「苦手な領域は人に任せる」リーダー未経験の起業家が気づいた“組織を強くする唯一の方法”
金融ライセンス取得の壁や資金ショートの恐怖といった「ハードシングス」。起業前までは予想もしていなかった「業務量の多さ」。
想像を絶する困難の連続と立ちはだかる難題に、リーダー経験ゼロから挑んだ株式会社EduCare代表の村上健太氏は、「自分の苦手な領域はその分野に強い人に任せる」ことで、組織を強くすることに気づいたと語る。
本稿では、村上氏が安定したキャリアを捨て、自らの意志でスタートアップを立ち上げた際のリアルな苦悩と耐え抜く覚悟について深掘りしていく。
見切り発車でも自分の意志を優先して起業を決断

── 外資系日本法人や監査法人のキャリアを歩んできて、会社員を続けていく選択肢はなかったのですか?
そうですね。10歳の頃から起業を志していたので、31歳になる1週間前に辞表を提出し、「辞めます」と明確に伝えました。これまで上司や周囲には起業の話をしていなかったため、最初はかなり驚いていましたが、しっかりと仁義を通してから退職しました。
その後、半年間は無職のままビジネスプランを徹底的に磨き上げました。そしてVCへのピッチを重ねるなかで、「出資するので会社を設立してほしい」というお声をいただき、法務局で正式に登記を行うに至りました。
── 会社員をいきなりスパッと辞めることについて、不安などはなかったのでしょうか。
不安は当然ありました。特に起業準備中の期間は収入がない状態だったので、貯金が徐々に減っていくのを目の当たりにすると、「本当に大丈夫か」と心配になる瞬間もありましたね。
一方で、前職の監査法人はとても居心地がよく、周囲も素晴らしい方ばかりでした。ただ、このままその環境に留まり続けると「起業のタイミングを逃してしまうのではないか」という危機感があり、最終的には思い切って退職を決断しました。
いわば見切り発車ではありましたが、そこは自分の意志を優先しましたね。
また、現在取り組んでいる「EdTech×FinTech」という領域を選んだのも、単なるトレンドに乗ったわけではなく、大学在学中に経済的な理由で学費の支払いが困難になった自身の原体験に基づいています。
もしトレンドだけで選んでいたら、資金繰りの厳しさやチームの変化といった困難に直面したとき、途中で諦めてしまっていたかもしれません。
ハードシングスを耐え抜く苦労と覚悟

── 起業して「思っていたのと違う」と感じたことはありますか?
私たちの事業は金融系のライセンス取得が必要で、そのハードルが非常に高かったことは予想外でした。売上がまだ立っていない段階で資金を集めなければならず、さらに申請から許認可が下りるまでに1年〜1年半ほどかかるため、その期間を耐え抜くのはかなり大変だったと感じています。
また、会社員時代は起業準備のための知識をインプットしていましたが、実際に起業してみると、一人でこなす業務の多さに驚きました。経理や契約書の確認、営業活動など、あらゆることを自分で対応する必要があり、「これらをすべて一人で抱えるのは無理だ」と思ったのを覚えています。
しかし、次第にメンバーが増え、自分よりも専門性や経験のある人たちと一緒に働くようになると、「自分の苦手な領域はその分野に強い人に任せる」ことで、組織としてより大きな成果を出せることに気づいたのです。
すべてを自分で抱え込まず、適切に役割を分担し、強みを持つ人たちと協力する。起業して初めてその重要性に気づいたという点が、当初の想像との大きな違いだったと感じています。
── 経営をしていて「辛い」と感じるのはどんな時ですか?
組織や人材面、資金面など、ハードシングスを感じる場面はたくさんありますが、特に資金については、「いつショートしてもおかしくない」という緊張感が常にありますね。
投資家へのアプローチでも十中八九きっぱり断られる世界です。正直なところ精神的にきついと感じる場面もありました。本当に創業当初は「奨学金や教育ローンの領域は、社会的意義はあってもビジネスとしてはあまり儲からない」といった見方を投資家からされることが多く、厳しい評価を受けていました。
ですが、直近2〜3年は金利上昇といった金融環境の変化もあり、教育ローンの事業性についての見方が金融機関や投資家の間で、少しずつ変わってきた手応えを感じています。
「辛さ」の先にあるやりがい

── 仕事をしていて「楽しい」と思う瞬間はありますか?
起業は大変なことの方が圧倒的に多くて、ほとんどが辛いと感じる場面ばかりです。ただ、その中でも、自分が本当にやりたいと思った事業を立ち上げ、その想いに共感してくれる社員や投資家の方々と一緒に「EduCare」という船を動かしている実感は、大きなやりがいになっています。
この船を少しずつでも前に進め、大きくしていくこと自体が、今の自分にとっての楽しさであり、事業を続ける原動力ですね。
── 学生や社会人時代にやっておけばよかったなと思うことは何かありますか?
高校ではテニス部、大学ではゴルフサークルに所属していましたが、部長やリーダーを務めたことはありませんでした。また、社会人時代もリーダーとしてチームを率いる経験がなく、そうした背景のまま起業し、今では20代から60代まで幅広いメンバーをマネジメントする立場になっている。
そのため、もっと早い段階でリーダーシップの経験を積んでおけばよかったと感じることはありますね。もし学生時代に戻れるなら、部活動でもサークルでも部長などの役割に積極的に挑戦してみたいですし、その中で自分らしいリーダーシップのスタイルを若いうちに見つけておきたかったなと思います。
<構成/古田島大介 撮影/山川修一>
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Future Leaders Hub 編集部