ドラマーから麻婆豆腐ラーメン店主へ ー 「自分の人生を生きる」ことを体現する起業家が挑む“若者のキャリア革命”
現代を牽引するZ世代は、働くことに何を求め、どのように向き合っているのか。このリレーコラム【Z FACE】では、今注目すべきZ世代自身が「働く」をテーマに自身の考えを展開します。彼らのリアルな声から、多様な価値観が交錯する現代における「働く」の本質を読み解くヒントを見つけ出します。
「働く」をテーマにしたコラムの第2回目は、株式会社やるかやらんか 代表取締役 西奈槻さん。ノリでラーメン屋を開業し、現在では、Z世代の視点を生かしたSNS・ブランディング支援など、クリエイティブ領域にも事業を拡大する、株式会社やるかやらんか。「日本の若者に”選択肢”を示す」をVISIONに掲げる西さんが語る「働く」とは。
株式会社やるかやらんか代表取締役の西奈槻です。私たちは『日本の若者に”選択肢”を示す』というビジョンのもと、奈良を拠点に事業を展開しています。原点は、ならまちで創業した麻婆豆腐ラーメン専門店「すするか、すすらんか。」。現場での挑戦を通じて、働くことの意味と“自分の人生を生きる”ことの意義を確かめてきました。
私は、小学生の頃から音楽に没頭し、将来はプロドラマーを志していました。高校時代には米国のマーチングバンドのオーディションに挑戦し、価値観も背景も異なる人たちの圧倒的な表現に触れ、帰国しました。私は「人の心を動かしたい」という思いでドラムを手段として捉えていたことから、ドラムそのものを愛する人たちとの違いを感じ、音楽の道を諦めました。それからは自分の熱中できるものを探す一方で、近畿大学農学部に入学し、サークル活動、授業、アルバイトをするようなごく普通の学生生活を送っていた矢先、2020年の新型コロナウイルスで生活は一変します。授業もサークル活動も止まり、閉塞感の中で自分を見つめ直すうちに、「起業で人生を表現しよう」と決意しました。Facebookで経営者へ片っ端から面会を申し込み、3人目に出会った方が店舗跡地を貸してくださり、そこで店を営むことになりました。とはいえ、私は経営も料理も未経験。そこで同じサークルの親友で料理が得意な奥野亮太郎(現取締役)を誘い、彼の麻婆豆腐と当時よく食べていたラーメンを掛け合わせた店を開業しました。

店名は私の口癖「やるか、やらんか。」から「すするか、すすらんか。」に。しかし、オープンしても客足は簡単には伸びず、駅前でのビラ配り、SNS運用、プレスリリースを持ってテレビ局へ通うなど、できることはすべてやりました。やがてお客様が増え、志を持つ学生たちも集まり、店舗運営以外にも様々なことに挑戦するようになり、2022年4月に、株式会社やるかやらんかを設立。Z世代の視点を生かしたSNS・ブランディング支援など、クリエイティブ領域にも事業を広げてきました。
私は、働くことは「自分の可能性を広げ、人生を豊かにする手段」だと考えます。しかし日本の若者には、それを実感できる機会自体が少ない。大学に進み、学業やサークル、アルバイトに日々を費やし、就活期に初めて「自分は何者か」と向き合う。しかしアルバイト以外の仕事を知らないまま未来を描くのは無謀に近いです。入社前後のギャップに悩み、会社の愚痴や将来不安ばかりを口にする、そんな光景を私は何度も見てきました。その背景には、新卒採用が短期決戦の「お見合い」型に偏っている現実があります。限られた面接時間の話しぶりや、初任給・福利厚生といった表層の条件で意思決定が左右される。学生は関心領域や貢献余地を確かめる前に内定の有無で動き、企業は実務適性や価値観の合致より「面接が上手い人」を選びがち。その結果、入社後に期待のズレが露呈し、早期離職が起きやすくなっています。だからこそ、現代の採用にはインターンシップが必要です。

インターンシップは、安価な労働力の確保ではなく、関係構築のために必要であり、採用の前段に意図的な「お付き合い」の時間を確保できます。面接の巧拙ではなく現場でのふるまいを、条件の良さではなく価値観の近さを、短期の判断ではなく時間をかけた積み上げを重視する。それが、ミスマッチを減らし、納得感を持って働くことへの第一歩につながると考えます。
私たちのもとには、「何かしたい」という熱量(私たちの言葉でいえば“バイブス”)を持つ学生が相談に来ます。何かに挑戦したい、将来は起業したい、主体的に学びたい。でも、どこでそれをやればいいのか分からない。そんな純粋な渇望に応えるべく、私は若者に機会と挑戦の舞台を提供するキャリア支援事業を始めました。
日本は意思を持たずとも生きられるほど平和で便利ですが、その分、夢や希望が薄まってしまう危うさもある。社会に出てからも夢を手放さず、自分の人生を納得して生きる若者を増やしたいです。

働くとは、自己の存在価値を認め合い、人と関係を築き、人生を豊かにしていく行為です。私たちはラーメン店の経営をきっかけに、自分たちの選択肢を広げ、自分の人生を生きている実感を得ました。今度はそれをもっと多くの若者に広めていきたいです。日本の若者が、多様な選択肢を知り、自分の意思で選び取り、前向きに働く、そんな当たり前を増やしていきたいです。その先に、自分の人生を生きる若者が日本の未来を牽引する国をつくることを、私たちは本気で目指して参ります。
あなたにおすすめの記事
CATEGORY
KEYWORD
SEARCH | 記事をさがす
RANKING / TOP5
「センスより『やる気』がある人が長期的に結果を出す」北の達人木下社長が明かす“成長する若手に共通する特徴“
「8時間じゃ足りない」働き方改革に違和感を覚え独立した経営者の意外なキャリアパス
「本気で注げるものを見つけ、リスペクトできる仲間と出会う」Luup創業者が20代に伝える人生の本質
『Future Leaders Hub』発のラジオ番組、まもなく情報解禁!
Future Leaders Hub編集部 