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2026.05.01 16:00

純喫茶は究極の「サードプレイス」…キーコーヒー社長が守りたい“日本ならではの文化”


日本の喫茶文化の継承と、持続可能なコーヒー生産の実現を目指すキーコーヒー。同社の代表取締役社長を務める柴田裕氏は、フラットな関係性の中で意見を出し合う「文鎮型」の組織を理想に掲げている。

毎朝、本社で欠かさず行われる、コーヒーを飲みながらの会話。部署や世代を超えた交流を通じて、柔軟な対話が生まれる風土づくりを大事にしているのだ。

若い感性と伝統を融合させ、斬新なアイデアを取り入れるための創意工夫について、柴田氏に話を聞いた。

日本の喫茶店は究極の「サードプレイス」

── 組織のチームビルディングや自由に意見を出せる社内の風土づくりについて、特に意識している点を教えてください。

組織はできるだけ“文鎮型”にするようにしています。もちろん上司に相談しながら進めることもありますが、基本的にはフラットな関係の中で、スタッフそれぞれが意見を出し合い、デザインや企画を一緒につくっていく体制を整えています。

また、日本の喫茶文化の継承を目指す企業として、コーヒーに親しみを持ってもらう取り組みも積極的に行っています。例えば純喫茶を巡る動画コンテンツ「純喫茶ジャーニー」のような企画もあります。得意先である喫茶店との関係性も活かしながら、喫茶店という空間とコーヒーの楽しさをより多くの方に伝えていければと思っています。

毎朝、本社の多目的スペースに社員が集まって、「カップテスト」と呼ばれるコーヒーの品質チェックをしています。カップテストはコーヒーの品質を確認する際に行う世界共通の方法で、香りや味わいを確かめるものです。

カップテスト後には、コーヒーを飲みながら会話をする時間を設けていますが、部署も世代も異なるメンバーが集まるので、フランクに情報交換ができるいい機会になっていますね。

──「アマンド」や「イノダコーヒ」などもキーコーヒーのグループ企業ですが、全体としてはコーヒー文化をどのように作っていく予定なのでしょうか?

当社では「2030年のあるべき姿」として『珈琲とKISSAのサステナブルカンパニー』を掲げており、喫茶文化を守ることを大切な使命だと考えています。

海外では「サードプレイス」という言葉が使われますが、日本の喫茶店は職場でも学校でも家庭でもない、自然な「居場所」としてその役割を果たしてきた存在です。そこで時間を過ごし、人と会って話をする素晴らしい場所であり、その傍らにコーヒーがある。

そんな空間こそが喫茶店の魅力だと感じています。今後もグループ全体で喫茶文化を守りながら、若い世代や海外の方々にもその価値を伝え、「日本ならではの喫茶文化」を次の時代へ継承していきたいですね。

「コーヒーの2050年問題」の現状

── 昨今、注目を集めている「コーヒーの2050年問題」とは具体的にどのような状況なのでしょうか?

2015年のミラノ万博の頃から、専門家たちが「コーヒーの2050年問題」を提唱し始めました。この問題の引き金となる一番の問題は、温暖化による気候変動です。コーヒーは植物であり、世界の生産量の約60%を占める「アラビカ種」という品種は特に気温の上昇や降雨サイクルの変化に敏感です。

気候変動の影響で、2050年までにアラビカ種コーヒーの栽培適地は半減してしまうという予想が立てられています。これが、「コーヒーの2050年問題」です。

私が日本でこの問題を発信し始めた当初は、あまりピンと来ない人も多かった印象です。しかし最近では、他の農産物や水産物も含めて気候変動の影響を受けていることが認識され、関心を持っていただけるようになりました。それに伴い、コーヒー会社としての生産地支援の取り組みも理解が深まっているような気がします。

現在、キーコーヒーには持続可能なコーヒー生産の実現を目指す「コーヒーの未来部」という専門部署があります。私が部長を務め、気候変動によるコーヒー減産を食い止めるために、栽培方法の改善提案、品種改良の実験支援などさまざまなアクションを行っています。関連企業や支援団体の方々と世界中でお会いして、地域を支える活動にも携わっています。

「好き」や「得意」を仕事につなげられる人と働きたい

── 日々若い方と接するなかで、自分が若い頃と比べて大きく違うと感じることは何かありますか。

当たり前のことですが、今の世代は触れられる情報量が圧倒的に多いと感じます。私が若い頃は、コーヒーの生産国について調べるだけでも本当に大変で、実際に現地へ行かなければ分からないことも少なくありませんでした。

それに比べて今は、WEBを使えばすぐに自分で調べて理解することができる。映像や写真も含めて、瞬時にイメージを掴んでもらえる時代だと思います。

そんな時代だからこそ、人の感覚も変わってきますよね。

若い人たちと接すると、私では思いつかないような斬新なアイデアを次々と出してくれると感じています。

例えば、当社のロゴ入りの喫茶店看板のミニチュアを「カプセルトイ」にするという提案があった際、最初は「それが喫茶文化とどうつながるのか」とも思いましたが、実際に世の中へ出してみると、若い人たちの間で話題になった事例があります。

また、私たちにとっては当たり前だった喫茶店の店内の様子やメニューが、若い人たちにとっては「映える」ものとして新鮮に見えるみたいで、そうした視点を活かした提案も上がってきます。

こうしたアイデアはキーコーヒーの事業にもしっかり役立っていて、何か提案があれば社内でプレゼンしていただく機会も用意しています。

── 一緒に働きたいと感じるのはどんな特徴のある人ですか?

コーヒーに限らなくてもいいのですが、自分が得意なことや好きなことを仕事に活かそうとし、そこに喜びや強い関心を持てる人は、とても大切だと思っています。

私自身は映画や舞台が好きなのですが、「この演出は何を意味しているのだろう」「この作品が伝えたいことは何だろう」など、一歩引いて俯瞰的に見るとまた違った面白さがあります。

その視点は、私の仕事にも活きています。例えば、どうすれば株主総会に出席する方々にもっと興味を持ってもらえるか。株主総会を事務的な場として終わらせるのではなく、“総合演出”のような意識でプロデュースして、会社の考えや魅力を伝えるプレゼンテーションの場と捉える。そんな風に考え方を転換してみると、ちょっと違った形でのアイデアが浮かぶのではないでしょうか。

<構成/古田島大介 撮影/林 紘輝>


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