「船が形になる過程に大きなやりがい」造船会社トップが明かすリーマン・ショック後の再建と新たな挑戦
株式会社南日本造船は、大分県に拠点を置く造船会社。プロダクトタンカーやばら積み船など、多種多様な船種に対応できる建造力を強みとし、「大分から世界の海へ」を合言葉に、世界経済の発展に貢献している企業です。
近年では、環境に優しい船舶の開発にも力を入れています。今回は、南日本造船のリーダーである、代表取締役の檜垣清志さんに、これまでの道のりや事業への想い、そして未来への展望について詳しくお話を伺いました。
<聞き手=丸山素輝(学生団体GOAT編集部)>
【檜垣社長の現在に至るまでのキャリア】

私のキャリアは1993年、愛媛県の今治造船で始まりました。大学卒業後は現場経験を積むため香川県の丸亀工場に配属。のちに営業として香港事務所や東京での駐在も経験し、現在に至ります。幼い頃から造船に携わる父の姿を見て育ち、造船所や進水式を間近に感じたことが、この道を志すきっかけになりました。
大学時代のインターンで造船の現場に触れ、船が形になっていく過程に大きなやりがいを覚え、「これほど心を動かされる仕事はない」と確信しました。入社翌年に営業部へ配属された当初は、物静かな性格ゆえにお客さまと話すことへプレッシャーもありました。それでも、対話を通じて得られる学びと手応えが自己成長につながったと感じています。
2018年、南日本造船は今治造船グループの一員となり、同時に私が社長に就任しました。当時はリーマン・ショック後の不況の影響が色濃く、厳しい経営環境にありました。地域の雇用を守り、会社を再建するためにグループとして経営を引き継ぎ、私は不安も抱えつつ、従業員とともに立て直しに全力を尽くしました。最初の3年間は特に困難でしたが、「明けない夜はない」と励まし合い、失敗を恐れず挑戦し続けました。やがて海運市況の好転とともに受注は増加し、士気も回復。現在では、南日本造船はグループ内でも信頼される工場へと成長し、私の大きな誇りになっています。
【南日本造船の事業について】

同社の主力事業は、顧客のニーズに合わせた各種商船の設計・建造です。近年はLNG燃料船やメタノール燃料船など、環境負荷の小さい次世代燃料を用いる船舶の開発にも積極的に取り組み、地球環境保全への貢献を目指しています。
造船業は日本の経済活動を支える基盤産業です。日本の貿易の大半は海上輸送が担っており、南日本造船が手がける船は石炭や小麦、石油製品など生活に不可欠な資源を世界へ届け、人々の暮らしを支えています。また、より安全・効率的で環境に優しい船づくりのため、技術革新が常に求められます。
一隻の船が完成に至るまで、現場では多くの検証と試行錯誤が繰り返されます。巨大な鋼材と向き合い、それに新たな息吹を吹き込む仕事は、まさに“ものづくり”の醍醐味。船が海へ送り出されるたび技術力は磨かれ、社員一同に自信と感動が生まれます。船とともに成長し続け、未来へと帆を上げて進む姿勢こそが南日本造船の強みです。
【檜垣社長から学生へメッセージ】

学生のみなさんには、「自分を早く決めつけないこと」を伝えたい。学生時代は可能性に満ちています。興味を持ったことには臆せず挑戦してみてください。そして本をたくさん読み、多様な知識や価値観に触れて視野を広げてほしい。採用面接ではスキルや経験だけでなく、相手の目を見て自分の言葉で語れるかを重視しています。緊張は当たり前ですが、心からの熱意は必ず伝わります。取り繕わず、自然体で臨んでください。南日本造船は、熱意と可能性を持つ学生との出会いを楽しみにしています。
経営で大切にしているのは、「仲間のため、会社のため」という視点です。自分の都合ではなく、会社や社員にとって最善かどうかを常に問い続けています。また、思いやりを忘れず、社員や協力会社、取引先の立場に立って考え、痛みに寄り添う姿勢を重んじています。これは、みなさんが社会に出るうえでも重要な指針になるはずです。
【南日本造船の未来ビジョン】

今後、南日本造船は2050年のカーボンニュートラルを見据え、CO₂排出量の削減や新燃料技術の導入に挑戦していきます。加えて、社員が安心して長く働ける職場環境の整備にも力を入れ、社員とその家族が「ここで働いてよかった」と実感できる会社づくりを進めていきます。
技術革新への挑戦と人を大切にする姿勢、この二つを軸に、南日本造船はこれからも成長を続けていきます。
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