大手メーカーからスタートアップへ…「ブルーオーシャンは『人が避ける場所』に存在する」壮絶経験が育んだビジネス哲学
「若いうちの苦労は買ってでもしろ、という言葉は紛うことなき金言です」
そう力強く語るのは、株式会社リシンクスの代表取締役、結城正博氏です。
大手メーカーでキャリアをスタートさせ、独立という道を選んだ同氏。その決断の裏には、20代の頃の壮絶な経験と、そこで見出した仕事の哲学がありました。
変化の激しい時代において「安定」とは何か。人と人が共に働くことの本質とは。結城氏が自身の経験から導き出した答えは、多くのビジネスパーソンにとって、自らの働き方を見つめ直すきっかけとなるはずです。
変化し続けることが、本当の「安定」につながる
もし、今の知識を持ったまま学生時代に戻れるとしたら、どのような働き方を選ぶのでしょうか。この問いに対し、結城氏は迷いなく「毎日自分をアップデートできるような場所を選ぶ」と断言します。
「学生の頃は、安定していて、できれば忙しくない仕事がいいな、なんて考えていました。でも、今思うと本当にぞっとしますね。もし新卒から楽な仕事や安定した職場にいたら、今の自分の考え方や判断基準は180度違っていたはずです」
大手総合メーカー、パナソニックの住宅設備部門へ新卒で入社した結城氏。配属されたのは、同部門の中でも当時販売シェアが非常に低いルートを担当する部署でした。図らずも身を置くことになった変化の激しい環境。そこで過ごした日々が、結城氏の価値観を大きく変えていったのです。
「少し前に覚えたスキルや知識が、今日はもう通用しない。そんなスピード感のある時代。だからこそ、変化をし続けることが、逆に本当の意味での安定につながるのではないか。今はそう思えるんです」
現状維持は、後退と同じ。常に自分を更新し続けること。その姿勢こそが、不確実な未来を生き抜くための最も確かなロードマップなのかもしれません。
ブルーオーシャンは「人が避ける場所」に存在する
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仕事に追われ、遊ぶ時間もなかったという20代。結城氏が仕事への熱中を見出したのは、意外な場所でした。
「自分の仕事や行動によって、相手に感謝されたり、影響を与えたりできる。そのことに面白さを感じ始めたんです。一種の承認欲求だったのかもしれません」
特に、新人時代に彼が向き合ったのは、社内外の誰もが敬遠するような「癖の強い重鎮」たち。影響力は大きいものの、その個性的な性格から周りが距離を置くような人々でした。しかし、結城氏の視点は違っていました。
「競合他社もあまり近寄らない。これは、ある意味でブルーオーシャンだな、と。周りの評判に惑わされず、自分の目で見て、この人は本当は何を求めているんだろう、と考え抜きました」
とことん相手に向き合い、懐に飛び込んでいく。その真摯な姿勢は、やがて頑なだった相手の心をも溶かしていきました。
「『結城のおかげで助かった』、そう言われたときが、何よりもうれしかったですね。そして、そうしたお客様との関係は、結果的に永続的な売り上げにもつながっていきました」
人が避ける道にこそ、ビジネスチャンスは眠っている。困難な課題に挑む中で得られた感謝の言葉が、彼の承認欲求を満たし、仕事への情熱を燃え上がらせる原動力となったのです。
「取引先」が「仲間」に変わる瞬間
仕事が本当に楽しいと思えたのは、どんな瞬間だったのでしょうか。その問いに、結城氏は「取引先」が「仲間」に変わる瞬間だと答えます。
「利害関係を超えて、相手の人生の懐に入り込む。社内とか社外とか関係なく、仲間と一緒に仕事を進めていく感覚です。その変化がわかるのが、挨拶の言葉なんです」
最初は「お世話になります」から始まる関係。しかし、深く付き合ううちに変化が訪れます
「あるときから電話口の挨拶が『お疲れ様です』に変わる瞬間が訪れると言います。『あ、仲間になれたな』と実感する、何にも代えがたい喜びの瞬間です」
そうした結城氏の哲学を象徴するエピソードがあります。
ある大きなプロジェクトで、どうしても首を縦に振ってくれない代理店のキーマン。とっつきにくいと評判で、誰もが手を焼いていたその人物でした。結城氏は腹を決め、彼の趣味が「登山」であることを突き止めます。
「登山にはまったく興味がなかったんですが、口が勝手に『僕もやってみたいんですよ』と言ってしまって(笑)」
その一言から事態は急転。仕事帰りにそのまま登山用品店へ連れて行かれ、週末には2人で2000m級の山へ。往復8時間以上を共に過ごした翌週、あのキーマンの口から出たのは「結城くん、プロジェクトで何か困ってることあるのか。なんでも言ってくれ」という言葉でした。
「最後は、人と人。それに尽きるなと、あの時改めて思いましたね」

スキルや経験よりも大事なこと
数々の修羅場を乗り越えてきた結城氏が、今、共に働きたいと願うのはどのような人物なのでしょうか。
「スキルや経験も大事ですが、何よりも『素直さ』が一番だと思っています」
経験や知識、こだわりは、時として成長を妨げる足かせにもなり得ると指摘します。
「自分の考えと違うことを言われたときに、『いや、それは違います』と拒絶するのか、『なるほど、そんな考え方もあるんだ』と一度受け入れられるのか。この差は非常に大きい」
それは、何でも鵜呑みにしろという意味ではありません。一度、他者の意見を素直な心で受け止め、柔軟に考えることができるか。その姿勢さえあれば、年齢に関係なく、人は必ず成長できると結城氏は信じています。
「僕が新入社員の自分にアドバイスするなら、『若いうちの苦労は買ってでもしろ。今はわからなくても、後で絶対にその意味がわかるから、逃げずに戦え』と言いますね」
大手メーカーからスタートアップへ。結城氏のもとに集まるメンバーもまた、安定を捨てて新たな挑戦に飛び込んできた「素直さ」と「柔軟さ」の持ち主たちです
変化を恐れず、人と真摯に向き合う。その揺るぎない信念が、結城氏自身と会社をさらなる次のステージへと導いていくことでしょう。
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Future Leaders Hub 編集部