なぜ日本人は英語を話せないのか? 英語教育のプロが明かす「シャイな人ほど英語でつまずく」驚きの理由
元ソフトバンク社長室長として、孫正義氏の秘書を務めたトライズ株式会社 代表取締役社長の三木雄信さんは、仕事に直結する「生きた英語」を身につけるためには、音と意味を直結させる「シャドーイング」と、特定の文型を繰り返し練習する「パターンプラクティス」の2つが重要だと話す。
英語学習のプロが習得に必要な学習法やTORAIZ(トライズ)流メソッドについて掘り下げていく。
なぜ日本人は英語を話せないのか?

── 日本人の英語学習者がつまずきやすいポイントや特徴を教えてください。
実は、弊社に来られる受講生を見ていると、英語でつまずきやすいタイプは“シャイな人”です。結局いくら「インプット」していても、英語を話せるようになるためには「アウトプット」する必要があります。
そもそも、普段から日本語でもあまり喋らない人は、英語になっても同じように口を開けない。結果として、なかなか英語力が伸びないんですね。
恥ずかしがり屋の人も本当にそうで、「間違えたら笑われるんじゃないか」とか「変に思われたくない」という気持ちが先に立ってしまう。そこで思い切って開き直れるかどうかが、ひとつの分かれ目になります。
他にも、ネイティブコーチとディスカッションをする場面で、「何を話していいかわからない」という人がいます。これはネイティブの人と英語で会話する以前に、日本語でも自分の意見を持ってディスカッションする経験がほとんどない人だと思うんです。
そういう意味だと、英語ができない根本的な原因は、その前提となる「コミュニケーション力」や「自分の意見を持って対話する習慣」に大きく関わっていると言えます。
── 大学生や新入社員などがグローバル人材を目指して英語に取り組む場合、具体的にどんな学習から始めるのが効果的なんでしょうか?
やるべきことは大きく分けて「シャドーイング」と「パターンプラクティス」の2つがあります。
まずシャドーイングですが、これは英語の音声教材を聞きながら、話者の発音をそのまま真似して追いかけていく練習方法で、1日30分から1時間やれば十分に効果が得られる方法だと思います。
なぜシャドーイングが必要かというと、日本の英語学習は“テキストベース”でしかやらないからです。そもそもネイティブが話す英語が聞き取れないから困るわけですが、それをすべて文字起こししたら意味がわかるはずなんですよね。
だから、頭の中に入っている「テキストベースの情報」と、「ネイティブが話している音」を紐付ける作業さえできれば、基本的にネイティブが話していることはわかるはず。 その紐付けをやるのがシャドーイングなんです。
例えば、「Ask her」はネイティブが発音すると「アスカー」のように聞こえます。この音の変化を知らないと、何を言っているのか理解できず、知っている単語なのに紐付けができなくなってしまいます。しかし、音の変化を体で覚えていれば、意味は一瞬で理解できるのです。
つまり、聞き取れない原因は英語が難しいからではなく、音の連結や変化に慣れていないだけであり、そこをシャドーイングで補えば、日本人はもともと語彙や文法の知識を持っているため、理解力は一気に向上します。
うちの受講生も、おおよそ3〜4か月ほど学習を続けたあたりで、かなりリスニングできるようになります。感覚としては、「気づいたら英語が自然と耳に入ってくるようになった」と自覚する瞬間があるみたいなんです。
さらに興味深いのが、「英語で夢を見るようになった」という声も結構多くて、英語を話せる・聞けるようになる直前の段階で、「夢に英語が出てくる現象」が起きているんじゃないかなと感じています。
大人の学習は「興味」がないと続かない

── シャドーイングを効果的に行う方法は何かありますか?
自分が興味を持てる教材を使うのが一番で、自分の仕事や関心に近い内容だと学習効率が上がります。やはり大人になってからだと、興味がない内容は覚えにくいですし、続けるのも大変です。
私はソフトバンクに転職後、孫氏と一緒に仕事をしていた時は企業の出資や買収の話をよく扱っていました。そこで教材として選んだのが、マイケル・ダグラス主演の映画『ウォール街』です。買収劇がテーマの映画で、内容が自分の仕事に直結していました。その教材を何度も聞いて、セリフをすべて口真似できるレベルまで繰り返していたのを覚えています。
今はNetflixで字幕を出せたり、ブラウザの追加アプリで音声と文字を連動させたりできるので、教材の選択肢は本当に豊富です。自分の好きなものを字幕と合わせて聞き、音声と文字を結びつける作業をするのが一番効果的だと思いますね。
── パターンプラクティスはどのような学習方法なのでしょうか。
人間の脳が一度に処理できる情報は、およそ7つ程度だと言われています。例えば、虹は7色とされていますが、本当は光のグラデーションなので無限に色があります。ではなぜ7色かというと、人間の脳がそれ以上の情報を一度に整理できないからで、そのことは心理学でも証明されています。音の大小や濃淡といった感覚も同様で、7段階を超えると順序の認識が難しくなります。
これが英語のフレーズ暗記とどう関係するかというと、文章を作るときに主語や動詞、冠詞など複数の要素を同時に考えるだけで、頭の中で7つくらいの処理が必要になるんです。そうなると、その次の言葉を考える余裕がなくなって、結局スムーズに話せなくなってしまうんですね。
それを常に頭の中で処理し続けていたら、当然スムーズには話せません。ただ、多くの日本人は英語を紙に書くことはできたりするわけじゃないですか。それはなぜかというと、ステップ化して処理できるから。
要は1語ずつ順番に処理していき、時間をかけてステップ化すれば正確な文章を作れます。つまり、文法や単語の知識はあっても、それをリアルタイム処理することは、人間の脳の構造上難しいということです。
実際、ネイティブのように話すには、いくつかのある程度のフレーズの塊を覚えておいて、「この場面ではこのフレーズで話す」と決めておくことが効果的です。そうすれば、場面に応じて主語や目的語などを置き換えるだけで済むため、会話をリアルタイムで組み立てやすくなるのです。
「自分が実現したい夢」から逆算する

── 覚えないといけないフレーズのパターンはどのくらいありますか?
仕事で英語を使う場合、本当に必要なフレーズは意外と少ないんですよ。例えば、ITの技術者で世界規模のプロジェクトを回す人でも、仕事で必ず使うフレーズは100個くらい覚えれば対応できると言われています。
もちろん、もっといろいろな言い方を知っていた方が便利ですが、まずは仕事を回すために最低限必要なフレーズを覚えるだけで十分だと考えています。
── 英語を習得するうえでの重要なマインドセットを教えてください。
大切なのは、「自分が仕事を通じてどんな夢を実現したいか」ということです。海外支店の責任者になりたい、研究者として国際学会で発表したいなど、具体的な目標があるなら英語は欠かせません。英語が話せないことでチャンスを諦めてしまう人は、実は自分の可能性を大きく狭めているんですね。
でも逆に考えると、1年で1000時間ほど集中して取り組めば、誰でも話せるようになります。だから、今英語が話せないという理由だけで自分の可能性を狭めるのはすごく損しているかもしれません。1年後にどうなりたいかを考え、着実に学習を重ねていけば、必ず英語を話せる自分になれると信じています。
<構成/古田島大介 撮影/林 紘輝>
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Future Leaders Hub 編集部