「1駅に1個のスマホ窓口を作りたい」“社会インフラ事業”に挑むZ世代経営者の葛藤
自身も学生起業の経験を持ち、数多くの大企業で経営参謀を務めてきた株式会社サクラサク代表取締役の山崎伸治氏が、次世代を担うZ世代経営者の悩みと向き合い、ともに将来を切り開いていく「SpecialMentor」。今回の相談者はOpen Sales株式会社代表取締役の上野剛氏です。
大学時代から営業一筋でキャリアを築き、SoftBankの通信代理店では社会人の営業マンを押しのけて売上1位、年商1億円を達成した実績を持つ上野氏。しかし、自身の祖母とのある出来事をきっかけに、現在の携帯電話業界が抱える課題に気づきます。
そこから生まれた新規事業「スマホの窓口」構想。誰もが安心してスマートフォンを使える社会インフラを目指すという壮大なビジョンについて、山崎氏がその実現に向けた核心に迫ります。

ワクワクしたものを本気で相手に伝えきる
山崎:まずは簡単に、自己紹介をお願いできますでしょうか。
上野:はい、ありがとうございます。今、Open Sales株式会社の代表をしております、上野剛と申します。4月1日から、今のサービス名に加えて「生み出すグループ」という社名に変更予定になっております。「心に余裕を生み出す」というのが企業理念です。
山崎:素晴らしいですね。では早速ですが、私がビジネスのアドバイスをするときに必ずお聞きしている3つの質問をさせてください。1つ目は「あなたの人生のゴールは何ですか」。2つ目は「あなたのビジネスのゴールは何ですか」。そして3つ目が「あなたの得意技とか好きなことは何ですか」。この3つを踏まえてアドバイスをしたいと思っています。
上野:はい、お願いします。まず、自分の人生のゴールが、ヒーローとして生き続けるっていうのが僕のテーマでして。
山崎:かっこいいな。
上野:歴史の教科書に「令和でこういう経営者がこういう世の中を作ったぞ」という1ページを残したいな、と。
山崎:素晴らしい。僕も幼稚園のときに偉人伝を読んで「僕も名前が出て偉人伝を売られる人になろう」と思ってたから、同じですね。では、ビジネスのゴールはどんな感じでしょうか。
上野:ビジネスのゴールは、社会の基盤となる社会インフラを作りたいなと思っています。ITというよりも、現場のリアルな繋がりを整えたいです。
山崎:なるほど。では、ご自身の強みや特技は何ですか。
上野:大学1年生からずっと飛び込み営業などをやってきまして、ワクワクすることが好きなんです。ワクワクしたものを本気で相手に伝えきって、応援される力があるんじゃないかなと思っています。
山崎:もうすでに応援したくなってますもん。それはすごく強い特技だと思います。
上野:ありがとうございます。

きっかけは祖母にスマホを売れなかった経験
山崎:私がなぜこの3つを聞いたかというと、ビジネスは人生をどう生きるかの手段でしかないと思っているからです。人生のゴールからブレイクダウンしてビジネスのゴールがあり、それを今の自分の得意なやり方で達成していく。その人なりの道を見つけるために、この3つを確認しています。それを踏まえて、今日は何でも聞いてください。
上野:ありがとうございます。今日は、ずっと考えていてやっとできそうな新規事業のお話を聞いていただきたいなと思っております。
山崎:はい。
上野:私自身、大学生からずっと携帯の販売をしてきて、全国1位を取った経験もあるのですが、あるとき自分の祖母から「携帯を買いたい」と電話が来たんです。実家に帰って、いつものように一番いい携帯とプランを提案しようと思ったんですけど、祖母にはそういったものは一切必要なかった。0.1ギガしか使わないような人に対して、初めて自分の商材を売れないっていう経験をしました。
山崎:オーバースペックってやつですね。
上野:はい。そこから今の携帯業界はおかしいなと思うようになりまして。ショップはどんどん減って、予約しないと1週間待ちだったり、いざ行ってもお金にならない機械操作の相談だと月2000円のサブスクを勧められたり。データ移行も、本当は簡単にできるのに1アプリ500円で1万円以上を取ったりとか。そういった業界の闇をたくさん見て、これを解決したいなと。そこで考えたのが、保険の窓口のように、交番感覚で気軽に相談できる「スマホの窓口」を作りたいという企画です。
山崎:なるほど。
上野:最終的には、1駅に1個あるような社会インフラにして、全国民が安心して暮らせる世の中にしたいんです。ただ、その店舗展開をフランチャイズで行うべきか、すべて自社で行うべきか、知識がなくて悩んでいます。

事業の成否は「社会性・独自性・経済性」の順番で決まる
山崎:まず、このビジネスモデルの全体像でいうと、ありですね。新規事業のスタート地点は、誰かの「不」や「困っていること」を解決することです。僕は事業に大事なのは「社会性」「独自性」「経済性」の3つがこの順番であることだと思っています。
上野:なぜこの3つなのでしょうか?
山崎:社会性がない事業は長続きしません。今の話は、シニアの方々をはじめ、多くの人が困っていることなので、社会性はめちゃくちゃあります。問題は独自性の磨き方。今の段階はまだ「ビジネステーマ」であって、勝つためのキードライバーとなる「ビジネスアイデア」にまで昇華させる必要があります。
上野:社会性があってもまだ独自性が弱いということですね。
山崎:そして、最後に経済性です。いいことをしていても、収益が上がる仕組みがなければ続きません。丁寧に対応すればするほど時間はかかり、1店舗あたりの処理能力は落ちます。これは経済性にとってはマイナスです。単価を上げれば解決しますが、そうすると社会的な理念が達成できなくなる。ここを見つけるのがすごく難しい。
キャッシュポイントをどう作るか。丁寧にコンサルティングをする対価としてエントリーフィーをいただくのはありだと思いますが、それ以外にどこで収益を上げるか。例えば、お客さんにとって本当にいいアプリを自社開発して使っていただくとか。あるいは、来店されるお客さん自体をマーケティングツールとして捉え、その方々にアプローチしたい企業と提携して、お客さんのためになる他社の商品を紹介する、という横展開も考えられますね。
「使わない=悪」ではない。事業の主語を“顧客”に置く
上野:収益モデルとして、月1000円のサブスクビジネスを考えています。相談し放題で、修理やデータ移行もすべてできる。ただ、お金を払っているのに使わない「幽霊部員」をなくしたいんです。なので、その1000円にはスマホの保険も付いてくる形にすれば、たとえ来店しなくても損はしていないという状態を作れるんじゃないかと。
山崎:来てくれた方に損をさせたくないという考え方は立派だと思います。ただ、少し分解してみましょう。サブスクは、あまり使わない人がいるからこそ成り立つビジネスモデルです。そのバランスをあえて崩そうとしているので、価格設定が高くなる恐れがあります。
上野:価格設定が高くなることは避けたいです。
山崎:そもそも「使っていない人がいることがダメ」なのではなく、「満足していない状況がダメ」と発想を変えるべきです。使っていなくても「あそこに入っているから安心だ」とか「行きたい時に行ける心の余裕が嬉しい」と思っていただけたら、それはもう価値なんです。使っていないのは悪だと決めつけること自体が、事業者側の傲慢かもしれません。
事業を始めるときは「僕が社会をこう変えたい」と主語が自分でいい。でも、事業を決めた瞬間から、主語は「顧客」にならなければいけない。顧客がどう思うかがすべてです。僕らの思い込みはどうでもいい。

まず1人の顧客と向き合うことから始まる
上野:そうなると、人員配置や出店場所、価格帯などを考えていく必要がありますね。採用も、フランチャイズなのか、正社員なのか……。
山崎:それらすべては、「誰に何をいくらで」というビジネスの根幹が決まってから考えることです。多くの人は「いくらで」を後回しにする。でも、価格が決まらないと、お客さんが買うかどうかの判断ができないし、ビジネスとして成り立つかどうかの議論もできません。
まずは荒削りでもいいから「誰に何をいくらで」を決める。そして、たった一人のお客さんが「それなら絶対に買う」と言ってくれるまで、そのモデルを磨き続けることです。一人のお客さんが買わない限り、100万人が買うことは絶対にないですから。
上野:なるほど。数千万円かけなくても、イオンの催事ブースのような場所でテストマーケティングをしてみるのも手ですね。
山崎:その通りです。そして、フランチャイズか自社かという議論も、主語が自分に戻ってしまっている証拠です。
上野:はい!
山崎:お客さんからすれば、フランチャイズだろうが直営だろうが関係ない。「自分のために一生懸命やってくれるところがいい」だけです。判断軸は「お客さんにとってどちらがためになるか」であるべき。そう考えると、その二者択一は意味のない議論だとわかりますよね。
上野:グサグサ刺さります。
山崎:経営者は間違っていたと気づいた瞬間に、全力で引き返せばいいんです。僕は「朝令暮改」ではなく「朝令“朝”改」でいいとさえ思っています。考え方が変わるのは進化の証です。今日の学びは、自分の固定概念を捨てて、事業の主語をすべて顧客に変えること。これを意識するだけで、あなたの事業はきっとうまくいきます。シニアマーケットのプロとして、私も全力で応援しますので、ぜひ頑張ってください。
上野:ありがとうございます。今日から固定概念をどんどん外して生きていきます!

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Future Leaders Hub 編集部 