「もう起業はしたくなかった」久保裕丈がそれでも2社目を立ち上げた“本当の理由”
初代バチェラーで、実業家の久保裕丈さんはこれまでに2度の起業を経験。2012年にアパレルECの事業を展開するミューズコー株式会社を設立し、同社を年商20億円規模まで成長させ、3年後の2015年に大手IT企業へ売却。
その後は、個人でさまざまな企業の顧問やコンサルティング業に従事するが、2018年には株式会社クラスを創業し、再び起業家人生を歩むことに。
「起業はしたくなかった」と思いながら、なぜ2社目を立ち上げたのか。創業の思いや仕事に対する向き合い方について久保さんに聞いた。
1社目の売却を経て気づいた「本当にやりたいこと」

── 1社目のアパレルECの起業に続き、2度目の起業をされた理由を教えてください。
1社目の起業はアメリカで流行していた「フラッシュセールス」を日本に持ってくる、いわゆる“タイムマシーン戦略”でした。
それは効率的でロジカルでしたが、非常に合理的である反面、どこかビジネスライクに淡々と進んでいる感覚もありました。それでも事業は軌道に乗せることができ、最終的には会社を売却するという結果に至りました。
その後は「もう起業はしたくない」と思いながらも、複数社の企業顧問を務めるなど、数年は個人で活動していました。
しかし、そのうちに、「このまま一人で続けていくのか」という違和感を覚えるようになって。一人は確かに気楽で、経済的にも何の不自由もありませんでしたが、「社会に対して自分が生み出せる価値」を考えたとき、すごく小さいのではと感じたんですね。
そんななかで、「自分が何をしている人でありたいか」が初めて明確になったのが35、36歳の頃。最初の起業を通じて「世の中の困りごとや社会課題を解きほぐしていくこと」が、自分にとって本質的に一番やりたいことなんだと気づいたんです。
その気づきをもとに立ち上げたのが現在の会社で、これは完全に自分の強い“エゴ”で立ち上げました。
当時、新居に引っ越した際に新しい家具を購入しましたが、サイズが合わなかったんです。結局、高いお金を払って処分しなくてはならず、「代わりの家具が強烈にほしかった」というのが2社目の起業の出発点になります。
── 2社目としてクラスを創業されたわけですが、当初の思い通りの仕事ができていると感じますか?
「社会課題を解決するためのインフラを作る」
これは私がずっと思い続けていることで、たとえば鉄道や新幹線、高速道路といった社会インフラは、多くの人々を正確かつ安全に支える仕組みによって、人々の生活を大きく豊かにしています。
そういう意味では、今の仕事が日々やりたいことに向かって取り組めているという実感があります。ただ一方で、その理想に対してどれだけ近づけているかというと、思い通りにいかないことも多く、まだまだ未熟さや難しさを感じ続けているのも正直なところです。
「これをやれば将来安泰」というものはなくなった

── もし今学生に戻るとしたら、どんなキャリアを新卒で選びますか?
私の性格上、もし今の知識や経験を持ったまま学生時代に戻ったなら、おそらく起業に向けた準備をするでしょう。仮にそうした前提がなかったとしても、その時々で勢いのある業界や、今ならAIのような分野に自然と進んでいく気がします。
そうしたはやりの業界や、コンサルのように比較的トップティアの人たちが選んでいる環境であれば競争も激しい。その中で生き残ろうとすれば、必然的に何らかの努力が求められます。
その過程でやり切る力や汎用的なポータブルスキルが鍛えられ、結果として安定したキャリアの基盤を作る選択肢の一つになると思います。

── 学生時代に、こんなことをやっておけばよかったと思うことはありますか。
自分自身、今も語学力はコンプレックスで、もし外国語に精通していれば、事業の作り方も違っただろうなと思っています。ただ、AIによる同時翻訳のような技術が進めば、その前提自体も大きく変わるかもしれません。
ただ、本当にAIの波が到来したことで、「何をやっておくべきか」というのを正確に見抜くことはすごく難しいと感じています。
5年後、10年後の社会がどうなっているかが予測できない前提があるなかで、重要なのは、「将来役に立つスキルを探すこと」ではなく「今やるべきミッションを中途半端にしないこと」です。
そしてもう一つは、アンラーニング(学び直し)や新しい情報をキャッチアップし続ける姿勢を持ち、変化に対して柔軟に適応していくこと。また、コンサルのロジカルシンキングやクリティカルシンキングのような思考スキルも、現時点では有効ですが、それすらもAIによって陳腐化する可能性があります。
だからこそ、「これをやれば将来安泰」という発想ではなく、変化そのものに対応できる状態を維持することが本質的な力になると考えています。
<構成/古田島大介 撮影/星 亘>
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Future Leaders Hub 編集部