「1分だけいいですか」を本当に1分で終える人は1%未満…会社から評価される人とされない人を分ける“意外な習慣”
エレベーターのボタンを押すだけで、上司から褒められる確率が61%上がる。
突飛に聞こえるかもしれないが、これは815社・17万人の行動データから導き出された事実だ。『会社から期待されている人の習慣115』(ダイヤモンド社)の著者・越川慎司さんは、「頑張っているのに評価されない」と感じる人の多くは、努力の量ではなく向きがズレていると語る。
「期待される人」と「そうでない人」を分けるのは、才能でも学歴でもない。今日から誰でも始められる小さな習慣の積み重ねだ。
評価は「業務遂行能力」ではなく、「チーム力」で決まる

――現在の若い世代は海外でキャリアを積みたいと考える人も少なくありません。ご自身がマイクロソフトで事業責任者として勤務されていた時代、グローバル企業で通用する人とそうでない人の間にどんな差を感じましたか。
越川:ずばり、巻き込み力です。強みと弱みを掛け合わせる力ともいえます。実際、組織に評価されて昇進を果たした人の88%が「個人の技術力よりも、チーム全体を動かす力が評価された」と答えていますし、人事担当者の61%も「AI時代だからこそ人間関係構築能力を重視している」と回答しています。仕事をうまく回せる人は、他部署に用もないのに顔を出すような人間関係構築力を持っている。
今回の本の中にもありますが、評価が上がる人は業務遂行能力ではなく、チーム力に貢献する人たちです。AIのことをすでに知っている人がいれば、その人に聞いたほうが早い。資料作りが得意な人がいれば、それをやってもらえばいい。今は「1+1」を3にも5にもしなければいけない時代で、強みと弱みをテーブルの上に並べて組み合わせられる人が評価されています。
意外だった発見は「エレベーターのボタン係」の効果
――815社17万人のデータを分析する中で、一番意外だった発見は何でしたか。
越川:エレベーターで積極的に「ボタン係」をする人ですね。28社1万2897人を対象にした行動観察調査で、期待されている人の89%が、他人の目的階も押してあげる「ボタン係」をしていました。一般社員はわずか31%。58%もの差は、僕らにとっても予想外でした。
しかも、彼らはただボタンを押すだけじゃなくて、「何階ですか?」と声をかけて、降りる際には「お疲れ様でした」と一言添える。たった20秒で「気が利く人」という印象を相手の記憶に刻んでいるんです。実際、ボタン係を実践したグループの61%が「上司から褒められた」、32%が「エレベーター内の会話から業務連携が増えた」と答えています。
――たしかにそれなら今日から実践しやすそうですね。
越川:本を読んだ読者の方々から、「自分の会社でもボタン係を奪い合っている」という声を聞くようになりました。スマホを見ながら黙って歩いている人と、最後に「お疲れ様です」と一言添えられる人がいて、両者が同じ成果を出しているなら、僕なら後者を昇格させます。
このボタン係をクライアント企業に真似してもらおうとしたときは当初は大反対されたんですが、実験のつもりで試してもらったら「他部署の本部長からありがとうと言われた」という声が続出しました。2週間続けるだけで、周囲の印象がガラッと変わるというデータもあります。
恥ずかしいし、かっこ悪いと感じるかもしれませんが、それが自分の信頼を積むことになる。私はこうした細かな信頼の積み重ねを「信頼ツムツム」と呼んでいますが、のちの自分の選択肢を増やすことにつながるならコスパはとても高い行動だと思います。
若い世代が意識すべき「信頼される人の3つの習慣」

――若い世代が信頼を得るため、本書の中で紹介されている習慣のなかで、まず取り組むべきものを3つ挙げるとしたらなんですか。
越川:1つ目は上司や同僚などに「1分だけいいですか」と言って時間をもらうとき、本当に1分で終えること。多くの人は「1分」と言いつつ、1分で話が終わりません。だから、言ったことをやったかどうかという言動一致が「信頼ツムツム」になります。実際、期待されている人は61%がこれを守れますが、一般社員できちんと1分で終えられる人は1%未満というデータもあるので、それだけで一気に差がつきます。
2つ目は締め切りより早く出すこと。差し戻しを考えると、期限ギリギリでは間に合いません。小さな約束を守れない人には大きな約束、つまり抜擢は降ってきませんから。実際、期待されている人の期限遵守率は98%にのぼりますが、一般社員は71%にとどまるというデータもあります。
3つ目はメールのレスポンス。24時間以内に「本日はありがとうございました。取り急ぎ御礼まで」でもいいので一次返信を出す。解決自体は3日以内で構いませんが、返答が来ないと相手は「わかっているのかな」と不安になります。定型文でもいいので先に出しておくことが、相手の不安を減らします。24時間以内に一次返信できているのは、期待されている人で62%、一般社員はわずか18%というデータもあります。この3つは特別なスキルではなく、今日から誰でも始められる。実験だと思ってやってみてください。
「同調」ではなく、「観察」を心がける
――旧来の日本型企業では、上司の意向やその場の雰囲気を汲み取る「空気を読む」スキルが重要視されていました。「空気を読む」スキルを評価する傾向については、どう感じますか。
越川:強くは肯定できないですね。「頑張っているのに評価されない」と感じている若手はすごく多いと思います。ですが、「身近にいる昇進が早い人の特徴」について尋ねた回答結果では、「上司に気に入られている」は評価される側の調査では2位に入るのに、実際に登用を決める管理職側の調査ではトップ10圏外でした。
必要なのは何でも同調することではなく、観察です。期待されている人の82%は他部署の悩みを3つ以上把握し、71%は「上司の上司」の関心事までチェックしています。目の前の資料作りに集中するだけでなく、相手が何を欲しがっているかを観察して、仮説を立てて実験してみる。
たとえば、ホットコーヒーを飲みたい人にアイスコーヒーを渡したら怒られますよね。相手が何を求めているかを確認しながら動ける人は、ホットコーヒーを渡せます。同調は思考停止ですが、観察は立派なスキルです。目の前の仕事をスラックで追いかけるだけ、資料を作るだけで終わらせず、顔を上げてみる。今日からで構わないので、まずは身近な人を一人、観察することから始めてみてください。
Future Leaders Hub 編集部