北の達人・木下勝寿社長が語る「人の心を読み取る力」—若いうちに接客業を経験すべき理由とAI時代の人間力
「人の心を読み取る力」を鍛えるには、まず現場に立つこと。
そう語る北の達人コーポレーション代表取締役社長、木下勝寿氏は実際に人と向き合う経験がなければ“想像”だけが先行し、“本質”を見誤りやすいと話す。
WEBマーケティングの世界で成功を積み上げてきた経営者であっても、人から人へとお金が渡るビジネスの普遍的な原則を忘れてはならない。
木下氏にAI時代に求められる人間力や独自の仕事論、ワークライフバランスについて話してもらった。
若い頃に経験しておけばよかった「仕事」
── 20代のうちにやっておけばよかったと思うことは何かありますか?
木下:今思うと、若い頃に「接客業」を経験しておけばよかったなと。というのも、ビジネスの本質は「お客様からお金をいただく」ことで、これはどれだけ時代が変わっても普遍的なことだからです。
そして、お金のやりとりは基本的に“人から人へ”と行われるものだからこそ、「相手のことを理解する力」がないと、すべてを想像で考えなければならず、現実とのギャップが生まれやすくなるんです。なので、若いうちに接客業などで実際に人と触れ合う経験は非常に重要です。喫茶店のアルバイトでも、幅広い年代のお客様と接することで、「こういう人はこういう反応をする」と感覚的に理解できるようになりますよね。
WEBマーケティングはあくまでWEB上での効率化の手段に過ぎません。効率化とは、「すでに成功したものを手かず少なくやっていく」ことなので、最初からWEBだけですべてを完結させるのではなく、まずは実際の現場で営業や接客を経験し、成功のパターンをしっかり理解することが重要です。
そのうえで、その成功体験をWEBマーケティングに応用していくのが理想的な進め方だと考えています。

── WEBマーケティングのプロが「接客業をやっておけばよかった」というのはすごく面白いと感じました。
木下:多くの人が誤解しているのは、従来のマーケティングとWEBマーケティングの違いです。前者は数字で計測できないため、人の心を読み取り、直接相手を理解することが不可欠でした。
他方で、後者は成果が数字として明確に見えるため、「人の心を見なくても数字だけ見ればわかる」と考える人がいますが、これは間違いで「まずは人の心を深く理解し、そのうえで数字をもとに結果を確認する」という順序が大切です。
現在はAIが急速に普及しつつあり、「AI時代をどのように作っていくか」というのは若い世代に託された重要な使命です。私たちはインターネットが広がり始めた時代に、人々がネットで買い物をする文化をつくり、世の中を少しずつ変えてきました。同じように、今の若い世代はAI時代の社会を築く責任を担っています。
AIがもたらす未来は、恐ろしいものにも豊かなものにもなり得るため、自分たちが歴史的な分岐点に立っていることを自覚し、主体的に行動してほしいなと思っていますね。
「ピッパの法則」で作業効率が3倍に向上する
── 木下さんが日々の業務で特に意識していることはありますか?
木下:僕は以前から「ピッパの法則」を大切にしてきました。簡単に言うと、思いついたらすぐに行動するというシンプルな考え方です。やるべきことが出てきたら「今すぐやるか」、できなければ「いつやるか」をその場でスケジュールに組み込むというものです。この習慣を身につけるだけで、作業効率は少なくとも3倍に、人によっては10倍近くまで上がります。
具体的な実践方法は以下の通りです。
①10分以内のタスクは即座に実行する
②1時間かかるタスクは、当日中にいつやるかを決める
③半日以上かかるタスクでも、2週間以内にやる日時を計画する
重要なのは、タスクが発生した瞬間にすべてをスケジュール化してしまうことです。例えば、誰かに仕事を依頼されたら、その場でスケジュールを確認し、「この日時に対応します」と即答します。もし優先順位の調整が必要なら、その場で関係者と相談して無理のない計画を立てることで、後々のトラブルを大幅に減らすことができるのです。
ピッパの法則を始めると仕事のスピードが劇的に上がるため、「毎日残業していた人が、初日から夕方にはやることがなくなった」という例も珍しくありません。
仕事とプライベートも区別しないワケ
── ビジネスの現場では「生産性」について問題視されることが多いですが、メリハリなく作業したりしてしまうと、どうしても仕事が長引く原因になりますよね。
木下:多くの人は「やらなければ」と思うだけで、精神的なエネルギーと時間を大きく消耗しています。そこで、ピッパの法則を活用すれば、タスクが発生した瞬間に即座に処理するか、スケジュールに組み込むことで、未処理のタスクが溜まらずに次々と片付いていきます。
やるべきことが頭の片隅に引っかかっていると、どうしても思考が妨げられてしまい、本来のパフォーマンスが発揮できなくなります。しかし、タスクを受け取った瞬間に「いつやるか」を明確に決めれば、常に頭の中がクリアになります。逆に、「いつやるか」を決めないままにすると、常に意識がそちらに向いてしまい、集中力の分散や生産性の低下につながるのです。
── 今の働き方やオンオフの切り替えなど、ワークライフバランスについてのお考えをお聞かせください。
木下:基本的に仕事もプライベートも区別せず、すべて自分の人生の一部だと思っています。自分にとって仕事は、面白くて没頭できる活動であり、仕事をすること自体がストレス解消にもなることから、仕事は遊びのような感覚で楽しんでいますね。

また、仕事仲間や取引先、プライベートの友人など、いろいろな人付き合いがあるなかで、例えば「仕事の付き合いがあるから家庭の仕事ができない」というのはよくないと思うんです。そういった人間関係の築き方や距離感の保ち方は意識していますし、失礼のないように振る舞うことが重要だと考えています。
<構成/古田島大介 撮影/岡戸雅樹>
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Future Leaders Hub編集部