虐待と貧困を生き抜いた女性経営者、「本当に何をやってもダメだった人が最後に来る場所」を提供するワケ
「殴られるか殴られないか。それがすべてで脳が動いていました」
虐待、貧困、宗教二世という壮絶な幼少期を乗り越え、現在は7500人以上の人生を好転させてきたという株式会社コレット代表取締役、田中よしこ氏。
「本来の自分」を生きるための能力開発を手がける田中氏は、自身の30年にわたる苦悩と経験のすべてを、今まさに「生きづらさ」を抱える人々のために注いでいます。
何を手に入れても埋まらなかった心の空虚、海外での衝撃的な出会い、そしてたどり着いた「自分を幸せにする力」その軌跡と、未来への強い思いを伺いました。
「何をやってもダメだった人」が最後に来られる場所
「弊社の事業はメンタルケアというくくりにはなりますが、脳の仕組みに沿って、本来の自分をどのように生かしたらいいかという能力開発に近いものです。ただ、脳科学といった切り口では検索する人が少ないと考え、『悩みを抱えている人』全般に向けたサービスを提供しています」
企業研修やコーチングの要素も含まれており、引きこもりの方から経営者まで、幅広い層の方に個別でセッションをしているとのこと。
「普通のカウンセリングやコーチングとは全く違う切り口なので説明が難しいのですが、『本当に何をやってもダメだった』という方が最後に来られる場所にできればと考えています」

金持ちになっても生きづらさは変わらない
こうした事業を展開する背景には田中氏の生い立ちが深く関係している。
「もともと私が虐待、貧困、宗教二世という家庭で育ったことが原点です。自分のことをどう大事に扱うかという概念がなく、『殴られるか殴られないか』ということだけで脳が動いているような幼少期でした。家にいたら幸せになれないと社会に出ましたが、生きづらさは変わりませんでした」
外的要因ではなく、本来の自分らしく生きなければ人は幸せになれないのだと、30年かけて身をもって体感。この経験が誰かの役に立つのではないかと思い、起業を決めたと振り返ります。
「それまでは20年間、会社員をしていました。貧乏だったので『金持ちになったら幸せになれる』と信じ、ハードワーカーなキャリアウーマンとして働きました。欲しいものをリストアップし、それらを全て手に入れました。最後に自分でマンションを買うという目標も達成したのです」
理想通りの間取り、きれいな夜景。しかし、幸せになるかと思いきや、感じたのはものすごい虚しさだったそう。
「『あと30年もローンを払わないといけないんだ』と思ったとき、私はちゃんと生きていないのではないかと気づいたのです」
「今、生きていること」に感謝
満たされない思いを抱えながらも仕事に没頭し続けて迎えた30代に田中氏は転機を迎えることになる。
「それまでの人生で、私以上にかわいそうな人に出会ったことがありませんでした。しかし、スリランカ人の同僚が私の狭い常識を打ち破ったのです。彼は、内戦の時代を生きた人でした。彼には4人兄弟がいましたが、内戦で3人が殺されてしまったそうです。私以上に過酷な話を、彼は淡々と語りました。そして最後に、『だから感謝している』と言ったのです。
最初は英語を聞き間違えたかと思ったという田中氏。その真意を聞くと心が奮えたそう。
「何に感謝しているのかと尋ねると、彼は『今、生きていること』と答えました。その言葉に心が震えました。こんな目にあっても感謝している人がいるのに、私はずっと文句ばかり言っている。問題は私の中にあるのではないか。そう気づかされました。ただ、多くの人がそうであるように、私も『気づいた後、どうすればいいか』がわかりませんでした。その『次の指示』を的確に出せれば、みんなが元気になるのではないか。それが現在の事業の基礎になっています」

環境はあなたのせいじゃない
もし、今の知識や経験を持ったまま幼少期のご自身に会えるとしたら、どんな言葉をかけるか。田中氏に尋ねると「環境はあなたのせいじゃない」とまず伝えたい胸中を明かしました。
「『とにかく自分がどうしたいかっていうことを考えながら過ごしなさい』と伝えたいですね。当時は『自分が悪いからこうなるんだ』と、自分を責めることで折り合いをつけていましたから。自分のことがわからないのは、たくさんのことを我慢しているからです」
かつての自分に伝えたかった言葉を現在は事業を通じて広めている田中氏。伝えたいメッセージは明確でした。
「人生に迷ってしまっている方は未処理の感情が溜まっていて、その処理の仕方がわからないだけなのです。なので、そこを取り除けば、もっといい人生が待っています。脳の中にあるのは単なる情報です。情報は、いくらでも自分にとって最適なものに変えられます。今がつらいとしても、その先が必ずある。そういう生き方ができるということを信じてほしいです。それが私からのエールです」
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Future Leaders Hub 編集部