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2026.02.12 17:00

「周りからどう見られるかなんて関係ない」老舗企業のリーダーが考える“AI時代の最強スキル”


「自分が今学生なら、楽して稼ぎたいです」

インタビューの冒頭、そう言って屈託なく笑う魚伊三株式会社の取締役、小美濃一喜氏。

魚伊三株式会社は仕出し料理や弁当の配達を手掛ける東京の老舗企業です。そんな歴史ある会社を率いる小美濃氏の言葉の裏には、数々の苦労と挑戦、そして人との出会いに裏打ちされた確固たる仕事観が隠されていました。

20代で熱中したこと、仕事が楽しいと思えた瞬間、そしてこれからの時代を生きる若者たちへの熱いメッセージ。小美濃氏の言葉から、キャリアを切り拓くためのヒントを探ります。


「作って喜んでもらえる」という純粋な喜び

「学生時代は世間を知らなかったので、自分の得意なことや好きなことを仕事にできたらな……と常々思っていました。まったく知らない分野よりは、浅い経験の中でも自分ができることに絞り込んでいきましたね」

小美濃氏の実家は、両親が経営する料理関係の自営業。幼い頃から「食」に囲まれた環境で育ったことが、自然と料理の道へと導きました。

「最初の就職先は手作りの居酒屋さんだったんです。でも、そこがめちゃくちゃブラックで……。採用時に聞いていた話と実際の労働環境は全然違いました。休憩もままならず、営業終了後の深夜から朝方まで無給で料理の研修を受ける毎日でした」

 しかし、小美濃氏はその経験を「ありがたかった」と語ります。

「料理を作ること自体にすごく興味があったんです。教わったことを家で練習して、両親や祖父母に食べさせると、みんなが喜んでくれる。作って喜んでもらえるって、すごく嬉しいじゃないですか。それが僕の中での料理人としての最初のきっかけだったと思います」

 どんなに厳しい環境であっても、学びたいという情熱と、誰かの「おいしい」という笑顔が、小美濃氏の原動力となっていたのです。

会社をやめて、単身オーストラリアへ

 そんな小美濃氏が20代を振り返り、もう一つ熱中したものとして挙げたのが「英語」でした。

「姉が外国人と結婚したんです。でも、相手は日本語が話せない。家族になるのにコミュニケーションが取れないのは嫌だなと思って、一念発起しました。英会話スクールに1年通ったのですが、スピーキング力はなかなか上達しませんでした。これじゃあかん、と。思い切って会社を辞めて、ワーキングホリデーでオーストラリアに行ったんです」

 現地では、あえて日本人が少ない田舎の語学学校を選択。英語漬けの環境に身を置くと、2週間ほどで耳が慣れてきたと言います。語学学校を終えた後は、中古車を購入し、オーストラリア大陸を一周する旅へ。

「旅の途中で出会った人たちと『じゃあ一緒に行こう』と車をシェアして、ガソリン代を割り勘しながら旅をしました。社会人としての責任からすべて解放されて、すごいはっちゃけましたね」

暑ければ車を停めて美しい海に飛び込み、夜はスーパーで買った食材で自炊し、仲間たちと毎晩乾杯する。そこで生まれた人々との繋がりは、今でも続く「最高の財産」だと小美濃氏は語ります。

周りからどう見られるかなんて関係ない

「20代は苦労の連続でした。理想と現実のギャップに悩むことばかりで。楽しかったのは、仕事そのものというより、仕事が終わった後のプライベートでしたね。会社の先輩や同僚と飲みに行ったり、みんなで計画して沖縄へ旅行に行ったり。大変な仕事を一緒に乗り越えると、仲間との間にすごい一体感が生まれるんです。苦労を共有するからこそ、分かり合える。そこで生まれる絆が、何より楽しかったのかもしれません」

 仕事での成功体験だけが、楽しさのすべてではない。苦楽を共にした仲間との繋がりこそが、かけがえのない時間を作り出すのかもしれません。

「もし、若いころに戻れるなら『もっといろんな人と、怖がらずにたくさんコミュニケーションを取りなさい』と言いたいですね。自分を守りたい一心で、あまり前に出ないタイプだったんです。そんな昔の自分に、『周りからどう見られるかなんて関係ない。大事なのは自分だよ』と伝えたい。もっといろんな人と話していれば、仕事も人間関係も、もっと楽しめたはずですから」

他人の評価を恐れず、自分を信じて一歩踏み出す勇気。それが、世界を広げるための鍵のようです。

AI時代に不可欠な「人間にしかないスキル」

最後に、どんな若者と一緒に働きたいかを尋ねました。

「人とコミュニケーションを取るのが好きな人ですね。技術やスキルは後からついてきますから。コミュニケーション能力こそ『AIに取って代わられない、人間にしかない技術』ですよね。お互いのことを理解し合えれば、仕事は格段にやりやすくなります。逆にコミュニケーションが不足すると、『自分は嫌われているんじゃないか』といった被害妄想が生まれ、小さなすれ違いが大きな溝になってしまう」

 わからないことは素直に聞き、相手の状況を思いやり、自分の考えを伝える。この基本的な対話の積み重ねが、信頼関係を築き、チームの成長を促します。

「コミュニケーション能力さえあれば、どんな仕事だってできる。僕はそう信じています」


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