「責任から逃げるな」薬剤師から起業家へ転身した女性経営者が20代に伝えたいキャリア論
「若いうちにその若さっていう価値があるけど、それは目減りしてく。その目減りをどうやって補うかっていったら経験値で補ってくわけ」
薬剤師から起業家へと転身した株式会社HRC代表取締役、高木君与氏。彼女が語るキャリア論は、自身の経験に裏打ちされた深い洞察に満ちています。
もし、今の自分が就職活動中の学生だったら、どんな働き方を選ぶのか。そして、20代の若者に伝えたいメッセージとは。その言葉の根底にある、揺るぎない信念に迫ります。
いっぱい経験しないとわからないこと
もし、自分が就職活動を控えた学生だったら、どんな働き方を選ぶでしょうか。この問いに、高木氏は現在大学2年生の息子に話していることを例に挙げて答えてくれました。
「大学生の間に、とにかくたくさんの種類のバイトをしたほうがいいよっていつも言っています。肉体労働から頭脳労働、飲食系まで、とにかくいろいろな種類の仕事を経験し、その『裏側』を見ることの大切さを伝えるようにしています」
さまざまな仕事の裏側にある仕組みを知り、これから先の自分のライフスタイルと照らし合わせる。自分が歩みたい人生に近い道はどれか、自分の力を生かせそうな場所はどこか。
「いっぱい経験しないとわかんないから、いっぱい経験しておいでっていつも話していて。まず先に社会を知って、その中で自分がどうやって生き抜いていくのかっていうのを考えようねって言ってるんです」
高木氏自身がもし当時に戻ったとしても、同じように行動するだろうと語ります。それは、彼女自身のキャリアに深く関わっていました。

当時は「起業」という感覚すらなかった
薬剤師としてキャリアをスタートさせた高木氏。親の勧めで薬学部に進み、薬剤師の資格を取得。ドラッグストアに就職し、敷かれたレールの上を歩んできました。しかし、医療業界という特殊な世界にいたことで、外の世界から断絶されていたと振り返ります。
「社会を知っていくのがすごい後だったんですよ。社会を知らないから、どうやって社会が成り立っているのか、資本主義が成り立っているのかっていうのがわからなかったから、それで苦労したっていうのがありました」
その後、結婚、出産を経て離婚を経験。十分な生活費が得られない中、息子にはアレルギーがあり、頼れる親もいない完全なワンオペ育児。外に働きに出ることは困難でした。
「自宅でできることでお金を稼がなきゃっていうところから始まって。子どものそばにもいたかったし、お金も必要でした。この状況が起業へとつながりましたが、当時は『起業』という感覚すらなく、ただお金が必要だという一心でした」
子どものおんぶ紐でポスティングをするなど、必死の日々。会社の名前「HRC」は息子さんの名前「遥生(はるき)」から、設立日は息子さんの誕生日に……原動力は息子さんへの深い愛情でした。
心も体も健康じゃないと「道」が閉ざされる
20代の頃に最も熱中したことは、という問いに対して、高木氏は「ネガティブな熱中」だったと語ります。
「自分の体がすごい弱かったんですよ。薬剤師としてメンタルクリニックに勤務していた当時、ストレスで喘息が悪化。薬剤師として薬の知識はあっても、最も強い薬の最大容量を使っても発作を止められないほどでした」
さらに、両親の病気など、自身を含め周りに体がボロボロな人が多かったことから、「健康とは何か」「薬を使わずに治す方法はないか」ということを猛烈に勉強し始めたのが20代だっととのこと。
「病気とかその心が弱るっていうのって、自分のやりたい、目指したい道を閉ざすことなんだってそのときに思ったんですよね」
本当はワーキングホリデーで海外に行きたいという夢があったものの、両親の病気などで断念せざるを得なかった経験。
「ほんとに行きたいほうに行くためには、心も体も健康じゃないとそっちには行けないんだなっていうのが、原体験としてあるかもしれない」
50歳になった今が一番元気だと語る高木氏。無理がしたいなら、無理に応えられる心と体を作っておくこと。そのための日々の生活習慣が何よりも大切だと、力強く語ります。
「自分を見せてくれる人」と働きたい

新入社員時代の自分にアドバイスするなら、何を伝えますか。
「『責任から逃げるな』って伝えたいですね。私、最初の会社を1年で辞めたんですよ。ドラッグストア勤務時代、入社1年目にして売上で全店舗1位になり、店長にならないかと打診されました。しかし、その責任を『重たい』と感じ、怖くなって逃げるように会社を辞めてしまったのです。そこでちょっと私、逃げ癖ついた気がします」
役職につき、チームをまとめ、目標を達成していく。その経験を積んでいれば今に生きていたはずなのに、と後悔を滲ませます。会社にいるからこそ学べる「全体最適解」の視点を得る機会を自ら手放してしまった。あのとき責任から逃げなければよかった、という思いが強く残っているのです。
最後に、どんな若者と一緒に働きたいか尋ねました。
「今は業務委託契約しているパートナーは20代の若者が多いのですが、『自分を見せてくれる人』がいいですね。人となりを見せてくれる人、別にいいところだけを見せてくれなくてもいいんです」
若いのだから、できないことがあって当たり前。それを隠す必要はないと高木氏は言います。
「素の自分を見せ、『こういうことをしていきたい』という気持ちを見せてくれると、こちらも貢献できることを探しやすいですよね」
そして、若者たちに力強いメッセージを送ります。
「若さという強みは年を重ねるにつれ、当然なくなっていきますよね。だからこそ、その目減りしていく分は経験値で補う必要があります。だから積極性が絶対必要なんです」
若さと積極性。この2つを意識し、好奇心を持って経験を積んでいくこと。人生という長期スパンで見たときに、それが未来の自分を支える何よりの財産になる。高木氏の言葉は、これからのキャリアを考えるすべての若者の心に、熱く響くのではないでしょうか。
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Future Leaders Hub 編集部