三菱UFJ銀行から結婚相談所代表へ ― 勝倉千尋氏が明かす「好きなこと」「得意なこと」「お金になること」の交差点の見つけ方
元銀行員から「モテコンサル」として起業し、結婚相談所「ナレソメ予備校」の代表を務める勝倉千尋氏は、自己理解を深めて「好きなこと」「得意なこと」「お金になること」のバランスを探すことが、自分らしい人生設計の鍵だと語る。
やり方次第で、キャリアも家庭も子供も全て手に入れられる時代に、若者が持つべき仕事への姿勢やから勝倉氏が大切にする「人の幸せを心から喜べる」という組織文化まで聞いた。
最初のキャリアで大手企業を選ぶべき理由
── 勝倉さんは新卒で三菱UFJ銀行に入行され、その後起業されています。自分が今、学生なら大手銀行に就職をするか、それとも起業をするとしたらどちらを選びますか?
最初に入るなら「絶対に大手がいい」と思いますね。というのも、いろんな人と調整しながら物事を前に進めていったり、複雑な組織の中で成果を出したりといった「ビジネスマンとしての基礎体力」は、いきなり起業してもなかなか身につかないんですよ。私自身は銀行に入って本当によかったと思っていて、あれだけ巨大で構造化された組織の中で働く経験はすごく貴重なんですよね。
「会社がどういう仕組みで動いていて、どう人が連携して結果を出すのか」という全体像を体感できたのは、今の仕事にもすごく活きています。ベンチャーだとスピード感はあるけれど、構造的な組織の理解まではしづらいんですよ。だから、最初のキャリアでは、大手企業に入ってみるのがいいと思います。
あとは大手企業には優秀な人が多く、ハイレベルなビジネスマンと一緒に仕事をすることで、自分の基準値が自然と上がるのも大きなメリットですね。
── 今、振り返ってみて若い頃に「こうしておけばよかった」と思うことはありますか。
銀行員の若手時代に、もっと人と関わりながら働いておけばよかったなと思います。なぜなら、その時にしか出会えない人や、築けない人間関係があったからだと思うからです。当時は“一匹狼気質”であまり周囲と深く関わらずにいましたが、今振り返ってみると、男女問わず幅広いネットワークを築いておけばよかったなと。
もともと私はチームプレーが得意なタイプではなかったんですが、今の共同経営者と組んで一緒に仕事をしていくうちに、組織やチームで成果を出す発想がぐっと広がったんです。
今ではチームで仕事を動かすことの大切さを実感していますね。もし、若い頃から積極的に人と関わり、チームで何かを成し遂げる経験を積んでおけば、もっと早く成長できたのではないかと感じます。
「やりたいこと」は無理して見つけなくていい
── やりたいことが見つからない人に対して、どういうアドバイスを送りますか?
別に、無理して「やりたいこと」を見つける必要はないと思います。
人生の目標は人それぞれですし、もし他にやりたいことがあるなら、仕事はあくまでお金を稼ぐ手段として割り切ってもいい。逆に、仕事で自己実現したいなら、とことん突き詰めればいいと思うんです。
今の結婚相談所の仕事は私にとって「天職」だと思っていますが、最初からやりたいと思っていたわけではないんですよ。自分の頭の中でずっと考えながらアンテナを張って、少しずつ起業のアイデアを見つけてきた到達点って感じですね。
本当にやりたいことなんて、誰かから与えられるものではないため、最終的には自分で考え続けないといけない。
だからこそ、自分と向き合い、自分の内面を掘り下げて「好きなこと」「得意なこと」「お金になること」が交わる点を探すことが大切になります。この3つのバランスが取れていないと、どこかで不幸せになると思っています。
好きだけど得意じゃないと仕事にならないし、得意なことでも好きじゃなければ続かない。そして、お金がついてこなければ物足りなく感じてしまうわけです。
他責ではなく「自分にできることは何か」を問い続ける

── 採用や営業などいろんな方に出会うことはあると思うんですが、若い人にはどういったことを求められていますか?
社員によく伝えているのは、「常にベクトルを自分に向けて考えよう」ということです。これは銀行時代に教わった言葉なんですが、今でもすごく大事にしています。
会社が悪いとか、社会が悪いとか、外に原因を求めるのは簡単です。でも、それでは何も解決しないんですよね。そうした他責の思考は、組織の中でネガティブに広がってしまい、結果的に自分自身も信頼を失ってしまうわけです。そのため、どんな状況であっても「自分にできることは何か」「自分がどう変えられるか」という視点を持ってほしいと思っています。
自分にベクトルを向けることで、初めて人は成長できるし、周りからも愛され、信頼される存在になっていくんですよ。
── そういうなかで、どんな若者と一緒に働きたいとお考えですか。
採用のときに大事にしているのは、「人の幸せを心から喜べる人かどうか」です。
人の幸せを手放しで「素敵だな」と思える人と、どこか妬んだり冷めた目で見てしまう人がいると思うんですけど、後者のタイプだと私たちの仕事に合わないと思っています。
やはり、結婚というすごく幸せな出来事に関わるビジネスなので、そもそも幸せを祝福できないと、仕事自体が成り立たないんです。なので、ハッピーマインドを持っているとか、素直に喜べるマインドがあるというのは大前提だと思います。
うちの会社では「自利利他」という考え方を大事にしています。自分の利益(自利)を追求した先に、初めて他人の利益(利他)が生まれるという考え方です。結局のところ、自分の満足や成長は最終的に人の役に立たないと完結しなくて、究極の自利とは利他のことなんです。
実際、うちに転職してくる人の中には、人材業界などで「本当に顧客の幸せに寄り添えていない」と感じた経験を持っているというケースも多いんですよ。人材会社だと、どうしてもお金を払う企業側の都合や利益が優先されてしまいがちなんですよね。対してナレソメでは、「お客様」「会社」「自分(従業員)」の全員が矛盾なく幸せになれる三方よしの構造を大切にしています。
だからこそ、自分の幸せだけでなく、他人の幸せも自分の喜びとして感じられるマインドを持つ方が、うちの文化にも一番馴染むんです。
キャリアも家庭も子供も「遠慮せずにすべてを取りにいけ」
── 最後にこれからキャリアアップしたい、モテたいと思う学生や若い方に向けてメッセージがあればぜひお願いします。
今の若い方たちを見ていると、本当に真面目な方が多いと感じます。そのためか、「これ以上求めてはいけないのでは」「少し控えめにすべきでは」と、自らブレーキをかけてしまう方も少なくないように見受けられます。
でも女性であればキャリアも家庭も、そして子供もすべて手に入れることは、やり方さえ間違わなければ十分に可能です。男性も仕事で自己実現しながら、モテたい、家庭を築きたいといった願いを同時に叶えることもできます。
今の世の中は、本当にすべてのことを両立できる時代だと思うんです。だからこそ、途中で諦めたりせずに、どのようにすれば自分の最大値を引き出せるかというところに意識を向けてほしいなと思います。
そのためには、正しい判断・プロセスを選ぶことが大切です。
私としては、皆さん一人ひとりが「全部を取りに行く生き方」をしてほしいと思っています。それがきっと、日本全体をもっと明るく、元気にする原動力になるはずです。遠慮せず、自分の可能性を信じて挑戦してほしいですね。
<構成/古田島大介 撮影/岡戸雅樹>
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Future Leaders Hub編集部