完璧を演じるリーダーが現場の情報を壊す?Z 世代と探る自虐と心理的安全性のリアル
時代の最先端の価値観を持つ世代として、多くの企業が注目する Z 世代。
しかし、彼らが職場において何を考え、どのようなリーダーを求めているのか、その「本音」に触れる機会は多くありません。
「リーダーは常に完璧で、威厳を保たなければならない」
——そんな大人が信じて疑わない「強さ」の定義が、実は現場の情報を遮断し、優秀な若手の離職を加速させているとしたら?
今回は、Z 世代のクリエイティブカンパニーFiom の CEO であり、Z 世代創造性研究所(Z-SOZOKEN)所長を務める竹下洋平が、現役大学生 4 名と座談会を実施。
大人が良かれと思って纏っている「鎧」が、Z 世代にとっては摩擦でしかないという生々しい実態を、11 の問いから深掘りしました。
今回の座談会には、学部も学年も異なる、多様な価値観を持つ 4 名の現役大学生に集まっていただきました。
- M.M.さん(明治大学 3 年) 趣味は行ったことのないパスタ屋の開拓。50 人規模のアルバイト先で、組織の「力」のあり方を冷静に見つめる。
- W.S.さん(上智大学 4 年) 現在は卒業研究に邁進中。店長とのコミュニケーションにおける「言語化」と「安心感」を重視する。
- N.H.さん(筑波大学 2 年) ゼミ選びに苦戦中。趣味はドラマ鑑賞。リーダーの「優しさ」と「隙」が報告のしやすさに直結すると語る。
- K.S.さん(武蔵野大学 2 年) 趣味は野球観戦。厳しい店長の下で働く経験から、大人が隠したがる「弱み」の価値を鋭く指摘。
- リーダーを表す一文字——「力」か「硬」か
- 完璧主義が招く「報告の遅延」という経営リスク
- 自虐の技術——「推せる」と「寒い」の分水嶺
- 成功談は雲の上、泥臭い話は「地続きの地図」
- 結論:一人で頑張らない「脱力」のリーダーシップが重要
リーダーを表す一文字——「力」か「硬」か
── Q1:まずは皆さんが今接している上司やリーダーを一文字で表すと何になりますか?
M.M.:私は「力」です。バイトが 50 人いる大きな職場で、シフトを組めるのがたった一人しかいない。その人の長年の勘と経験で回している「縁の下の力持ち」という印象です。
W.S.:私は「言」ですね。きちんと言葉で伝え、何事もしっかりと言語化してくれる店長です。コミュニケーションを密に取ってくれるので。
N.H.: 「優」です。失敗しても優しくフォローしてくれます。合間で雑談もあって、雰囲気がすごくいいです。
K.S.:私は「硬」ですね。店長が若干パワハラ気味というか(笑)、融通が利かないので。
── Q2:その人に「人間味」を感じて親近感が湧いたエピソードを教えてください。
M.M.:普段全く笑わない人なんですが、ふと笑ったのを見て「あ、この人も人間なんだな」と。責任が重すぎて笑顔を忘れがちな環境だからこそ、そのギャップに人間味を感じました。
W.S.:真面目な店長が、実はギャンブル好きだと知った時。自分に近い部分があるんだなと感じて、一気に親近感が湧きました。
N.H.:怖そうなイメージだった社員さんと、好きなドラマの話で盛り上がった時。一気にイメージが変わりました。
K.S.:私が辞める話を伝えた時に、普段偉そうにしている店長が本気で狼狽えたんです。それを見て「この人も意外と哀れなんだな」と。裏の顔が見えて、ある意味で人間味を感じました。
完璧主義が招く「報告の遅延」という経営リスク
── Q3:「隙がなくて怖い」と感じる上司の前で、報告を遅らせたり隠したくなったことは?
M.M.:私はすぐ言いますが、周りの新人は報告を嫌がっていますね。他の人がレジを打ち間違えた時、その人に報告するのは「嫌だな」という空気を感じます。
W.S.:基本は報告したくない、遅らせたい。バイトでストレスを溜めたくないし、一回でも腹が立ったら辞めたい派なので。
N.H.:報告は苦手です。社員さんよりは仲の良い先輩に助けを求めがち。以前の店長が怖くて、報告自体が苦痛でした。
K.S.:店長といざこざがある前は遅らせたい気持ちもありましたが、今は起きたらすぐ判断を仰ぎます。
── Q4:その時、頭の中でどんな「気まずさ」が渦巻いていましたか?
M.M.:報告が「めんどくさい」んです。本来やるべきことに時間を取れなくなるタイパの悪さに対する気まずさを感じます。
W.S.:丁寧に教えてもらったところで同じミスをした際、「さっき言ったよね」という説教をされる予測。その「怒られ」への気まずさです。
N.H.: 「そんなこともわからないの」と言われるのを予測してしまい、気まずさより「怖さ」が勝っていました。
K.S.:怒られのループにハマりたくない。キツめに、長めに怒られるのが分かっていると、その時間を避けたいという気持ちが強いです。
── Q5:逆に、リーダーが「隙」を見せることで、チームの空気はどう変わると思いますか?
M.M.:リーダーが積極的に失敗を見せると、「失敗することは悪いことではない」と示せる。何を挑戦しても失敗はつきものだと思えれば、活気が出ると思います。
N.H.:上の人が一人で頑張っていると言い出しづらい。「一緒に共同してやっていこう」という姿勢があれば、相談しやすくなります。
W.S.:弱みを見せてくれた方が、こちらとしてもありがたい。お互いに気を遣いすぎない Win-Win な関係になれるはずです。
自虐の技術——「推せる」と「寒い」の分水嶺
── Q6:上司の失敗談を聞いて「推せる!」と思うのと「寒い」と思うの、何が違うのでしょうか。
M.M.:自慢話に繋げるための「フリ」としての自虐は、途端に反応に困る。その「分水嶺」を間違えないでほしい。失敗談を「失敗への寛容さ」として使ってほしいです。
W.S.:過去の醜態を晒してまで私たちを安心させようとしてくれる意図が汲み取れるとカッコいい。意図が見えることが重要です。
N.H.:自分が失敗した時に共感してくれると心が軽くなります。でも、笑いに昇華できるスキルがない自虐は、反応に困ります。
K.S.:寒いのは、「自分は完璧だ」と言いながら実はミスをしていて、それを隠している時。指摘されると不機嫌になるのは本当にダサい。
── Q7:具体的にどんなレベルの失敗談なら心理的ハードルが下がりますか?
M.M.:プロでもやってしまうような身近なミス。自分と同じ失敗をプロでもするんだ、と思うと親近感が湧きます。
W.S.:プライベートな失敗談ですね。恋バナとか。友達と話すような内容を話せると、安心感があります。
N.H.:初心者の頃にやった簡単なミス。「プロでも最初はこうだったんだ」と思えると嬉しいです。
K.S.:普段見えないプライベートの話。とにかく人間味を感じたいです。
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成功談は雲の上、泥臭い話は「地続きの地図」
── Q8:社長の「輝かしい成功」と「泥臭い這い上がり」、どっちが頑張れる?
M.M.:泥臭い這い上がり。成功談は再現性がなく、一部分を切り取った感が否めない。下積みの話の方が参考になるし納得感があります。
W.S.:絶対に泥臭い話。どう乗り越えたのか聞きたい。ただ、入社動機としては成功ストーリーも安心材料にはなります。
N.H.:泥臭い話。輝かしいストーリーはスタートが違いすぎて「雲の上」の話に聞こえて、逆に諦める気持ちが芽生えてしまう。
K.S.:権威のある実績は入社したくなるけど、泥臭い話の方がいい。ただ、エビデンスのない運要素強めな話だと迷います。
── Q9:会社の SNS などでリーダーが「ダメな部分」を晒していたら、シェアしたくなりますか。
M.M.:友達に勧めようとは思わない。失敗は自分の行動の参考にするもので、大っぴらに広めるのはブランディングとして逆効果な気がします。
W.S.:成功も失敗も、他人にわざわざ伝えるものではない。線引きができない会社はあまり広めたくないです。
N.H.:あまり勧めたくないですね。失敗談ばっかり押し出す会社は、個人的には気になっても友達に勧めるかというと……。
K.S.:興味がないし、勧めるきっかけにならない。失敗を元にどうしていくかまで話してほしい。
結論:一人で頑張らない「脱力」のリーダーシップが重要
── Q10:もし皆さんがリーダーになったら、あえてどんな「自分の弱み」を見せたいですか。
M.M.:積極的に失敗を見せる。「失敗は悪いことではない」という姿勢を行動で示したい。挑戦しやすい空気を作りたいです。
W.S.:学びのある失敗。こういうことがあったよ、とメンバーに共有してプラスにしたいです。
N.H.:弱みを見せるのは苦手だけど、次に繋がる失敗、活かせた経験として後輩に示したい。
K.S.:失敗を一人で抱え込まず、すぐに共有する。みんなで支え合えるチームにしたいです。
── Q11:最後に、完璧主義で頑張っている大人たちへメッセージを。
M.M.:完璧を演じるように教え込まれてきた大人世代は大変だと思う。でも、もう少し気を抜いて、脱力してもいいんじゃないでしょうか。
W.S.:完璧な上司は求めていません。弱みを見せてくれた方が、こちらとしてもありがたい。お互い Win-Win になれるはずです。
N.H.:一人で頑張らず、後輩と一緒に完璧を作り上げる。「みんなで共同して目指す」スタンスでいてほしいです。
K.S.:失敗した後のリカバリーを早くすれば評価は下がらません。やるべきことをしっかりやっていれば、人間味があっても大丈夫です。
【Z 世代領域のスペシャリスト・竹下洋平のコメント】
座談会を通じて確信したのは、Z 世代はリーダーに「完璧」であることを求めていない、ということです。むしろ、リーダーが自らの「負の側面(失敗や隙)」を開示することで、現場の心理的ハードルを下げ、情報の透明性を高めている。
「完璧でなければならない」という強迫観念を捨て、部下と一緒に完璧を目指す。 大人が「脱力」すること——。それは妥協ではなく、次世代の優秀な人材を惹きつけ、組織の事故を防ぐための、最も合理的で高度な「戦略的マネジメント」なのです。
Z-SOZOKEN ( Z世代創造性研究所 ) 