知識だけでは社会は変わらない…「世代の近さ」を強みに変えた学生の“出前授業”
「ESG&well-being」連載第10回は、『SDGs AWARD for University 2026』決勝進出団体による寄稿レポートをお届けします。
今回登場するのは、中高生・大学生・社会人の連携の架け橋となり、大学と地域を繋ぐ多様なプロジェクトを展開する、南山大学の『SDGs普及啓発団体CLOVER』です。
知識としてSDGsを学ぶだけでは、社会は変わらない。想いを形にするべく商品開発やワークショップに挑む彼女たち。しかし、実施そのものが目的化してしまうジレンマや、商品が想定通りに社会へ届かないという高い壁に直面します。「本当にこのままで課題解決に繋がるのか」と葛藤する中で、彼女たちは果たしてこの壁をどう乗り越えるのか。
悩み抜いた末に団体の原点に立ち返り、身近な素材と「出前授業」という自分たちならではの強みを掛け合わせて見出した、新たな社会課題解決の形。学生ならではの柔軟な発想と行動力で、地域と共に持続可能な未来を創り上げる学生たちの熱き奮闘を綴ります。
「日常の課題」から始まる持続可能な社会づくり

南山大学SDGs普及啓発団体CLOVERです。私たちが活動を始めるきっかけとなったのは、「SDGsは決して他人事ではなく、日常の中にこそ課題がある」という気づきでした。知識として学ぶだけでは社会は変わらない。小さくても自分たちが行動を起こすことで、未来をよりよくできるのではないか――その想いが私たちの原動力となりました。
CLOVERは、SDGsの17の目標を包括した商品開発・地域連携・探究活動の三つの観点を軸に、多様なアプローチで持続可能な社会づくりに貢献しています。
2021年に3人の学生により設立された当団体は、現在はメンバー141人、Instagramのフォロワー4200人を超える団体へと成長しました。規模拡大に伴い運営の難しさも生じましたが、メンバーの方向性を共有する「CLOVERパス」を導入し、“持続可能な社会の実現”という共通の目標に向かって、幅広い分野で活動できる団体になりました。
失敗から立ち返る「誰に、何を伝えたいか」
海洋プラスチックを活用したコースター制作プロジェクト「ぷらばら」では、多くの試行錯誤を重ねてきました。当初は若い世代にSDGsを身近に感じてもらうため、ネイルチップやアクセサリーの制作を検討していました。しかし、提携先の愛知県西尾市の方から「より幅広い年代の人が使える商品の方がよいのではないか」と指摘を受けました。
議論を重ね、「誰に、何を伝えたいか」を見つめ直した結果、幅広い世代が日常的に使えるコースターの制作に決めました。しかし、完成後の販売やワークショップでは実施そのものが目的となってしまい、海洋プラスチック問題について伝えきれていないと感じる場面もありました。
そこで、海岸清掃を通して感じたことや現状をまとめたチラシを作成し、来場者に説明を行いました。その結果、世代を問わず多くの人に問題意識を広められただけでなく、メンバー自身の意識もさらに高めることができたのです。
また、きしめんの端材を小麦粘土として再利用する「きしめんど」プロジェクトでは、商品化した「きしめんど」をどう広めていくかという壁に直面しました。当初はインターネットや一部店舗で販売しましたが、想定した売上には繋がらなかったのです。
そこで、団体の原点に立ち返ることにしました。私たちはこれまで、SDGsの普及啓発を目的に、東海エリアの小学校から高等学校まで幅広く出前授業を実施してきました。児童生徒と年齢が近いからこそ、「自分たちにもできる課題解決」を共に考えることができる点が強みです。
この強みを活かし、「きしめんど」を単なる商品としてではなく、学校の副教材として出前授業の中で活用する取り組みへと展開しました。その結果、児童生徒に対して、身近な素材から実践できる社会課題解決の在り方を伝えることができました。
地元の名物が抱える課題であったからこそ、メンバー一人ひとりが「地元をよくしたい」という思いを自分ごととして捉え、困難な壁を乗り越えることができたと考えています。
学生の柔軟な発想で、地域と共に未来を創る

今後は継続中のワークショップや子ども食堂での活動に加え、企業との共同プロジェクトにも注力します。現在は学生の視点を活かした商品開発に向け、複数の企業と議論を重ねています。
こうした活動を通じ、国内外の来場者、特に若い世代には「SDGsは難しいものではなく、日常の中で楽しく実践できる」という前向きなメッセージを届けたいです。
学生ならではの柔軟な発想を大切に、SDGsを身近なものとして地域と共に持続可能な未来を作っていきたいと考えています。
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Future Leaders Hub 編集部 