Z世代が「自虐」を愛する深いワケ…79%が共感する“ネガティブを跳ね返す笑い”の正体
若者に笑ってもらうには、明るく、前向きで、完成度の高いコンテンツをつくらなければならない。企業やマーケターの中には、今もそう考えている人が多いかもしれません。
しかし、SNSを開けば目に入るのは、「朝起きられない」「掃除できない」「就活がつらい」といった、決してキラキラしていない日常を笑いに変えた投稿です。失敗談や黒歴史をさらけ出し、自分のだらしなさまでネタにする。そんな“不謹慎さ”や“皮肉”が混ざった笑いに、なぜZ世代は引きつけられるのでしょうか。
Z世代創造性研究所(Z-SOZOKEN)は、全国の18〜24歳453人を対象に、「Z世代の笑いの感覚」についてインターネット調査を実施しました。
調査から見えてきたのは、Z世代にとって、「笑い」が単なる娯楽ではないということです。それは、うまくいかない現実を誰かと共有し、重さを少しだけ軽くするためのコミュニケーション。今回は、座談会ではなく453人の回答をもとに、Z世代の「面白い」の正体を読み解きます。
調査概要
調査名:Z世代の笑いの感覚についての意識調査 対象:全国のZ世代(18〜24歳)
調査期間:2025年5月〜6月
調査方法:インターネット調査
有効回答数:453人
調査・分析:Z-SOZOKEN(Z世代創造性研究所)/運営:Fiom合同会社
目次
- Z世代の笑いの入口は「日常のあるある」
- 79%が共感。失敗を笑うことは、自分を否定することではない
- 53%がシェア。「共感できる笑い」が連鎖する仕組み
- 短尺は入口、長尺は確認。Z世代は熱量で笑いを選び分ける
- 企業に必要なのは、面白さより「現実の自分に近い」こと
Z世代の笑いの入口は「日常のあるある」
「どのようなコンテンツに面白いと感じるか」という問いで、最も多く選ばれたのは「日常のあるある系」でした。続いて、エピソードトーク、ミーム、ルーティン、身内ネタ、自虐や愚痴といった回答が並びます。

ここで重要なのは、派手なオチや特別な才能よりも、「それ、自分もある」と感じられる日常が笑いの入口になっていることです。
たとえば、友人の少し変わった行動をコンテンツ化する“身内ネタ”。自分の失敗やだらしなさをあえて見せる“自虐ネタ”。これらは、テレビの中の芸人だけが生み出す完成された笑いとは異なり、見る側も同じ地面に立てる笑いです。
笑わせる人と笑う人がきれいに分かれているのではなく、「自分にも似たところがある」「友達にもこういう人がいる」という感覚が、コンテンツへの参加口になります。
Z世代の笑いは、遠くから鑑賞するものから、自分の生活に重ねて参加するものへ。主役は“すごい人”ではなく、“どこにでもいる自分たち”に移っているのです。
79%が共感。失敗を笑うことは、自分を否定することではない
調査では、自分のだらしない部分や失敗体験を笑いにしたコンテンツに対し、79%が「非常に共感する」「まあまあ共感する」と回答しました。

一見すると、ネガティブな自分をさらけ出す行為は、自己否定のように見えるかもしれません。しかし、Z世代の感覚はむしろ逆です。
誰もが持っている怠惰な部分や、うまくできなかった経験を笑いに変えることで、「こんな自分でもいい」「自分だけではなかった」と確認できる。発信者の普段の姿がきちんとしているほど、失敗とのギャップが生まれ、親しみや共感につながります。
背景にあるのは、キラキラした情報に囲まれ続ける疲れです。SNSでは、成功した瞬間、整った生活、理想的なキャリアが絶えず流れてきます。そこに「今日も何もできなかった」という投稿が混ざると、見る側は安心する。ネガティブな事実そのものではなく、それを一人で抱えなくてよくなることに価値があるのです。
Z世代が失敗を笑うのは、現実を諦めたからではありません。笑いに変えることで、現実に押しつぶされない距離を保っている。いわば、笑いでネガティブを跳ね返すセルフケアなのです。
53%がシェア。「共感できる笑い」が連鎖する仕組み
Z世代が笑いに関するコンテンツを見る場所として、調査ではYouTubeが最も多く、TikTokとInstagramも主要な接点になりました。また、SNSで見た面白い投稿を友人や知人へ「よくシェアする」「時々シェアする」と答えた人は、合わせて53%に上ります。

SNS時代の笑いは、見て終わりではありません。
「これ、私たちのことじゃない?」 「この人、あの友達に似ている」 「言葉にできなかったけど、まさにこれ」
そんな小さな発見が、シェア、いいね、コメントによってすぐに表現されます。共感が集まったコンテンツは、切り抜きやミーム、リミックスとして再編集され、別のコミュニティへ運ばれていきます。
つまり、Z世代の笑いで強いのは、発信者が一方的に届ける完成品だけではありません。受け手が自分の文脈を足し、誰かに渡したくなる“余白”のあるコンテンツです。
テレビの笑いが「本格的」「大笑いできる」「安心して見られる」と評価される一方、SNSの笑いには「短い」「わかりやすい」「親しみやすい」という強みがあります。どちらか一方が勝つのではなく、SNSが日常の小さな笑いを増幅し、テレビや長尺動画が深い満足をつくる。それぞれの役割が分かれつつあると考えられます。
短尺は入口、長尺は確認。Z世代は熱量で笑いを選び分ける
ショート動画は、数秒で次へ送られてしまいます。そのため調査レポートでは、冒頭の3〜5秒で視聴者の心をつかめるかが重要だと分析しています。
最後が気になる結末を冒頭で匂わせる。真似しやすい言葉や動きを入れる。流行の音楽やフィルターを使い、関連する動画の中で見つけてもらいやすくする。短尺には短尺の文法があります。
ただし、Z世代が長いコンテンツを見なくなったわけではありません。テレビ番組やYouTube動画の面白い場面が切り抜かれ、ショート動画として拡散し、そこから本編へ人を誘導する流れも定着しています。

短尺は「ちょっと気になる」をつくる入口。長尺は「もっと見たい」に応える場所です。
Z世代は、お笑いから離れたのではなく、自分の熱量に合わせて楽しむ量を選べるようになりました。劇場や番組を追いかける“お笑いLOVE層”だけでなく、面白い投稿だけを見る“LIKE層”、SNSやインフルエンサーを通じて偶然笑いに触れる層まで、笑いのグラデーションが広がっています。
企業がコンテンツを設計するときも、一つの動画にすべてを詰め込む必要はありません。数秒で共感をつくり、興味を持った人にだけ深い情報を渡す。この段階設計が、Z世代との接点を広げます。
企業に必要なのは、面白さより「現実の自分に近い」こと
企業が最も注目すべき結果は、「どのような投稿に惹かれるか」という問いに表れています。
最も多かったのは「ありのままの自分をさらけ出している投稿」の137人。次が「知識やノウハウを提供している投稿」の118人、「失敗談を笑いに昇華している投稿」の90人でした。一方で、キラキラした理想のライフスタイルや、他人の成功体験は相対的に選ばれにくい結果となりました。
さらにレポートでは、対照的な二つの広告表現を提示しています。
「毎朝5時に起きて、ストレッチして、朝活してます(ドヤ)」 「朝? ギリギリまで寝てる。まあでも生きてるからヨシ。」
「なんかわかる」「自分っぽい」と感じる表現として、後者を選んだ人は85%。理想を掲げるより、現実の自分に近い言葉の方が、多くのZ世代の感覚をつかみました。

ただし、ここで企業が勘違いしてはいけないことがあります。砕けた口調にすればよいわけでも、流行語を入れればよいわけでもありません。
公式アカウントなのに少しふざけている。そのギャップが好意的に受け取られれば、話題につながります。しかし、普段のブランド像と離れすぎた“若者へのすり寄り”は、瞬時に見透かされます。笑いに共感性があっても、商品とターゲットの悩みが結びついていなければ、売り上げや信頼にはつながりません。
企業がZ世代の笑いを活用するために必要なのは、次の四つです。
1.人気コンテンツをまねる前に、Z世代が実際に抱える悩みを調べる
2.誰かを笑うのではなく、同じ悩みを持つ人と一緒に笑う
3.商品やブランドと、悩みとの共通点を明確にする
4.面白さの先に、商品が提供できる解決や価値を置く
そして、笑いには明確な境界線が必要です。失敗、怠惰な部分、事実をもとにした自虐は受け入れられやすい一方、特定の人物への攻撃は慎重に扱うべきです。生死、ジェンダー、障がい、ルッキズムに関わる表現は、笑いの題材にしない。企業のイメージを逸脱せず、炎上リスクを事前に確認することが欠かせません。

Z世代に刺さるのは、単に“面白い企業”ではありません。自分たちの現実を知り、その重さを一緒に軽くしてくれる企業なのです。
Z-SOZOKENの総括
今回の調査から浮かび上がったのは、Z世代が「ネガティブなものを好む世代」なのではない、ということです。
彼らが求めているのは、完璧な成功物語の反対側にある“事実”です。うまくいかなかった日、だらしない自分、社会への小さな違和感。それらを笑いに変えることで、「自分だけではない」と確かめ、誰かとつながっています。
だから、企業が取り入れるべきなのは、皮肉な言葉遣いや短尺動画の型だけではありません。まず、自社を立派に見せ続けることをやめ、ターゲットが暮らす現実の目線まで下りること。そこで見つけた悩みを、誰も傷つけない形で言語化し、商品の価値へつなげることです。
“盛る”ことより、“わかる”こと。 笑わせることより、一緒に笑えること。
Z世代との信頼は、その距離感から始まります。
Future Leaders Hub 編集部 