「私の前に道はない 私の後ろに道がある」上場支援を手がけ続ける公認会計士が明かす“挫折からの再起”
「私の前に道はない 私の後ろに道がある」
監査法人コスモスの統括代表社員、新開智之氏は、自らの歩みを高村光太郎の詩集『道程』に収められた「道」の一節に重ねます。業界内で類を見ない実績を上げ、中小企業の上場支援を通して日本経済の未来を切り開く彼のキャリアは、決して平たんな道のりではありませんでした。
教師の夢、突然の内定取り消し、そして逆境から掴んだ公認会計士という職業。幾多の困難を乗り越え、道を切り開いてきたリーダーの思考の原点と、未来を担う若者への熱いメッセージに迫ります。
教育実習で感じた限界、諦めた夢
新開氏が社会人としてのキャリアを考え始めたとき、その選択肢に「公認会計士」はありませんでした。
「学生のときはテニスサークルにいて、テニスとかスキーとか、青春していましたね」
そう語る新開氏は教育学部に在籍し、漠然と学校の先生になる未来を描いていたといいます。しかし、その道を大きく変える転機が訪れます。教育実習です。
「実際に生徒の前に立ってみると、ここにいる全員の学力を引き上げていくことに限界を感じました。本当に難しいことだなと思ってしまったのです」
一人ひとりの個性や才能が異なる中で、全員を同じように引き上げていくことに自身の力の限界を感じた新開氏。教育現場が抱える課題にも疑問を感じ、教師を諦める決断をしました。
もともと経済や法律といった社会の仕組みに興味があったこと、そして実家が商売をしていた縁から、地元の税理士事務所の所長に誘われ、新たな道を歩み始めます。大学4年生の夏、面接を経て、卒業後は働きながら税理士を目指すことが決まりました。
順調に社会への一歩を踏み出すかに見えましたが、誰もが予想しない事態が待ち受けていたのです。

税理士じゃなくて公認会計士になってやる
年が明けた正月、実家に1本の電話がかかってきます。内定先の税理士事務所からでした。
「お前んとこの息子さん、この4月にうちの事務所で受け入れてやれなくなったわ」
年末に行われた税理士試験の合格発表で、所長の身内に合格者が出たため、新開氏の内定は取り消しに。卒業を目前にして、働く場所を失ってしまったのです。
まさに青天の霹靂。しかし、この逆境が新開氏の魂に火をつけました。
「だったら、税理士じゃなくて公認会計士になってやる」
父親に「2年間だけ勉強させてくれ」と頼み込み、公認会計士という、税理士よりもさらに難易度の高い資格への挑戦を決意します。5年以上も資格取得に向けて勉強している人がいる厳しい世界。それでも「とにかくこれに受からないと男としてやっていけない」「資格を取ればバラ色の人生が待っている」という強い思いを胸に、猛勉強に身を投じました。
そして、その固い決意は見事に結実します。畑違いからの挑戦にもかかわらず、わずか2年で公認会計士試験に合格するという快挙を成し遂げたのです。
上場支援を通じて日本全体をよくしたい
しかし、合格後も試練は続きました。時代はバブル崩壊後の就職氷河期。公認会計士業界も例外ではなく、25歳で難関資格を取得したにもかかわらず、大手の監査事務所にはどこにも入れませんでした。
「合格したのに職がないという状態が続いていましたが、そこで就職できたのが当時設立6年目だった現在の監査法人コスモスでした」
ここから彼の公認会計士としてのキャリアが本格的にスタートします。
「働き始めた当初は、見るものすべてが新しく、仕事は楽しかったですね。ただ、5年以上同じような業務を続ける中で、モチベーションが下がった時期もありました。その壁を乗り越えるきっかけとなったのが『ポジションの変化』です。現場の責任者へと立場が変わり、視点が変わることで、再び仕事へのやりがいを見出していきました」
この経験は、組織メンバーにも「常に目新しいことに挑戦してもらい、ポジションを上げて成長を実感してもらう」という、現在の組織メンバーの育成の考え方にもつながっています。そして、この10年、新開氏と監査法人コスモスは大きな飛躍を遂げます。中小企業を東京証券取引所に上場させる「IPO支援」に注力し、実績を積み上げてきたのです。
「最初の20年間で私が経験したIPOはわずか2社でした。しかし、この10年間は40社を超えて上場をしてもらうことができるようになってきました」
長年、中小企業と向き合い続けてきたからこそ蓄積されたノウハウが、この実績を支えています。
「企業の上場の支援を通じて、雇用を増やし地方経済の活性化や、もっといえば日本全体がよくなるということをこれから見せていきたいのです」
彼の目は、個社の成功の先にある、地方創生、そして日本経済全体の発展という大きなビジョンを捉えています。

誰にも負けない専門性を身につける
もし新入社員時代に戻れるとしたら、過去の自分にどんな言葉をかけるでしょうか。
「大手の看板で、あなたは将来飯を食うつもりなのかと。我々は1人の公認会計士として、誰にも負けない専門性を身につけてやっていく。その環境がこの監査法人にはあるよと伝えたいですね」
組織の看板に頼るのではなく、個としてのプロフェッショナリティを磨き続けること。それこそが、変化の激しい時代を生き抜く力になると新開氏は語ります。そして、その信念は公認会計士という職業の使命感に裏打ちされています。
「公認会計士法の第1条には、国民経済の健全な発展に寄与することが我々の使命だと書いてあります。公認会計士は、いつまでもどこまでも社会に用いられるプロフェッショナルでありたいものです」
使命を果たすため、全国の中小企業を上場会社という価値ある存在にし、地方から日本を盛り上げることを目指しています。監査は単なる「ダメ出し」ではありません。どうすれば上場できるのか、どうすれば経営をよくできるのかをともに考える「未来に向けた有益なアドバイス」を伴わなければなりません。だからこそ、クライアントから「教えてください」と頼りにされ、心から感謝されるのです。
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Future Leaders Hub 編集部