうとするんですけど、みんなね、要領よくやりたがる。でも、質からいってもね、質って上がらないんですよ。量をこなす中で質が上がってきます」
働き方改革で労働時間が制限されがちな現代の若者に対し、「20代で量をこなせないのはかわいそう」と同情的な視線も向けます。
また、「今の自分だからこそ、今の学生に教えてあげられることがある」この想いに突き動かされ、彼は今、母校の関西大学を始め様々な大学との「産学連携」に関わりながら、「学生の教育」にも積極的に携わっていると言います。
最後に、新入社員時代の自分にアドバイスするなら「キャリア開発と習慣作りの方法を教える」と語りました。自分が大学卒業後に一番苦しんだ「理想の仕事」を見つける方法。そして、学生の習慣から社会人の習慣へと書き換え、良い仕事習慣を身に着ける方法。その二つが、「揺るぎないキャリアの礎を築く」と断言。
田中氏のキャリアは、決して平坦な道ではありませんでした。しかし、その一つ一つの経験が、今の彼を形作っています。
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Future Leaders Hub編集部