Z 世代はプロの完璧な広告はもう見られない?若者が iPhone 無加工にリアルと信頼を感じる理由
世の中の大人(経営者やマーケター)は、今でも「プロが撮った綺麗な写真」や「完璧
に編集された動画」じゃないと、若者には見てもらえないと信じています。
でも、皆さんはこう思ったことはありませんか?
「スタジオで撮った CM は、なんだか“嘘”っぽく感じる」
「インフルエンサーの作り込みすぎた投稿より、友達の BeReal みたいな無加工の方
が信頼できる」
「ちょっと画質が粗かったり、手ブレしている動画の方が、リアルで最後まで見てしま
う」
「映え」が当たり前になりすぎた今、Z 世代はあえて「加工されていない質感」や「あり
のままの空気感」にこそ、嘘偽りのない信頼を感じているのかもしれません。
今回は、Z 世代のクリエイティブカンパニーFiom の CEO であり、Z 世代創造性研究
所(Z-SOZOKEN)所長を務める竹下洋平が、現役大学生 5 名と座談会を実施。若者
が「これはガチ(本物)だ」と判断するビジュアルの基準について、忖度なしの本音を
深掘りしました。
今回の座談会には、学部や活動内容が異なる 5 名の現役大学生に集まっていただきました。
- M.W.さん(明治大学 4 年): 廃校実行委員会に所属し、パフォーマンスなどを
担当。 - S.K.さん(関西大学 1 年): インカレでラオス教育支援の団体に所属。
- A.H.さん(愛知大学 2 年): インカレサークルに所属し、広報を担当。
- Y.R.さん(大阪大学 1 年): 阪大の学祭サークルに所属。
- K.T.さん(横浜市立大学 4 年): ダンス部に所属。アルバイトと両立する日々。
- イントロダクション:アイスブレイク
- フェーズ 1:【直感】0.5 秒の「あざとさセンサー」
- フェーズ 2:【本質】なぜ「iPhone 無加工」は真実に見えるのか
- 総括:Z 世代領域のスペシャリスト・竹下洋平の総括
イントロダクション:アイスブレイク
趣旨説明:「今日は『なぜ、大人がお金をかけた広告ほど飛ばしたくなるのか?』とい
う謎を、皆さんの感覚から解き明かしたい。忖度なしでお願いします。」
フェーズ 1:【直感】0.5 秒の「あざとさセンサー」
ここでは、Z 世代が「広告」を視覚的にどう嗅ぎ分けているのか、その拒絶反応の正
体を明らかにします。
Q1:スマホを流し見していて「あ、これ広告だ」と 0.5 秒で判断して飛ばしてしまう基準はどこにある?(フォントの綺麗さ、ライティングの明るさ、ロゴの配置など、具体的な違和感について)
M.W.:これといった明確な基準はなくて、無意識ですね。強いて言えば、特定の商材
やアプリ、サービスを宣伝している雰囲気というか、「それらしいメッセージを伝えよう
としている感じ」が伝わると「あ、広告だな」と思って飛ばします。難しく考えているわけじゃないんですけどね。
S.K.:メインで宣伝したいサービスに対して「いいことしか言ってない」と、これ広告な
のかな?と警戒して飛ばします。
A.H.:私は「広告だから」と言って飛ばすことはあまりないです。ただ、内容が嘘っぽ
いと飛ばしますね。最近だと「AI をたくさん使ってるな」って感じる動画は、本当なのかな?と思ってスキップします。
Y.R.:基本的に広告は飛ばします。「何ヶ月ゼロ円!」みたいな、後から巻き込まれる
とよくなさそうなものは特に。でも、企業のチャンネルじゃなくて、インフルエンサーの
PR 動画だと胡散臭さが減るので飛ばさずに見ますね。
K.T.:面白いかどうかが大事です。それが広告かどうかはさておき、「その商品を作っ
て、このストーリー」みたいなショートドラマとか、ストーリー性でスキップするかどうかを決めます。
Q2:逆に、企業の投稿なのに「おっ?」と指が止まってしまうものには、どんな「質感」がある?
M.W.:インターン先や内定先とか、自分が関係してくる、あるいは関係しそうな CM や
広告だと、親近感の意味で「おっ」となります。
S.K.:ストーリー性があると気になって見てしまいます。あとは好きなインフルエンサ
ーがやってるとつい見ちゃいますね。
A.H.:好きな有名人が出てたり、自分が普段利用している有名な企業が出てると手が
止まります。
Y.R.:自分がよく行くお店とか、たまたま自分が「今これしたいな」と思うドンピシャのニーズがあるものだと、指を止めます。
K.T.:自分に関係ありそうなものや、続きが気になりそうなもの。あえて違う視点を言
うと、固定観念が覆されるような「衝撃性」があるものです。冒頭の 3〜5 秒で何か起
こると見入ってしまいます。
Q3:プロが完璧な機材(4K カメラ等)で撮った広告を見て、「自分とは関係ない世界だな」とか「嘘っぽい」と感じた具体的な瞬間はある?
M.W.:4K カメラを使っている時点で興味はそそられます。ただ、「このアングルで撮影
したらカメラぶっ壊れるのでは?」と感じるような無理なアングルを広告で使われる
と、逆に不信感を持ちます。4K カメラが崖の上から落っこちて、だけど無事、みたい
な。そういう過剰感があるとちょっと引きますね。
S.K.:抽象的な演出だと、映像として綺麗でも「大丈夫かな、、、?」って思っちゃいま
す。人と人が話しているだけなのに、後ろが壮大な風景だったり。他に映すべきもの
があるのにそういう演出をされると、過剰演出に感じます。
A.H.:広告の画質自体はそこまで影響しないです。映っているものやストーリー、内容
で嘘っぽさを判断します。「ありえないシチュエーション」だと、いくら商品が良くても嘘っぽく感じてしまいます。
Y.R.:高価な機材というより、飲食店の CM は「広告映え」するように撮られすぎてい
ると感じます。映えるように作られた食品 CM よりも、インフルエンサーのレビューCM
の方が、加工されていなくて自分もリアルに「食べたい」と思えます。
K.T.:広告費が高い、高くなっているということは、裏を返せば「しっかり回収しないと
いけない=価格帯が高いのでは?」と思ってしまいます。学生で金銭的な面もあるの
で、安くていいものが欲しい。だから、広告費にそこまでお金がかかっていなくても、イ
ンフルエンサーの等身大の方が質がいいと感じますね。
フェーズ 2:【本質】なぜ「iPhone 無加工」は真実に見えるのか
座談会の核心です。「不完全さ(Raw)」がなぜ「信頼(Real)」に変換されるのかを解剖
します。
Q4:同じ商品紹介で「テレビ CM 風の完璧な映像」と「一般人が iPhone で撮った少し手ブレのある映像」、どちらが「商品の真実」を伝えていると感じる?それはなぜ?
M.W.:一般人は編集知識がないからこそ、いい方向に出たんだと思います。「商品の
真実を伝える」という観点では信頼性が高い。ただ、世の中の「一般人が撮ったもの」
がすべて売上に繋がるかというと、それは難しいとは思いますけど。
S.K.:私は逆の意見で、プロが機材を使って撮影している方が良いです。しっかりした
商品や企業というイメージが作れるので。
A.H.:テレビ CM 系のクオリティが高いものの方が、信頼度が高くて良いのでは?と
思います。広告を作る過程でコストをかけているし、メリットの訴求が的確にできるの
で。
Y.R.:やるべきところにコストをかけているという面では、TVCM 的な広告を作ってい
る方が企業としての信頼度が高いのではと感じます。抽象的すぎると信頼が得られ
にくいですが、そこをうまく調整している企業は賢いと思うし、買いたくなりますね。
K.T.:私は一般人の投稿が良いです。理由は、企業が打つ広告だと他社比較を前面
に出しづらいですが、一般人だと「A 商品より B 商品の方がここが良かった」と正直に
言いやすいからです。ユーザー目線でクオリティを教えてくれるから良いですね。
Q5:BeReal や、あえて画質を落とした写真が流行っているけど、「低画質」のどこに心地よさや信頼を感じている?
M.W.:そもそも BeReal のコンセプトが「今の瞬間を共有する」こと。あくまで日常の共有であって、高画質が必要条件ではないはずなんです。あえて高画質ではないこと
は、インスタのように切り取ったり加工したりする手間もかからず、素の自分を誇張せ
ずに見せられる良さがあります。
S.K.:今は携帯でもいい画質のものが撮れる時代だからこそ、あえてコンデジを使っ
たりするんですよね。インスタだとどうしても着飾ってしまう。その着飾りを外して、い
いところを共有できるのが良いです。
A.H.:画質が落ちた画像だと、日常的な一瞬を捉えた写真として身近な感じがあって
良いです。
Y.R.:インスタは加工バチバチで、撮ること・載せること前提ですよね。だから親しみ
やすさはあまりない。BeReal は「今撮ろうと思って撮る」のではなく、「今、この瞬間の切り取り」です。画質が低い面でも、「こんな感じなんだ」と素直に情報として入ってきます。
K.T.:自分の生きているありのままの状況と似ていて、親近感が湧きます。あえて加
工できないこと、偶然性、演出できない感じがそのまま信頼感になるんだと思います。
Q6:「綺麗な 100 点の写真」は企業の“営業努力”に見えて、「60 点の iPhone 写真」は“事実”に見える。この感覚の差はどこから来ると思う?
M.W.:プロと一般人の差ですよね。自分でも再現性がある、できそうな感じ。自分でも
それに対する行動を起こしやすそうなイメージトレーニングを、無意識に簡単に行え
る。それが親近感に繋がります。
S.K.:プロの写真だと作り込まれていて、「この写真でこう思わせたい」という意図が見
えてしまう。リアルなところが見えてこないんですよね。
A.H.:やっぱり身近なのが親近感を生むんだと思います。
Y.R.:機材や時間の掛け方を見て、「真似できそうか、真似できなそうか」というところ
ですね。
K.T.:TVCM は「売る目的」ですが、一般人は「商品を共有したい」という純粋な思い。その差異が信頼性に直結します。企業は正直売れれば良いと思っているけど、一般
人は良さを本気で共有している。綺麗すぎると「これは広告だ」と防御モードに入って
しまうんです。
Q7:企業が「生っぽさ」を狙って iPhone で撮っている時に、「あざとい(狙いすぎ)」と感じて冷める境界線はどこにある?
M.W.:「伝えたいメッセージがあり、それを率直に伝えようとしているかどうか」が境界
線ですね。ダイエット食品でデータが出ていないのに「痩せる」と出している誇大広告のように、商品の特徴を強調したいあまり、ターゲットを狙い撃ちしようとする強さが透
けて見えると、やりすぎ・狙いすぎに感じます。
S.K.:SNS メインでプロクオリティの動画を上げていたアカウントが、いきなり素人っぽいものを上げだすと、「狙ってるのかな??」と思います。
A.H.:今まで有名でプロクオリティだった会社が、急に素人感のある CM を出すと、
「やってる感(無理している感)」が出ちゃいますね。
Y.R.:逆に、ずっとちゃんとした CM を上げているところが、あえて iPhone の動画を上げていると、「頑張って追いつこうとしている感」が伝わって、むしろ好印象に感じることもあります。挑戦してる感があって。
K.T.:「流行りに乗った広告だな」と感じることはありますね。「急にどうした??」と。ネガティブでもないですが、特別ポジティブにも受け取りません。
【Z 世代領域のスペシャリスト・竹下洋平の総括】
座談会を通じて浮き彫りになったのは、Z 世代は決して「綺麗な映像」を憎んでいるわ
けではないということです。彼らが拒絶しているのは、綺麗さの裏に隠された「都合の
良い営業努力」と「不都合な真実の隠蔽」です。
情報の洪水の中で生きる彼らにとって、画質の粗さや無加工の質感は、単なるトレン
ドではなく「これは演出されていない事実である」という強力な証明書(エビデンス)とし
て機能しています。
企業がなすべきは、安易にカメラの画質を下げることではありません。自社を大きく見
せようとする「完璧主義の鎧」を脱ぎ捨て、商品のありのままの姿を、ユーザーと同じ
目線で共有する勇気を持つこと。大人が“盛る”ことをやめた瞬間にこそ、Z 世代との
真の信頼関係がスタートするのです。
Z-SOZOKEN ( Z世代創造性研究所 ) 