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2026.06.12 16:00

「机上の空論では意味がない」<大企業の幹部候補×スタートアップ>が本気でぶつかり合うビジネスプログラムの全貌


2026年2月14日、セブン&アイ・ホールディングス本社では熱いビジネスピッチが繰り広げられていました。

行われていたのは実践型ビジネス講座「サクラサクアカデミー」の最終プレゼン。この日は半年に及ぶプログラムの最終発表でした。新しいビジネス(新規事業)を創り出す力を養うことを目的に開催されている「サクラサクアカデミー」は株式会社サクラサクとプレセアコンサルティング株式会社が共同で運営。

最大の特徴は、「大企業のリーダー候補」と「ベンチャー企業の経営者」がタッグを組むという点にあります。立場や文化の異なる両者がひとつのチームとなり、時間をかけて本気で事業プランを作り上げていきます。

プログラムの最後には、セブン&アイ・ホールディングス代表取締役会長の伊藤順朗氏をはじめとした経営陣に対して直接プレゼンテーションを行い、その案が実際に事業化される可能性もあります。

単に知識を学ぶだけの座学ではなく、「どうすれば世の中に新しい価値を提供できるか」という実戦を通じた学びを重視しているのがポイントとして運営されています。

なぜ今、このカルチャーが異なる両者が交わるビジネスプログラムが求められているのか? 今回は「サクラサクアカデミー」第6期の最終プレゼンの様子をお伝えするとともに、これまでに大企業の経営顧問を歴任し、本プログラムの講師を務める山崎伸治氏に「サクラサクアカデミー」が目指すことを伺いました。

大企業とスタートアップが融合する場

山崎伸治氏(株式会社サクラサク代表取締役)

私がこのアカデミーを始めたきっかけは、長年にわたり多くの大企業の新規事業立ち上げをお手伝いしてきた経験にあります。その中でセブン&アイ・ホールディングスさんとは長いお付き合いがありました。

小売業界のトップである同社が、既存のグループアセットを使うにせよ、使わずにまったく新しいことをするにせよ、それは大きな転換点になります。その思いを当時、経営推進本部長だった伊藤さん(現:代表取締役会長)にお話ししたところ、「おもしろそうだ。どんなやり方があるか相談しよう」ということになったのが始まりです。

私が課題として捉えていたのはスタートアップの人たちと、大企業の経営幹部の人たちとでは「ケミストリーが全然違う」という点でした。

お互いがどんな生態なのかも理解しないまま、机上の空論で事業開発を進めても、ほとんど意味がないことは経験からもわかっていました。ですから、まずは両者が直接触れ合い、一緒に事業モデルを作ることから始めるべきだと考えたのです。

そうすることで、考え方や性格の違い、経営者と大企業の幹部がそれぞれ何を考えているのかを、お互いに知る機会になります。

いくらスタートアップがいい提案を持っていっても、社内にいる人たちがそれを理解できなければ活かすことはできません。逆に、スタートアップが大企業に提案するにしても、中の人がどう考えるかを理解していなければ、ずれた提案になってしまいます。この両者を融合させたいというのがアカデミーのスタート地点でした。

半年間の徹底的な伴走で「事業立ち上げ」を実体験

伊藤順朗氏(セブン&アイ・ホールディングス代表取締役会長)

このアカデミーでは、第1回目からセブン&アイグループの幹部候補の方と起業家の方がチームを組むという形を最も重要なこととして位置づけています。

半年間、座学をしながら実際に事業モデルをがっつりと作り上げていきます。その過程では、私たちも徹底的にダメ出しをしながら、事業をどう作るのかをサポートします。

「事業を立ち上げる」ということがどれだけ大変なことなのか。それを参加者全員が実体験として経験することに大きな意味があります。

セブン&アイのグループ内でも、この経験をしたことがある人とない人では、その後の新規事業に対する取り組み方や意識、イメージがまったく違ってくるはずです。その違いを、徹底して理解してもらうことを目指しています。

「セブンのリソースありき」はNG。事業成功の3つの条件

山崎氏とともに本講座の講師を務める高森厚太郎氏(プレセアコンサルティング株式会社代表取締役)

このアカデミーの特色として、セブン&アイのリソース活用が挙げられますが、最初からそれを前提にすることは「なし」だと言っています。

なぜなら、事業として成功しないものにセブン&アイが関わるのはナンセンスだからです。大企業のネットワークありきで考えると、「甘えた企画」になってしまいます。

あくまで「事業として成功する見込みのあるものが、セブンの機能を活用することでレバレッジがかかる」という形でなければなりません。

事業を考える上で特に縛りはありませんが、私はいつも3つのことをこの順番で大事にするように伝えています。それは「社会性」「独自性」「経済性」です。

社会性のないものはやらない。自分たちにしかできない、独自性のないものを今さらやっても意味がない。そして最後に、NPOではないので経済性が成り立たないものはビジネスとして成立しない。この3つがしっかりと噛み合っていることが重要です。

「メンバー間の違い」を乗り越えた先に本質が見える

参加者が最初にぶつかる壁は、やはりチームビルディングです。メンバー間のカルチャーの違いでつまずきます。

スタートアップが大企業と何かをやろうとして失敗する原因のほとんどは、実はここにあります。能力や提案内容の良し悪し以前の問題なのです。

私自身、多くの大企業の経営顧問やスタートアップ支援、そして自らの事業を通じて、結局はそこが重要だと痛感してきました。この壁をアカデミーで体感させておくことで、彼らは本当の意味での「提携」を学びます。

次にぶつかる壁は、ビジネスモデルの「甘さ」です。消費者の選択は「買うか、買わないか」の二択しかありません。7〜8割の人が「いいよね」と言うような、ゆるく作られたサービスを私はまったく認めません。

その甘さを徹底的に指摘され、突き詰めていくことで、彼らは「事業とはこういうことなんだ」と本質を理解します。そして、ここで学んだことを自身の事業に活かせるようになるのです。

卒業生は会社のDNAになる。未来の幹部が創る新しい流れ

このアカデミーも今期で6期目を迎え、卒業生は30人近くになりました。グループ内に、新規事業をがっつりとやり切った経験を持つメンバーが30人もいることは、非常に大きな意味を持ちます。

実際に、セブン社内の新規事業応募制度では、この講座の卒業生たちがメンターとして後輩を指導するようになっています。これにより、社内で新規事業を進める際の流れが格段によくなっています。

参加者は30代、40代のリーダー格で、将来の幹部候補となる人たちです。彼らが毎年増えていくことが、会社の新しいDNAを創っていく。そこに大きな可能性があると感じています。

大企業に足りない「思い切りとアイデアと行動力」と、スタートアップに足りない「看板や人材、ノウハウ、資金」。それなら両者をくっつけた方が日本のためになる。そんなシンプルな想いが、このアカデミーの原点なのです。

「大企業のリソース」と「スタートアップの機動力」。本来交わるはずのなかった両者が、半年間の試練を経て一つのチームへと進化する。その過程で生まれるのは、単なる事業プランではなく、未来を切り拓くための「共通言語」と「挑戦のDNA」です。

サクラサクアカデミーが蒔いた種は、卒業生たちの手によって各組織へと広がり、日本経済に新しい風を吹き込む大きな力となっていくに違いありません。


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