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2026.03.31 17:01

Z 世代は選ぶことに疲れている?これ一択が若者に刺さる新しい価値観、決断代行のリアルに迫る。


時時代の最先端の価値観を持つ世代として、多くの企業が注目する Z 世代。 しか
し、彼らが日々の消費行動において何を考え、どのようなサービスを求めているの
か、その「本当の心理」に触れる機会は多くありません。

「機能が多いほどコスパが良い」「選択肢が多いほど自由で喜ばれる」 ――そんな大
人が信じて疑わない「良かれ」という強さの定義が、実は現場の情報を遮断し、若者
の「選択の疲弊」を加速させているとしたら?

今回は、Z 世代のクリエイティブカンパニーFiom の CEO であり、Z 世代創造性研究
所(Z-SOZOKEN)所長を務める竹下洋平が、現役大学生 5 名と座談会を実施。大人
が良かれと思って用意した広大な選択肢が、若者にとっては“入場を躊躇わせる壁”
になっているという生々しい実態を深掘りしました。

 

座談会参加メンバー紹介

今回の座談会には、学部も学年も異なる、多様な価値観を持つ現役大学生に集まっ
ていただきました。

  • M.Y.さん(明治大学 3 年):廃校で文化祭を行う団体に所属。論理的だが、日
    常の選択ではフリーズしがち。
  • K.H.さん(横浜市立大学 4 年):ダンス部所属。塾でアルバイト。洋服選びなど
    「最適解」を求めすぎるあまり選択を放棄することも。
  • A.R.さん(愛知大学 2 年):インカレでラオス教育支援や SNS 広報を担当。極
    度の優柔不断を自認。
  • S.W.さん(関西の私立大):動画制作などを担当。選択肢は欲しい一方で、決
    断の面倒さも感じている。
  • T.C.さん(成蹊大学 2 年):マブダチサークル所属。成城石井でアルバイト。日
    常的に ChatGPT やルーレットに決断を委ねる現代っ子。
【目次】
  • イントロダクション:日常に潜む「選択の疲弊」とフリーズ現象
  • フェーズ1:【心理】「ハズレ」を引く恐怖と、自己嫌悪の気まずさ
  • フェーズ2:【信頼】「これ専用」と言い切るホスピタリティ
  • フェーズ3:【未来】「人生の代行」とブランドが担うべき役割
  • 総括:大人世代への提言

イントロダクション:日常に潜む「選択の疲弊」とフリーズ現象

Q1:今日、何かを選ぶ時に「あ、もう考えるの面倒だな」と感じた瞬間はあった?(ランチのメニュー、着る服、見る動画など何でも OK)

M.Y.:今日のお昼、平井駅に降りて新しいパスタ屋を開拓しようと思ったんです。で
も、駅の高架下を通ったら別のパスタ屋もあって……。チェーン店は今日の趣旨にそ
ぐわないと思いつつ、「お昼だしいいか」と考えるのが面倒になって、結局チェーン店
に入っちゃいました。
A.R.:普段の移動でなるべく定期券内に収めたいんですが、ルートを比較して考える
のが本当に面倒くさくて。お金がかかっても、思考を放棄して地下鉄に乗ってしまいま
す。
S.W.:起きるのが遅くて、何食べるか考えるのもめんどくさくて、とりあえずカップ麺に
しました。
T.C.:今朝、練習に遅刻をしてしまって、お詫びの品をコンビニで買おうとしたんです。
でも、その友達が今週からダイエット中で。「好きな甘いものか? ダイエット用のもの
か?」と売り場でめちゃくちゃ迷ってしまって。最終的に無難なサラダチキンにしまし
た。

Q2:日常全体で、選択肢が多すぎて「結局、何も選ばずに画面を閉じた(店を出た)」という経験はある?

M.Y.:昨日、帰りの電車で起きました。隣のホームも同じ行き先の急行だったんです。
発車時間が少し違うだけで、「どっちが先に着くか」と頭の中でシミュレーションして悩
んでいるうちに発車してしまい、「もう乗ったままで良いのでは?」と選択せずにそのま
ま乗り続けました。
K.H.:洋服を買う時によくあります。商品が多すぎるし、レビューもバラバラ、価格も微
妙に違う。「まだセールになるかもしれないし、待つか」と考えて、結局買わずにサイトを閉じることが多いです。
A.R.:先日サークルのご飯会でコンビニアイスを買おうとした時、種類が多すぎて考え
るのが完全にめんどくさくなって。何も買わずにお店を出て、みんなを待たせちゃいま
した。
T.C.:1 年生の時に PC を選ぶ時ですね。元々Mac を持ってたんですが、Windows じ
ゃないと文字化けして課題が提出できないことがあって。タブレット式か普通の PC
か、売り場で猛烈に迷いました。高価なものだし決めきれなくて、結局お店を出てしま
いました。

【竹下の視点】
デジタルネイティブである彼らは、生まれた時から Netflix や Amazon のように「無限の選択肢」を与えられてきました。大人は「選択肢の多さ=豊かさ・自由」だと信じていますが、若者にとっては完全に「認知負荷(コグニティブ・ロード)」の限界を超えています。M.Y.さんの「ホームでフリーズした」エピソードや、A.R.さんの「アイスを買えずに店を出た」行動はまさに「選択回避の法則(決定疲れ)」の典型です。企業が良かれと思って用意したバリエーションが、実は彼らの来店や購買を強力にブロックしているという残酷な事実に、まず気づく必要があります。

フェーズ 1:【心理】「ハズレ」を引く恐怖と、自己嫌悪の気まずさ

Q3:「選択肢が多い=自由で嬉しい」と感じるのと、「多すぎて選ぶのがしんどい」と感じるの、正直どちらの割合が高い?

M.Y.:しんどいです。選択肢の多さは苦痛でしかない。自分が一番納得するものを抽
出しなきゃいけないという強迫観念があって、比較検討すること自体に労力を削がれ
るので「もういいや」ってなります。
K.H.:断然、少ない方が嬉しいです。自分がしたくない選択をして、「やっぱりあっちを
買っておけば良かった」と後悔するのが一番嫌なんです。値段にもよりますが。
A.R.:明確な目標がある時はいいですが、基本的にはしんどいです。極度の優柔不
断なので、「これもいい、あれもいい」と二択に絞るまでの過程が本当に大変で。
S.W.:私は選択肢が多い方が良いですね。選択肢が少なすぎて、自分に刺さるもの
がない状態の方が嫌なので。
T.C.:とっても優柔不断なので、少ない方が良いです。日常の些細な選択でも時間が
かかります。セルフネイルが趣味で 100 均に行くんですけど、安いからこそ選択肢を諦めきれなくて、気づいたら 2000〜3000 円も浪費してしまう。最初から絞ってほしい
です。

Q4:自分で選んだものが「ハズレ」だった時、単に損をしたと思うだけ? それとも「自分の判断ミス」に対する独特の気まずさや後悔を感じる?

M.Y.:判断ミスをした自分を激しく責めてしまいます。最終的に「納得できる判断がし
たい」という思いが強すぎるので、損をしたというより「自分の思考を改めるべきなの
か」と深く落ち込みます。
K.H.:自分も後悔を引きずりますね。「最適なものを選びたい」という完璧主義なところ
があるので。逆に、他人がおすすめしたもので失敗した時は「まあいいか」と後悔が少
ないです。
A.R.:後悔するタイプです。モノを買って失敗した時は「場所をとってしまうな」と物質
的な後悔も大きいですし、イベントに参加しなかった時も「行けばこんな経験できたの
にな」と激しく後悔します。
S.W.:「こういうデメリットになぜ買う前に気づかなかったのだろう?」と、自分のリサーチ不足を後悔しますね。
T.C.:私は「失敗は成功のもと」と考えるタイプなので、イベントなどは「後々行って良
かった」と思うことが多いです。ただ、食べ物は得することが一切ないので、その瞬間
は確実に凹みます。

【竹下の視点】
ここに Z 世代の消費心理の核心があります。彼らは買い物を失敗した時、商品への不満以上に「正解を選べなかった自分のリサーチ不足・判断ミス」を激しく責める傾向にあります(自己嫌悪の気まずさ)。SNS で事前に無限に調べられるからこそ、「失敗=自分のせい」という責任の重圧がのしかかっているのです。K.H.さんの「他人の勧めなら後悔が少ない」という言葉は、まさに「決断の責任を誰かに外部委託(アウトソーシング)したい」という切実なSOSに他なりません。

フェーズ 2:【信頼】「これ専用」と言い切るホスピタリティ

Q5:「これ専用です」「この悩みがある人にはこれ一択です」とはっきり言い切ってくれるブランドに対して、どんな印象を持つ?

M.Y.:そのブランドが「絶対これ!」と断定できるなら、赤ちゃんから高齢者まで本当
に同じ結果になるのか?と、逆に好奇心が湧いて買ってみたくなりますね。
K.H.:はっきり言うブランドは好印象です。なにより、私が選択にかける時間を省いてくれるのでありがたいです。
A.R.:選択しやすくてすごく良いです。「自分に合っているのかな?」とあれこれ考えず
に済むのは、大きな判断材料になります。
S.W.:自信がないと断定できないはずですし、ターゲット外の売り上げを捨てる覚悟
があるということなので、良い印象を持ちます。
T.C.:商品のカテゴリーによりますね。メイク用品で「ブルベ向きは絶対これ!」と言い
切ってくれると迷わず買えます。でも、ファーストフード店でメニューが 1 つだけだと
「あれ?」っと思うかも。分野ごとの「これ一択」がありがたいです。

【竹下の視点】
「なんでもできます」「誰にでも合います」という八方美人な PR は、若者からすれば「で、結局どれが私にとっての正解なの?」という丸投げに過ぎません。逆に「これは〇〇な人専用です(それ以外の人には合いません)」と言い切ることは、ターゲット外の顧客を捨てるリスクを取る代わりに、ターゲット層に対して「あなたが選んだのではなく、私たちがあなたを見つけました」という強烈な免罪符(安心感)を与えます。決断の責任をブランド側が被ってあげること、これこそが現代の最強のホスピタリティです。

フェーズ 3:【未来】「人生の代行」とブランドが担うべき役割

Q6:もし「あなたの好みを 100%理解して、買い物や旅行プランをすべて勝手に決めてくれる AI やプロ」がいたら、お金を払ってでも使いたい?

M.Y.:品質の担保が前提ですが、月 3000 円くらいだったら全然払います。
T.C.:私は絶対に使います! 自分でも月 3000 円なら払いますね。普段から決めら
れない時に ChatGPT に「これどっちが良い?」って日常的に聞いてるくらいなので。
選ぶ楽しさよりも、迷って失う時間の方が圧倒的に多いです。
K.H.:私はお金は払わないですね。選択の楽しさ自体はあまり好きじゃないですが、
参考程度にして最終的には「自分で」決めたいです。
A.R.:課金はしません。自分の趣味嗜好が全て曝け出される状況が恐怖です。全部
わかってしまう怖さがありますね。
S.W.:現状だと使わないです。今は大学生で時間があるから自分で決断できますけ
ど、大人になってお金はあるけど時間がなくなったら使うかもしれません。

Q7:ブランドに対して、「自分に選択肢を与えてくれる存在」でいてほしい? それとも「自分を正しい方向へ導いてくれる存在」でいてほしい?

M.Y.:自分が日常でする数多い判断を、正しい方向へ導いてくれる存在であってほし
いです。
K.H.:導いてくれる方が良いです。「自分で決めたいけど考えるのは面倒」という矛盾
があるんですが、導いてもらうことで、他人任せではなく「自分の考えの整理」ができ
るんです。
A.R.:導いてくれる方が良いですが、「あなたには絶対これ!」とされすぎると、自分
の選択能力がなくなって人としてダメになりそうで……。AI に飲み込まれてしまう恐怖
もあります。
S.W.:導いてくれるくらいがちょうど良いです。AI に導かれても、最終決定のボタンは
自分で押したい。
T.C.:私は完全に決めてくれた方が楽です。ルーレットアプリで決めることも多いんで
すが、それでも「やっぱりあっちが……」と迷うことが多いので。本当に悩んでいる領
域だけ、限定的に決めてくれると最高ですね。

【竹下の視点】
このフェーズの回答は、次世代のサービス開発における極めて重要なヒントを含んでいます。T.C.さんや M.Y.さんのように「完全な決断代行」を望む層がいる一方で、A.R.さんや S.W.さんのように「人間性を奪われる恐怖」「最終決定権は手放したくない」という本能的な抵抗感も存在します。 企業が目指すべきは、100 の選択肢を突きつけることでも、1 つに強制することでもありません。100 の選択肢を、プロの目で「最適な 2〜3 個」にまで絞り込み(キュレーション)、最後の「選ぶ」という行為(=自己決定感)だけをユーザーに味わわせる設計です。「導くが、縛らない」という絶妙な距離 感こそが、ブランドの LTV を最大化します。

総括:大人世代への提言

Q8:「機能を増やし、選択肢を広げれば喜ばれる」と信じている経営者や開発者たちに、皆さんの視点から「僕たちが本当に求めている親切」についてアドバイスを。

M.Y.:機能を増やしたら喜ぶ人たちがいるという大人の感覚に驚きます。お子さんの
Z 世代の話を聞いてみてください。込み入った話ではなく、「スマホ壊れた」みたいな
日常の会話から、本当のコミュニケーションや求めているものが見えてくるはずです。
K.H.:機能が多いに越したことはないかもしれませんが、一番はコスパです。どのター
ゲットへ売るのかが明確であれば、選択肢を少なく切り分けてしまっても良いので
は?
A.R.:機能が増えて便利になった反面、使いにくく、分かりにくくなったこともたくさんあります。思い込みではなく、消費者調査をしっかりした上で判断してほしいです。
S.W.:機能が多いことは悪いと思いませんが、説明が長々としているのが苦痛です。
「これでこういうことができる」と、端的にユーザーへ提示する工夫をしてほしいです。
T.C.:私は基本的に機能は増やして欲しくないです。不都合が発生した時だけ増やせ
ばいい。ただ、iPhone で新しい機能がないと残念がる自分もいて矛盾しているんです
けど(笑)。基本はシンプルが一番です。


【Z 世代領域のスペシャリスト・竹下洋平の総括】

座談会を通じて浮き彫りになったのは、Z 世代はブランドやサービスに対して「完璧で
網羅的な自由」など求めていないという事実です。

彼らは、情報過多による「選択の疲弊」と、失敗時の「自己責任」という見えない恐怖
と常に戦っています。「多機能・多展開でなければならない」という企業の強迫観念
は、一度捨てるべきです。

ユーザーの代わりに悩み、不要な選択肢を削ぎ落とし、「あなたにはこれです」と背中
を押してあげること。大人が「脱力」して選択肢を絞る勇気を持つこと――。それは手
抜きや妥協ではなく、次世代の顧客の脳内リソースを守り、ブランドへの深い信頼を
勝ち取るための、最も合理的で高度な「決断代行のマネジメント」なのです。

 

プロフィール
竹下 洋平
Z-SOZOKEN ( Z世代創造性研究所 ) 所長 / Fiom 合同会社 CEO
2005 年生まれ。2021 年 10 月に Fiom 合同会社を設立。Z 世代のクリエイターの創造性を最大化させるをミッションに、Z 世代による Z 世代向けのコミュニケーションプロデュース事業、リサーチ&プランニング事業を展開している。上場企業から大企業、中小企業、ベンチャー、スタートアップ、行政や自治体と幅広い組織の支援実績を持つ。Z 世代の創造性を活かし、Z 世代向け広告コミュニケーションの上流設計から制作、運用までワンストップで実行支援する。


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