頑張っているのに結果が出ないのは「不条理」ではなく「不合理」かもしれない【編集後記】
こんな経験、ありませんか?
課題はオンラインで入力したのに、提出は紙。プリンターがなくて、わざわざコンビニに行く。説明会は現地参加必須。時間をかけて行ったのに、内容はスライドの読み上げだけ。「これ、意味ある?」そんな風に叫びたくなったこと、一度はあるかもしれません。
このコラムは、そうした小さな違和感を、将来につながる武器に変える話です。
「これ、意味ある?」という心の叫びには、「不合理」という名前があります。合理とは、理屈に合っていること。不合理はその逆で、「理屈に合わず、効率が悪いこと」です。AIの進化などで、何もかも効率化されているように見える今の時代。それでも世界は「不合理」であふれています。
不合理なことを見つけるのは、案外難しい
ここで、1分だけ考えてみてください。
どんな小さなことでも構いません。あなたの身の回りに、「理屈に合っていない」「非効率だ」と感じることはありますか?
(…1分経ったことにします)
すぐには思いつかなかった人が多いのではないでしょうか。
例えば、こんなことです。
・部活でプレーのうまさに関係なく、先輩の方がえらい
・忙しくても友だちのLINEにすぐ返信しないと「既読スルー」と言われて嫌われる
・同じバイトなのに、高校生は時給が低い
そもそも、自分の答えを採点してもらえるわけでもないのに「1分考えろ」ということ自体が、あなたにとって不合理だったかもしれません。これらの例を聞いて、「言われてみれば確かに不合理かも……」と感じた人もいるでしょう。
もし最初から2つ、3つと挙げられたなら、かなり鋭い視点を持っている人だと思います。実は、不合理なことを見つけるのは、案外難しい作業なんです。
なぜでしょうか。それは、ほとんどの不合理が「当たり前」や「常識」という顔をして存在しているからです。
冒頭に挙げた、オンライン入力後に紙で提出する課題も、現地参加が必須の説明会も、「昔からそうだった」「みんなやっている」という“常識”を理由に、不合理なまま続いているのかもしれません。
違和感を覚えられればまだ良いほうです。ほとんどの場合、不合理だと気づかないまま受け入れてしまいます。こんなことを書いている私だって、今でも多くの不合理に気づかず暮らしているはずです。
この「不合理な常識」を見つけるのが得意な人たちがいます。それが、起業家と呼ばれる人たちです。
不合理な常識を疑い、新しい価値をうみだす
今回、インタビューしたTWOSTONE&Sons CEOの河端保志さんもそのひとり。
「不合理な常識を疑い、新しい価値をうみだす」との思いで学生起業し、30歳で上場。今も次々と不合理を見つけ、新しい挑戦を続けています。河端さんが起業家として最初に向き合った不合理は、「日本ではITエンジニアが不足しているのに、欧米と比べて待遇が悪い」という点でした。
確かに、「日本企業で働くと、ITエンジニアの賃金はこれくらい」と最初から決まっているなんて、不合理な常識ですよね。
また、不合理は「見つけるだけ」では意味がありません。河端さんが掲げているのも、「不合理な常識を疑い、“新しい価値をうみだす”」という姿勢です。なぜおかしいのか考え、どう変えられるかを探り、実際にやってみる。その結果として「新しい価値」を生み出して、ようやく意味が出ます。
失敗しても、やる。うまくいかなくても、続ける
河端さんは、IT人材の賃金アップにつながるサービスを形にしました。言うのは簡単ですが、実現するのは決して容易ではありません。そんな「不合理」に挑戦し続ける河端さんの言葉のなかで、印象に残ったものがあります。
「一度やると決めたら、自分が納得できるところまで、やりきる。途中でやめてしまうと、見えてこないことがあるんです」
失敗しても、やる。うまくいかなくても、続ける。成功する保証がなくても、やりきる。それって正直、時間もかかるし、楽ではありません。
一見すると、かなり非効率です。でも、それは「不合理」でしょうか。河端さんが向き合っているのは、世の中にある「不合理な“常識”」です。
みんなが当たり前だと思い込み、疑うことすらしていないもの。“常識的”なやり方をしていては、その存在に気づくことさえできません。
だからこそ、それを壊すには、“常識外れ”な挑戦が必要になります。
「遠回りに見える行動や失敗の積み重ねは、未来から振り返れば、実はとても合理的な選択だった」
そんなことは、決して珍しくありません。「不合理」と似た単語に「不条理」という言葉があります。条理とは「物事の筋道(条)や道理(理)」。不合理が「理屈に合っていないこと」なのに対して、不条理は「道理が通らず、納得できないこと」です。
例えば、「なぜ頑張っていただけなのに、こんな悲惨な目にあうの?」「なぜあんなに悪さばかりしている人に、宝くじが当たったの?」など。
理不尽で、自分の力ではどうにもならず、いくら「なぜ」と考えても答えなんて出てきません。人生には、確かにそういう「不条理」があります。
経験が少ない今だからこそ、違和感に気づける
でも、「不合理」は違います。
理屈に合っていないのなら、理にかなった方法がきっとあるはずです。
「頑張っているのに、結果が出ない」
そう感じたとき、すぐに「不条理だ」と決めつけないで一度立ち止まって考えてみてください。
それは本当に変えられないことなのか。やり方を疑ってみる余地はないか。
「やる意味があるのかわからない」
そう言って、早々に諦めてしまう人がたくさんいます。学校でテストの成績が良かった人ほど、「正解が見えないこと」に慎重になりがちです。
まだ選択肢が見えていないだけかもしれない。やりきれていないだけかもしれない。若くて経験が少ない今だからこそ、違和感に気づけます。今だからこそ、“常識”を疑えます。
「常識外れに見える行動が、実は一番合理的だった」
ぜひ、あなたの身の回りにある違和感を、そのままにしないでください。自分が納得できるところまで、やりきってみてください。その一歩が、あなた自身の未来を変えるかもしれません。
<文/清水俊宏 撮影/星 亘>
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清水 俊宏 