「失敗じゃなくて実験」元マイクロソフト役員が“うつ病・破産”を経ても挑戦し続けられるワケ
「失敗のほうが多いくらいです」—越川慎司さんはそう言って笑った。
うつ病で会社を辞め、英語が話せないままアメリカに渡り、9か月で破産。転職先は競合に買収されてしまった。それでも、そのたびに「次」を選んできた結果がマイクロソフト日本法人の役員であり、累計140万部超のベストセラー作家というキャリアに。
「キャリアプランなんて、一度も作ったことがない」と断言する越川さんに「やりたいことが見つからない」と悩む若い世代へのヒントを聞いた。
人生でキャリアプランなんて作ったことがない

――まずは、越川さんのキャリアについてお伺いさせてください。大手通信会社から外資系ベンチャー、マイクロソフト本社、そして日本法人の役員、さらには起業と誰もが憧れるような華々しいキャリアだと思います。そのキャリアは当初から計画的に設計されていたのでしょうか?
越川:先に答えから言うとNOですね。まったく思った通りじゃないですし、キャリアプランなんて作ったことがないです。「キラキラしてますね」ってよく言われるんですけど、決してそんなことありません。実際は、新卒で入った通信会社で働きすぎてうつ病になって辞めたり、英語が喋れないのにアメリカに渡って9か月で破産したり、転職先が競合会社に買収されたり。マイクロソフトでも本部長時代に働きすぎて、またうつ病になっているので、成功より失敗のほうが多いくらいです。
――失敗が多いと、つい「次は失敗したくない」と消極的な選択をする人が多いと思います。なぜ、毎回、前回よりもあえて挑戦的な場所へ飛び込まれているのでしょうか。
越川:実は、僕はあまり転職や起業を「挑戦」だと考えたことがないんです。全部「実験」だと思っている。だから失敗か成功かじゃなくて、そこで得た経験が学びになるかどうかで判断しています。特に共通していたのは、次に何が起こるかわからない場所をあえて選んできたということ。マイクロソフトに入社するとき、実は競合他社からも声をかけてもらっていたんですが、そこはやるべきタスクが決まっている印象があって。マイクロソフトはシアトル本社への入社だったので、海外だし、何が起きるかわからない面白さを選びました。
――失敗することへの恐怖心はありませんか。
越川:失敗じゃなくて、実験だと思えば怖くなくなります。今年4月に出版した著書『会社から期待されている人の習慣115』(ダイヤモンド社)は、815社17万人の行動データを集めて分析したものなのですが、その中でも、「期待されている人の69%は『実験』という言葉を使っている」というデータが出ています。僕自身の経歴を考えても、うつ病になったからこそ週休3日の会社を作れましたし、買収されたからこそ最終的にマイクロソフトの役員になれた。だから、シンプルにいえば、僕は実験を続けているだけなんです。
まずアウトプットしてみて、足りない部分をインプットする

――日本の大企業から、英語が話せないままアメリカのベンチャーに移られたときは、相当大変だったのでは。
越川:無謀だったかもしれません(笑)。コテコテの日本企業から、英語が喋れないままアメリカのベンチャー企業に移っちゃったので、最初は本当に苦労しました。TOEICはそこそこ点数が取れていたのに、全然英語が通用しなくて。
でもね、それがいい結果を生むこともあるんです。以前、アメリカにいる際、ペンを探していた役員に貸そうとして、間違えて「I am a pen」って言っちゃったんですよ。それで1年間あだ名が「ペン」でした。でも、彼とは20年以上経った今でも付き合いがあります。逆に、あのとき英語がペラペラだったら仲良くなれなかった人だと思うんですよね。
つまり、何かができるようになってから動くとか、準備ができたらアウトプットするとか、そういうんじゃなくて、まずアウトプットしてみて足りない部分をインプットすることのほうが重要だと思います。
「やりたいことがない」という不安は素晴らしい
――最近の若い世代の中には、キャリアを磨きたいと思いつつ、「自分がやりたいことが見つからない」と悩む人も多いです。何から始めればいいでしょうか。
越川:やりたいことがない状態を絶対に否定しちゃダメです。僕自身、外資系で働きたいとか、マイクロソフトの役員になりたいなんて、思ったことなかったですから。
キャリアの8割は偶然の出会いから生まれます。「これしかやりたくない」と決めてしまうと、他の情報が入ってこなくなる。ちなみに、会社員時代、僕が一番苦手だったのは文章を書くことでした。それが今は作家をやっているわけです。アンテナを広げておいて、「意外とよかった」「実は向いていた」を探すほうがいい。
――本書に掲載されている調査でも、期待されているリーダーの75%は決断と行動の早さを重視していると紹介されています。
越川:彼らは100%の確信を待たずに約70%の精度で動き出し、残りは走りながら埋めています。やりたいことは、考えて見つかるものじゃなくて、動いた結果として輪郭が出てくるものなんです。
もう一つ大事なのが内省です。2週間に1回以上、立ち止まって振り返る時間を持つ人は、一般社員ではわずか7%ですが、期待されている人では67%もいます。しかもその内の75%が、オフィスのトイレの個室で内省していました。特別な環境はいらないんです。
「やりたいことがなくて不安」という状態はむしろ素晴らしいんです。不安だから準備するし、不安だから本を読む。「もう大手に入ったから一生大丈夫」と思っている人より100倍いいと思います。
20代のうちに「休み方」を覚えるべき
――キャリア形成において、20代の自分に伝えたいことはありますか。
越川:働き方改革より先に、休み方改革をやるべきだったなと思っています。20代の僕は3〜4時間睡眠で、一番元気で一番評価されていた時期にうつ病になっています。当時は「寝ないほうが頑張っている証拠」くらいに思っていましたが、今振り返れば完全に逆でした。
7時間睡眠が取れれば精神疾患になる確率が低くなると精神科医に教えてもらいました。疲れたら休むんじゃなくて、疲れる前に休む。20代、30代前半のうちに「休み方の実験」をしておくことをお勧めします。
Future Leaders Hub 編集部