「マーケットを拡大させるためにまず必要なこと」23歳起業家に経営参謀が伝えた“事業拡大の本質”
自身も学生起業の経験を持ち、数多くの大企業で経営参謀を務めてきた株式会社サクラサク代表取締役・山崎伸治氏が、次世代を担うZ世代経営者の悩みに答え、ともに将来を切り開いていく「Special Mentor」。
今回の相談者は、TikTokショップを活用したインフルエンサーマーケティング事業を手がける株式会社Alunara共同代表・桒原苺果氏。創業から1年も経たないなかで直面した「インターン採用の壁」「クライアントとの意見の折り合い」「市場の拡大」という3つの悩みに、山崎氏が鋭く、そして温かく切り込みます。

「ビジネスの主語は誰か」から考える
山崎:桑原さんの事業と、今日相談したいことを教えてください。
桒原:株式会社Alunara で共同代表をしております。TikTokショップという分野で、メーカー様に対してインフルエンサーを活用した商品販売を成果報酬もしくは固定費で行うこと、そしてそのインフルエンサーの方々のアカウントを通じて一般消費者の方々に商品を販売すること、この二つを行っています。今日は、まずインターン生をどう集めていくかというところで悩んでいます。
山崎:インターン生を集めるにあたって、どこで行き詰まりを感じていますか。
桒原:どういう方法で集めるのが正解なのかが、まったく見えなくて。
山崎:逆にね、自分が学生だったとして、そういう会社から募集があったときに行ってみたいと思うのはどんな会社ですか。
桒原:若い雰囲気であること、自分がしたいことに近いこと、会社として楽しそうであること……でしょうか。
山崎:そうですよね。居心地の良さと、未来の自分につながるかどうか。そこが強い意志が働く要素だと思います。
実はツールやテクニックはいくらでもある。でも一番最初に大事なのは、お客さん目線で何が魅力的かを考えること。そしてそれをきちんと言語化することです。「うちに入ってないあなた」と「入ったあなた」ではこう変わる、ということを言えるかどうかがめちゃくちゃ大事です。
例えば、新しいインフルエンサーの思考に触れられる、企業側の考え方もわかる、前向きにチャレンジする仲間の中に身を置けるということを一つひとつ明確に言葉にしてあげること。それができると自然と集まってくるはずです。
ビジネスというのは、事業が始まった瞬間に主語はお客さんになるんです。インターン生を集めたいなら、候補になる大学生にとって何がいいのかを徹底的に追求する。それだけです。
プロとして「こうやったら一番売れます」と自信を持つ

山崎:クライアントであるメーカー様との間で、意見の折り合いに悩んでいるとのことですが、具体的にはどういった場面ですか。
桒原:メーカー様のブランディングとしてこう売っていきたいという意向と、こうしたほうが売れるという私たちの判断がかけ離れてしまうことがあって。どうしてもメーカー様の意見に寄せてしまっていて、意見を伝えることがいいのかどうか、迷っていました。
山崎:まずクライアントさんに聞かなければいけないのは、この商品を販売する目的が「販売量を伸ばしたいのか」それとも「ブランド価値を高めたいのか」ということです。この二つは内包されているものですが、どちらに重心を置くかをきちんと定義しておかないと、話がずれてしまう。
販売量を取りたいならプロとして「こうやったら一番売れます」と自信を持って説得する。ブランディングを重視するなら、消費者にはこういう見せ方のほうが伝わる、という対案をぶつけてみる。
最終的にはお客さんであるクライアントが決めること。でも、プロとして「これは違う」と思ったことは必ず伝える。伝えた上でクライアントが決断したことを実行して、結果を一緒に分析する。「あかんかったでしょ、じゃあ次はこうしましょう」とまた提案する。このコミュニケーションの繰り返しです。
桒原:そのあとに修正という段階まで見えていなかったので、結果が出なかったときにどうしようとなってしまっていました。
山崎:構わないんです。ビジネスはやってみてあかんことだらけですから。大事なのは、自信を持って対峙することです。あなたはTikTokショップというマーケットに対して、このお客さんに対してものを売るプロ。そのリスペクトがないクライアントとは仕事しなくていいとさえ思っています。意見を伝えることは悪じゃない。それがプロの仕事です。
1週間かけて7割の仕事をするなら、2日目で6割でやれ
桒原:プロとして仮説を立てても、完璧を目指すあまり動けなくなることはありませんか。
山崎:あります、よくある。私が元々いたベイン&カンパニーという戦略コンサルにはクイック&ダーティーという考え方があって、1週間かけて7割の仕事をするなら、2日目で6割でやれということです。整っていなくてもクイックにやる。
完璧なものを目指してぐずぐずしている暇があったら、お客さんに聞けということです。自分がこうだと思って仮説を立てたらまずやってみる。お客さんがどう反応したかを見て、また次を考える。この繰り返しです。
百発百中で当てるのが、プロではありません。他の人より正しい解を導く確率が高いのがプロです。
だからビジネスって面白いんです。外れたときになぜ外れたのかを分解したくなる。また試したくなる。クライアントさんが来てくれたら、また別の仮説を試せる。そのうちどんどん楽しくなってくるはずです。
桒原:言語化の大切さをおっしゃっていましたが、うまく言語化できないとのアドバイスをいただけますか。
山崎:言語化はかっこよく言おう、うまいこと言おうとするから難しくなるんです。
まず思っていることを単語でどんどん書き出す。後でつなげればいい。最初から頭の中でつなげようとするから出てこない。英語を話そうとするとき、文法から考えるから言葉が出てこないのと同じです。「コーヒー」ってひとこと言えば通じるのに、文章にしようとするから詰まる。
書き出したキーワードが、自分を表現する言葉になります。それをどうつなげたら一番言いたいことになるかを考えれば、自然と言語化できるようになります。
言語化の癖をつけていくと、ビジネスもクリアに見えてくるし、社会もクリアに見えてくる。今日会った人、今日行った場所、今感じたこと、そういったことを言葉にしていく訓練を積んでいってほしいです。
新しいものを「かっこいい」とする文化をつくる

山崎:TikTokショップ自体の市場をどう広げていくかについても相談があるそうですね。
桒原:市場を大きくさせることが会社を大きくすることにつながると思っていて。日本ではまだ浸透していない部分もあるし、不安を抱かれているお客さんも多い。一企業としてできることが何かを考えています。今、30代、40代の主婦の方を中心に、美容商材、食品、日用品が売れている状況です。
山崎:マーケットを拡大させるためにまず必要なのは啓蒙です。30代、40代の方が美容や日常品に関心を持っているという掛け算まではすでにマーケットがある。問題は、新しいものを買うことへの壁をどう崩すかです。
新規顧客を獲得するコストは既存顧客に再購入してもらうコストの5倍かかると言われています。1対5の法則です。だから「新しいものを楽しむ文化」を作ることが先決です。
商品やサービスをただ紹介するのではなく、新しい商品を楽しむコミュニティの作り方をする。新しいものに最初にチャレンジする人がかっこいい、という文化にしていく。インフルエンサーを「フォロワー数の多い人」として選ぶのではなく、「新しいものに興味を持ってチャレンジする開拓者」として定義付ける。そうするとファンが「自分もそうなりたい」と思ってついてくるはずです。
桒原:怖がる方がまだ多くて、インフルエンサーさんが心ない言葉をかけられることもあります。そういう雰囲気があるので、文化を変えることが最初にやらないといけないことだと感じました。
山崎:何がかっこいいかは、自分たちが定義するものです。ここは主語が自分でいい。お客さんは「何がクールなのか」を探しているんです。事業者がそれを言い切ること。私たちはこれがかっこいいと思います、と。経営者自らが語ってもいい。会社の姿勢として発信してもいい。そこに引っ張り込んでいくことが文化を作るということです。
桒原:わかりました、ありがとうございます。
山崎:今日話してきたことに共通しているのは、まだビジネスに対して遠慮があるということです。自信を持っていい。ただ、その自信はビジネスの核とは何か、自分の強みは何か、このビジネスの肝は何かをきちんと言語化することで生まれてきます。
言語化できた瞬間に、自分がやっていることの意味が腹落ちして、プロとして堂々と立てるようになる。自信が出れば結果も出る。結果が出ればまた自信が生まれる。その好循環が積み重なっていくなかで、ある瞬間にポンと視座が上がる。
人間の成長曲線は右肩上がりではありません。もがき苦しみながら横ばいが続いて、ある瞬間にポンと上がる。そのイメージを持っておくだけで、つらいときにも耐えられるはずです。
桒原:ありがとうございます。

本記事でご紹介した対談の様子を、動画でもご覧いただけます。
記事だけでは伝えきれない「現場の熱量」を感じてみてください!
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Future Leaders Hub 編集部 