「血液で患者の未来を変える」白血病患者向け検査製品開発を進める起業家の出発点
白血病の患者が、腰の骨に太い針を刺し骨髄血を抜き取る検査を繰り返し受けている——そんな過酷な現実を、採血だけで塗り替えようとしている企業があります。
株式会社Liquid Mineの代表取締役・岸本倫和氏は、大切な友人をがんで失った経験を胸に医療業界へと転身。今、白血病患者向けの革新的な検査製品「MyRD」の開発に全力を注いでいます。
腰の骨に針を刺す検査からの脱却
MyRDは、3つの技術を結集した製品です。
まず、白血病の原因となる遺伝子変異を特定するための「全ゲノム解析」。次に患者ごとに異なる遺伝子変異に合わせて検査薬をオーダーメイドで作成する技術。そして、これまで骨髄穿刺によって行われていたモニタリング検査を血液だけで実施できる技術。
「50円玉の穴くらいの太さの針を、いつも腰の骨に刺して骨髄血を抜き取る検査を患者さまは受け続けています。そういった環境を変えていきたい」
岸本氏はそう静かに、しかし力強く語りました。
現在の目標は、国からの薬事承認を取得し、患者が1割から3割負担で利用できる医療として届けること。承認前であるため売上はまだないが、2023年に調達した1億円を開発費と人件費に充て、着実に前進を続けています。

友人の死が「キャリアの羅針盤」に
岸本氏の出発点は旅行業界でした。
新卒で入社したHISでは、初めて自分の接客でお客さんから予約をいただいた瞬間が今でも鮮明に記憶に残っているという。しかし、彼の心の奥底にはもう一つの思いが宿っていました。
「大切な友人をがんで亡くした経験があって、将来的にはがんや難病で苦しむ人を助けたい気持ちがずっとありました。まず旅行会社で営業経験を積んで、その後に医療業界へ進もうと考えていたんです」
学生時代からいつかは経営者になりたいという志を抱いていたという岸本氏。複数回の転職を経て、現在の場所にたどり着いたのです。
「自分の未来を選択するのは、学生時代だけではありません。その場その場で一生懸命やっていただければ、未来は開けると思います」
「仕事人間」が培った人と繋がる力

20代で最も熱中していたことを尋ねると、岸本氏は少し考えてからこう答えました。
「仕事が一番好きでした。ただ、交流会や会食にも積極的に顔を出していましたね。隅っこにいる方に自分から声をかけて、名前と顔を覚えていただくことを心がけていました」
その姿勢は、現在の採用活動にも表れています。人材紹介会社を介さず、リファラル採用を中心に仲間を集めてきました。求めるのはスキルよりも「熱」でした。
「誰かの命を助けたい、医療に貢献したいという熱意を持った方に来ていただきたい。それに尽きます」
また、医療業界特有の厳格な広告規制の中で、岸本氏がPR戦略として選んできたのがビジネスコンテストへの挑戦です。
「製品PRに制約が多い業界なので、コンテストで受賞することが企業価値やPRに繋がると考えてきました。医療機関の先生方や製薬メーカーとの交渉もスムーズになってきています」
積み重ねてきた受賞実績が、医療機関や投資家からの信頼へとつながっているといいます。
「直近で資金調達を控えていて、今後は組織も拡大していく予定です。メディアに特集されて自分の思いを発信することで、共感してくれる方が応募してくれれば嬉しいですね」
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Future Leaders Hub 編集部