「『定性的』というのは基準を作ってないだけ。経営の怠慢」ドライバーの与信問題に挑む若き経営者が気づいた“数字で語れない会社の弱点”
自身も学生起業の経験を持ち、数多くの大企業で経営参謀を務めてきた株式会社サクラサク代表取締役の山崎伸治氏が、次世代を担うZ世代経営者の悩みと向き合い、ともに将来を切り開いていく「SpecialMentor」。今回の相談者は株式会社ユアルート代表取締役の玉谷風輝氏です。
ドライバーが正当に報われる業界を目指し、運送会社のロールアップを進める中で直面する「与信」や「資金調達」の課題。さらに、組織拡大や将来の事業ビジョンにおいて、どのような戦略を描くべきか。山崎氏との対話を通じて、小手先のテクニックに頼らない本質的な経営の考え方や、物流業界の構造変革に挑むための勝ち筋を探っていきます。

「1兆円企業を目指す」若き経営者の人生のゴール
山崎:どうも初めまして、山崎でございます。
玉谷:ユアルート玉谷と申します。よろしくお願いします。
山崎:よろしくお願いします。では、簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか。
玉谷:改めまして株式会社ユアルート玉谷と申します。弊社はですね、物流業界で事業を運営しておりまして、主に運送会社を連続的にM&Aしていくような形でやらせていただいてます。
連続的にM&Aさせていただいて、この会社の経営を効率化しながら拡大していくということをやっております。よろしくお願いします。
山崎:ありがとうございます。最初にスタートアップの人たちにお聞きをするのが、まず人生のゴールは何かっていうこと。そして、ビジネスのゴールはどこにあるのか。最後に、ご自身の得意分野、魅力は何だと考えてらっしゃるか。このあたりを教えていただけますか。
玉谷:かしこまりました。まず、人生のゴールみたいなところなんですけど、やはり「人生1回」ということをすごく強く感じていまして、生まれ変わっても自分の人生を生きたいなと思えるようにやっていきたいというのが、ある種のゴールであり、目的になってます。
その上でビジネスのゴールは、やはり僕も経営者としてキャリアをスタートしたので、1兆円の企業を作るというところを、今のゴールとしてやっております。
私の強みは、一言で言うとバランス感覚かなと思っていて。会社を伸ばすには結構バランス感覚が必要だと思ってるんですけど、年上の方だったり年下の方だったり、年齢問わずいろんな方々に対しての対応力とか、ビジネスにおいてもファイナンスから事業戦略まで、いろんな力が必要だと思うんですけど、それを網羅的に、ある程度はできるのかなと思っております。
山崎:もともと野球をやってらっしゃったから、体育会系の強さがあるのかもしれないですね。目標を決めて努力する、理不尽なことにも耐え、社会性を覚えていく。ビジネスをやるとき、体育会系の方は強いなとすごく思いますよ。
玉谷:そうですね。あとはやはり、やり切る力みたいなところも身についたなと思ってて。
M&Aを加速させるためのファイナンス戦略の悩み
山崎:では早速ですが、僕に聞きたいこと、なんでも遠慮なく聞いてください。
玉谷:かしこまりました。物流会社のロールアップ(買収による事業拡大)を進める中で、M&Aする会社に対して、なかなか与信がつかない方が多いんです。
これは経営状態がそんなによくなかったりとか。そういったときのファイナンス手法として、僕らも今IPOを目指してるので、エクイティ、デット、社債とか、いろんな手段がある中で、どういうファイナンス戦略を組み合わせていったらいいか、教えていただきたいなと。
山崎:なるほど。そもそも、物流業界でM&Aを繰り返して大きくならなければいけない理由は何でしょう。ファイナンスの話はテクニカルにできますけど、その前段階として、物流業界をこう変えたいから、数を増やしたほうがいいんだという哲学があったほうがいい気がします。
今、なぜM&Aを進めていきたいと思っていらっしゃるんですか。
玉谷:まず、僕はドライバーさんがもっと報われるべきだと思っていて。今の物流事業者さんの経営層の引き出しの問題、経営能力の問題で、結局ドライバーさんに給料が払えなくて倒産したり、未払いを起こしたりすることがある。ある種ドライバーさんが損してる業界なんです。そこをまず是正したい。
これを僕らが第三者として支援に入るのは難しいと分かったので、もうユアルート社として、自社のグループとして、最適な経営をできる座組を物流界に落とし込んでいくのが、この業界のためにもなるなと思ってます。
その上でM&Aをなぜやるのかというと、一つはエリア獲得の手段と、もう一つはドライバー獲得の手段ですね。この目的でやっております。
山崎:素晴らしいですね。ただ、物流会社がドライバーにお金を払えない根本的な原因は、荷主の価格圧力にありますよね。「お前のところができなければ他に頼む」と言われ、ドライバーを泣かせてきた歴史がある。ここの問題を変えない限り、呪縛からは逃れられない気がしますが、どうやって変えられるとお考えですか。
玉谷:正しくやってる会社さんは、ちゃんとドライバーさんに報いているんです。正しくやってるというのは、ちゃんと経営として利益を設計するとか、ちゃんと荷主さんから適正価格でお仕事をいただくとか。この努力をしてる会社は、ドライバーさんに対してちゃんと報いていると思ってます。
これができてない会社が大多数なので、そこを僕らが是正していくと。
山崎:なぜ、それができない会社が多いんだと思いますか。
玉谷:二つあって。一つはそもそもちゃんと営業したことがない。物流業界って、営業しなくても案件をもらえちゃう業界なので。いいねで受けちゃうんです。
あとは、経営者が学習してない、勉強してないところだと思ってます。ドライバーさん上がりの社長さんが多いので、現場力はめちゃめちゃあるんですけど、経営というところはやはりちょっと疎い方も多いのかなと。

本質的な事業モデルこそが資金調達の鍵
山崎:なるほど。だとすると、お金の集め方は小手先のことではないのかなという気がします。
そもそも、今の物流業界のコスト構造をこう変えることによって、うちならドライバーさんにこれぐらいのお金を払いながら、この価格が出せる。これがまず作れるというのが一つ。
次に、効率的に荷主さんを見つけてくる能力を格段に上げる。
この二つが価格的に立証できる状態で担保できた瞬間に、お金なんていくらでもつくと思いますよ。この会社に任せれば、ほかの会社が圧倒的に良くなるって分かるなら、銀行も馬鹿じゃないし。
だから、買収対象の信用を担保に資金を考えるんじゃなくて、むしろ「うちがやったら、ほとんどどこでも利益が出せます」と言えるかどうかが一つ。
あとはドミナント戦略をどう取るか。リレー形式で運ぶとか、地方に特化するとか、効率的なやり方はある。どこから取っていくと一番効率的なのか、センターピンはどこかという議論です。
「うちはこういうビジネスモデルを組めます」「こういう形で営業先を見つけられます」「だから世の中の物流会社をうちが買ったら化けます」「しかも、こういうドミナント戦略でここから取っていきます」って言われたら、僕が投資家やったら鬼のように金つけますよ。
玉谷:おっしゃるとおりですね。
山崎:だから、デットとエクイティでどうこうということよりも、もっと真正面にそこをまず作ってみたほうがいい気がします。そこを圧倒的に作れば、銀行もデットでお金をつけます。
今の時代、日本のデットは鬼のように安いです。スタートアップが1%そこらで借りられるなんて、アホみたいなバーゲンセール。死ぬほどバンクからデットを取れよと思ってます。とにかく取れるだけ取るべきです。
玉谷:デットの金利の許容率って、僕らの場合どのくらいで考えればいいでしょうか。
山崎:M&Aのためのデットって考える必要はないです。買収したあと事業化されるわけだから、事業で2%も利益を出せないのかって議論です。出せるに決まってる。自分たちの適正利益を10%と考えるなら、2%で借りられてもラッキーですよね。
僕らは経営の「型」があるから、こうやって変えるんだ、半年でできるんだ、と。営業先もこのやり方なら取れるんだ、と。それを磨いていく。
銀行からすると、勝ちパターンを持ってるところは安心感があるわけです。ストーリーを持って、優先順位が卓越してたら、絶対勝つと思う。僕が支店長や頭取やったら「行け行け、あそこがやるとこ全部ついてけ」って言いますよ。
だから経営者は小手先をやるな、と。本質を考えれば、ドライバーさんが幸せな状態で、荷主さんが安心して荷物が届く環境を作ることが目的ですよね。そこにゴールがあるなら、手前のことを細かく気にしなくていい。本質を改善すれば、そこは自然と改善されるものだと思います。
玉谷:ありがとうございます。

10人で上場を目指す新時代の経営
玉谷:もう一つ、今後組織が拡大するにつれて、今社員30人ほどで、ドライバーさんが150人ぐらいなんですが、1000人とかになってくる前にやっておくべきことがあれば教えていただきたいです。
山崎:人を取ろうと思うな、ということです。昔の経営者は「雇用こそ命」と言われましたけど、僕はこれからの時代、雇用はリスクにしかならないと思ってます。
ザッカーバーグも上場したときは14人くらいでした。10人で上場できるモデルって何だろうって考えたら面白いと思う。
もちろん、現業があるから極端な話はできないと承知の上ですが、少ない人数で上場するにはどうしようかって頭を絞るほうがいい。
ホワイトカラーの仕事はほぼ100%AIに取られます。でも最終的なジャッジメントは人間がやるから、スーパー顧問みたいな人は取ったほうがいい。でも中途半端なホワイトカラーはほぼいらない。
一方、ドライバーの方みたいに現業をやってらっしゃる方は、給料が跳ね上がると思います。代替手段がないから。自動運転が進む可能性はありますが、それでも「人で届けてほしい」というニーズはあり続ける。
だから、人で届けてほしい分野は俺たちが全部押さえる、と。オートメーション化できるところは最先端の技術を研究しておいて、導入されたらすぐやる、と。そうすれば、優秀なドライバーは人と人との仕事に回しながら、余剰人員を抱えずに、無人運転に全投資できる。メリハリをつけたほうがいいと思います。
玉谷:なるほど。だいぶクリアになりました。僕らの運送は軽貨物で、ドライバーは委託なので、運営する社員はできる限り少なくという思想です。
山崎:10人を目指してみる。かっこよくないですか。野球やってたから9人でもいい。「9人で上場しました」とか面白くない?
玉谷:面白いです。
山崎:物語が大事なんです。そういう会社のほうが人は興味を持つ。「物流業界で10人で上場させたらしい、すごくない?」って。
「うちは経営を最大限効率化させることからスタートしてるんだ」と。「AIも自動運転も組み込んで、一番コスト効率のいいやり方でやってます。だからドライバーさんにはちゃんとお金払ってるけど、この値段なんです」って言ったら、その値段さえ美しく見えてくる。
物語の作り方こそが企業だと思うんです。
自分たちをどう定義し、物語を語るか
山崎:上場させるということは、時価総額を気にすることが仕事になります。日本の経営者は足元の利益をどう伸ばすかに8割方行ってるけど、違う。時価総額は「足元の収益 × PR」なんです。PR、つまり物語の組み込み方が下手くそなんです。投資家に夢を見せられない。
物流業界は「PRはこれくらい」って言われがち。でも「アホか。うちを普通の物流業者と思うな。最先端のAIトランスフォーメーション会社だ」みたいに言わないと。
自分たちをどの文脈で語るのか、めちゃくちゃ意識するべきです。うちは何々会社ですっていうキラーワードを作るんです。
玉谷:そのキラーワードのご相談をしてもよろしいですか。僕らは最終的にこのノンデスク領域、ブルーカラー領域のあらゆる業界を変革していきたい思いがあって、まず物流を選んでるんですね。
そうなったときに、事業の名前だったりとか、投資家さんにどう説明したほうがいいのか。
山崎:僕がおすすめするのは、物流に特化しろ、ということです。まずは物流で、ブルーカラーの方たちを幸せにできた、という物語を完結させる。そのほうが圧倒的に物流の仕事が取れるし、本気で考えてると伝わるから。
「俺たちが今の物流業界の体制を変えるんだ」って命がけで挑まないと変わらないと、みんな思ってます。
それをやって圧倒的に物流業界を変えたら、「あの物流業界の雄が、今度は同じブルーカラーの人たちを幸せにするためにこういう事業をやります」と。そのために名前を変えます、とか、新会社を作ります、でいい。物語はそっちのほうが熱い。
ビジネスは人の心を動かすかどうか。熱さがないものはダメです。まずは何がなんでも物流業界の人たちを幸せにするんだ、と。そこでいっぺん物語を完結させましょう。

定性データを定量化する経営哲学
玉谷:はい。最終的には、ドライバーさんかける金融領域かなと思っていて。今の日本のドライバーさんの与信は本当に低いんです。住宅ローンも組めないし、クレジットカードも作れない。僕ら独自の与信を作りたいなと思ってるんですが、これについて壁打ちさせてください。
山崎:すごくシンプルに言うと、会社が貸し付ければいい。情がある会社になればいいんです。
ただ、ドライバーは選別したほうがいい。全ドライバーにいい顔をして、不良ドライバーまで抱えるのは投資家としてノーです。
うちが抱えるドライバーはこういう条件が必要です、と明示する。コミットができて、仕事に熱心で、変な欠勤をしないとか。独自の基準を作る。
その基準を満たした人には、会社からの貸付として、ホワイトカラーの人たちが借りるのと同じレベルの金利で貸し付けますよ、という制度はあり得る。
そのバックファイナンスは金融機関に相談する。「うち独自のスクリーニングで与信を測ってます」と。銀行からすれば、日々出勤状況まで見てる会社が推薦するなら、信用しやすい。提携ローンという形で直接出してくれる可能性もあります。
玉谷:まさに思い描いていたロードマップです。ただ、勤務態度のような定性的なデータをどう収集していくか、社内で検討してまして。
山崎:世の中に定量化できないものなんて一つもない。そもそもの発想が間違ってる。「定性的」というのは、基準を作ってないだけ。経営の怠慢です。
玉谷:なるほど。
山崎:これから伸びていく経営者の方々は「定量化できないものはない」という哲学から入ってほしい。欠勤回数も、交通違反の有無も、報告態度も、全部定量化できる。脳みそを使って考え抜くんです。
玉谷:物流業界って「品質がいい」とかざっくり言われがちですけど、確かにそこをもう一段上の視座でやらないとなって今思いました。
山崎:おっしゃるとおり。自分たちのサービスがいいって何なのか、定量的に証明できる。「事故率がこうで、欠勤率もこうで、駐車違反を起こさない率がこれくらいです」って言われたら、「めっちゃちゃんとしてる」ってなるじゃないですか。
原理原則に立ち返り、本質を追求する
山崎:そろそろお時間ですね。今日のポイントを一言でまとめると、「原理原則に忠実であれ」ということです。
小手先のことをやらず、本質的な「誰に何をいくらで売るか」「私たちが提供したい価値は何か」というところに立ち戻って考える。細かなテクニックよりも、それに一番合致するモデルを徹底的に組み上げることが、目標を達成する一番の早道になる。急がば回れ、ですね。
本日はありがとうございました。
玉谷:ありがとうございました。

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Future Leaders Hub 編集部 