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2026.05.14 16:00

見据えるのは「建物」の先にある未来…“繋がり”をデザインする建築学生の空き家再生


「ESG&well-being」連載第11回は、『SDGs AWARD for University 2026』決勝進出団体による寄稿レポートをお届けします。

今回登場するのは、九州大学の建築学生を中心に、地域に増え続ける空き家を自らの手で改修し、地域と学生のコミュニティ拠点へと再生する『糸島空き家プロジェクト』です。

単に建物を使える状態に戻すだけでなく、地域の素材や廃材を活かして空き家の価値を限界まで引き出したい。想いを形にするべく動き出した彼らでしたが、初めて挑んだクラウドファンディングは想定通りに進まず、資金不足と焦りという現実の壁に直面します。「このまま計画を続けられるのか」と葛藤する中で、彼らは果たしてこの壁をどう乗り越えるのか。

単なる資金調達から「関わる人を増やす」取り組みへと見せ方を転換し、周囲を巻き込みながら持続可能なまちづくりを体現していく、学生たちの熱き奮闘を綴ります。

地域と学生を繋ぐ空き家再生プロジェクト

糸島空き家プロジェクトは、九州大学の建築学生を中心に活動する団体で、地域に増え続ける空き家を自らの手で改修し、地域と学生のコミュニティ拠点へと再生する取り組みを行っています。

活動のきっかけは、活用されない空き家が増加する一方で、地域内には人が集い、関係を育む場が十分に確保されていないという課題に直面したことでした。同時に、その空き家こそが建築学生にとって「手を動かしながら空間づくりを実践的に学べる貴重な場」になり得るのではないかと考えたからです。

これまでに11件の改修を行い、学生寮や地域の集会の場、民泊可能な施設などを生み出してきました。改修では、牡蠣殻や糸島杉などの地域資源を活かし、廃材もできる限り再利用しています。空き家を通じて人と地域が再びつながる持続可能なまちの姿を目指し、SDGsの掲げる「住み続けられるまちづくりを」に貢献しています。

停滞するクラファンと見つけた答え

空き家を農泊施設へ改修した「燎(かがりび)」のプロジェクトは、試行錯誤が達成感につながった経験として強く印象に残っています。

当初、施主が求める最低限の改修であれば、既存の予算内でも実現は可能でした。しかし私たちは、単に建物を使える状態に戻すのではなく、地域の素材を活かした改修や、減築によって生じた廃材を再利用して家具をつくるなど、空き家の背景まで含めて価値を見出したいと考えたのです。そのためには追加資金が必要となり、団体として初めてクラウドファンディングに挑戦しました。

目標額は50万円に設定したものの、公開から1週間で集まったのはわずか5万円にとどまりました。資金の動きが停滞する中でも、現場では解体や施工が進み、次第に不安が大きくなるにつれて、メンバーの間では目標額の引き下げを検討する声も上がり、計画の継続自体が揺らぐ局面もありました。

そこで私たちは、単なる資金調達ではなく、関わる人を増やす取り組みへと転換を図りました。返礼品として施工参加権や施設利用券を設け、支援者が当事者として関われる仕組みに再設計したのです。また、OBへの個別連絡や施主による広報協力を得ながら、地元新聞での紹介やSNSでの発信を継続しました。

こうした取り組みを重ねる中で支援は徐々に広がり、最終的に83人から78万円の支援をいただき、計画していたこだわりの改修を実現することができたのです。

この経験を通じて、持続可能なまちづくりは理念だけでは実現しないことを学びました。大切なのは、人を巻き込み、ともに考える関係を築くことです。そのためには、自分たちの思いをどう伝えるかを工夫し、相手の声に耳を傾ける姿勢が欠かせません。

また、思うように進まない状況でも目標を見失わず、試行錯誤を重ねる粘り強さも求められます。こうした積み重ねの先にこそ、地域とともにつくる持続可能な取り組みがかたちになるのだと実感しています。

地域の未利用資源を活かす次の一手

私たちの挑戦は、建物を再生して終わりではありません。建築を学ぶ学生ならではの視点と設計力を活かし、地域の未利用資源に新たな価値を見出すことで、地域性を生かした空間の創出を目指します。

現在、これまで十分に活用されてこなかった「大径木(たいけいぼく)」という資源を建材として活かし、糸島にワイナリーを建設する計画を進めています。空き家改修で培ってきた設計・施工の経験を土台とし、地域の素材を無駄にしない循環の仕組みをかたちにしていきます。

こうした学生主体の実践を通じて、持続可能な地域づくりに着実に貢献したいと考えています。

この記事を書いた人
繁藤 大地
九州大学修士 2年
糸島空き家プロジェクトは、九州大学の建築学生を中心に、地域の空き家を改修・再生し、学生と地域をつなぐ拠点づくりに取り組む団体である。設計から施工までを自ら担い、実践的な空間づくりを通して、持続可能なまちづくりを目指している。


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