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2026.03.27 16:00

「夢より目標」が人を動かす。30歳で上場を果たしたCEOが語るキャリア、世界から見た“日本の課題”


20代で起業し、30歳で会社を上場に導いた株式会社TWOSTONE&Sons 代表取締役CEOの河端保志氏。だが起業したての頃は、「上場なんて到底無理だ」と思い、自分には縁がない世界だと考えていたという。それでも現実の「目標」を追い続けていくうちに、いつしか上場の道が見えてきたと河端氏は振り返る。

目的意識を持って自分のキャリアを選ぶこと。無理に全員が起業家になる必要はない。今回は河端氏が考えるキャリアのあり方や、世界から見た日本の価値と課題感について、たっぷりと語ってもらった。

「夢」より「目標」が自分を動かす原動力になる

株式会社TWOSTONE&Sons 代表取締役CEO、河端保志氏

── 河端さんは若い頃からやりたいことが明確にあったのでしょうか?

実をいうと、私は「夢」がなくて「目標」があるタイプなんですよ。起業した頃は上場なんて到底無理だろうと思っていましたね。学生時代の周りにも、上場企業の社長なんてほとんどいませんでしたし、そういう世界とは縁がないと感じていました。その一方で、「来年にはこれくらいの規模にしたい」といった現実的な目標は常に持っていたんです。

私の中での定義として、死ぬほど頑張っても達成確率が10%もないのが夢で、頑張れば50%以上の確率で実現できそうなものが目標だと位置づけています。つまり、私は「必ずこれをやりたい」といったように夢を追いかけてきたわけではなく、現実を見ながら目標を一つずつ更新していくタイプなんだと思います。

── 現時点で目標に掲げているものはありますか?

今は「時価総額1000億円を目指す」という目標を会社として掲げていて、それを達成できたら、次にもう一段上の目標を考えたいですね。

そういう意味では、私にとって「夢」という言葉は、どうしても現実離れして聞こえるんですよ。あまり実感が湧かないというか、「本当にやれる気がしない」と感じてしまって。現実との距離が遠すぎると、自分自身があまりしっくりこないんですが、具体的な「目標」を定めると、それを必ずやり切ろうという責任感も芽生えるし、そうやって適度な緊張感のある方が私の性格的に合っていると思うんです。

起業で大切なのは“ビジネス経験”があるかどうか

── 学生時代に「もっとこうしておけばよかった」と思うことはありますか。

私は普通の家庭で育ち、小学校から中学校まで公立校に通っていました。中学3年生になるまではほとんど勉強もせず、塾に一度も通ったことがないようなタイプでした。今振り返ると、もっと早くからいろんな世界や環境に触れておけばよかったなと思うこともあります。

自分の周りで若くして成功している経営者の多くは、小さい頃から恵まれた環境に身を置いて、高い視座を持つ人たちと交流していたんですよね。そういう環境にいれば、自然と基準値も高くなっていくんですよ。

── もし学生時代に戻れるとしたら、一度は企業に就職する道を選ぶと思いますか?

学生時代に起業するかどうかはあまり重要ではなく、起業前にどれだけビジネス経験を積んでいるかが大切だと思います。その経験の形は何でもよくて、企業に就職して働いてもいいし、インターンで学ぶのでもいい。あるいは個人事業主として自分で仕事をしてみるのも立派な経験です。ただ、何もビジネス経験がないまま起業するのはリスクが大きいというのが正直な意見です。

大事なのは、目的意識を持って自分のキャリアを選ぶことです。「周りがやっているから」「流行っているから」という理由で起業するのではなく、自分のやりたいことを実現する手段の一つとして選ぶべきです。無理に全員が起業家になる必要はないわけですね。

私の場合は、10代後半に起業家の先輩のもと、売上をつくる経験もさせてもらっていました。そうした経験のおかげで、就職しなくても起業に必要な感覚やスキルをある程度身につけることができました。

世界から見た「日本の価値」と「構造的な課題」

2020年7月7日に上場を果たした株式会社TWOSTONE&Sons

── 起業した頃の自分にアドバイスするとしたら何と伝えたいですか?

上場時には外部株主の割合が2割程度でしたが、もっと積極的に株主を増やし、その資金を先行投資に回せば、上場時の売上をもっと高められたのではないかと反省しています。

私も高原(共同創業者の代表取締役COO高原克弥氏)も、どうしても堅実に数字を積み上げようという意識が強すぎました。先述したように、現実離れした夢を追うタイプではないため、コツコツと数字を積み上げていくという慎重すぎる姿勢は、今思うとかえって成長の機会を狭めてしまっていたなと感じますね。

── 現在河端さんは国外にも拠点を置き2拠点で活動しているそうですが、海外に行くようになったタイミングはいつ頃なのでしょうか?

もともと10代の後半から海外に行く機会が多く、20代前半にはベトナムにもよく滞在していました。ただ、本格的に海外のビジネスとして動き始めたのは上場を経てから4年ほどになります。

「日本は海外と比べて遅れている」とよく言われますが、そんなことはまったくないです。むしろホスピタリティの高さや食文化、街の安全性や清潔さといった点において、日本は世界でも群を抜いているとあらためて感じました。その一方で、「もう少しここは変わったほうがいい」と思う部分も確かにあります。

──海外にも拠点を置いて感じることは何ですか?

特に危機感を覚えるのは、AIの進化による雇用構造の変化です。最近ではアメリカでも優秀な学生でも就職できないケースが出始めており、「雇用するよりAIで十分」という風潮すら生まれています。こうしたなかで、最後までやりきれる人とそうでない人の差は、これからますます広がっていくと思っています。

また、国が違えばモラルや常識もまったく違います。言葉を選ばずにいえば、「自分さえよければいい」という価値観が一つの正義として成立している国もあります。他人を気にかける余裕すらない社会も現実として存在していて、国ごとの価値観の違いは本当に大きいと感じます。

インドの友人が言っていたのですが、インドでは都会の真ん中でも貧困や餓死が日常にあり、そうした現実を目の当たりにすると、「自分や家族だけはこうなりたくない」という強い意志が生まれるそうです。私自身も、海外で貧困を見たときにそうした感情を強く覚えました。

──そんななかでも河端さんが特に課題だと感じることはどういったところでしょうか?

日本は早くから先進国として安定期に入り、戦争や大きな社会不安もない平和な環境で発展してきました。しかし、良くも悪くも危機感やハングリーさが薄れていると感じますし、この数十年で日本のメーカーが握っていたシェアを、韓国や台湾の企業に大きく奪われてきたのは事実です。

特に半導体分野では、日本は部品供給や装置製造など二次工程が中心の立場に回っていて、中核となる装置や設計を担えていない。この現状は、正直かなり悔しいですね。日本の技術力そのものは決して劣っていないだけに、構造的な遅れをどう取り戻すかが今後の大きな課題だと思います。

世界の潮流を捉えながら持続的な成長を目指す

── 今後はどのように会社を成長させていくとお考えですか?

今後は日本国内にとどまらず、海外にも事業を広げていきたいと考えています。やはり外貨を稼ぐ力を持たなければ、長期的な成長は難しいと思うからです。それに、私は会社という“大きな船”の舵取りを担う立場なので、どの方向に進むべきかを判断するための知見や感度を常に磨いておく必要があります。もし進むべき方向を誤れば、どれだけ現場のメンバーが努力しても成果は出ませんし、その責任はすべて経営者である自分に返ってきます。

例えば、営業力を持っていたとしても今さらMDウォークマン(1990年代から2000年代にかけて普及した小型録音・再生対応のミニディスクプレーヤー)を売ろうとすると、時代とニーズが合っていなければ絶対に成功しないのと同じことです。どんなに努力しても、そもそも向かう方向を間違えていたら意味がない。だからこそ、これから世の中がどうなっていくのか。どんな変化が起き、世界のニーズがどこに向かうのか。という時流を正確に読む力を持っておくことが、経営者として最も重要だと感じています。

<構成/古田島大介 撮影/星 亘>


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