「AIと人が共存する未来をつくりたい」元診療放射線技師が起業を決意した、医療現場への“切実な問題意識”
「AIに仕事を奪われると捉えるのではなく、AIをうまく活用することで、一人ひとりがウェルネス・ウェルビーイングを高め、心身ともに健康に過ごせる未来を作りたい」
そう語るのは、株式会社WellAIの代表・古井戸俊也氏です。
総合病院で診療放射線技師として勤務した後、プログラミングやマーケティング、事業立ち上げなどの経験を積み、AIを活用したシステム開発の世界へ飛び込んだ古井戸氏。
一見すると大きなキャリアチェンジにも見えるその歩み。しかし、根底にある思いは一貫しています。
その歩みには、医療現場への切実な問題意識と、テクノロジーへの深い情熱がありました。
医療現場で感じた「他業界との大きな差」
WellAIが手がけているのは、AIアバターやAIコールセンターをはじめとした、AIを組み込んだシステムの受託開発です。
古井戸氏が起業を志す原点となったのは、診療放射線技師として総合病院に勤務していた頃の経験でした。
「医療現場って、本当に非効率なんですよ。ほかの業種に比べて、場合によっては10年ぐらい遅れています。電子カルテが義務化されたのもつい最近のことで、それまでは紙カルテが運用されていたりして、システム同士が十分につながっていないことで生まれる手間など、非効率さや情報格差を日々目の当たりにしていました」
人の命や健康を支える医療従事者が、本来向き合うべき業務以外に多くの時間を割かれている。
その状況に疑問を抱いた古井戸氏は、勤務3年目頃から副業としてプログラミングの学習を始めました。
最初に取り組んだのは、ホームページ制作やLP制作です。小さな仕事から経験を積み重ねていくうちに、次第に一つの確信を持つようになりました。
やがて、「テクノロジーを活用すれば、医療現場の業務はもっと効率化できるのではないか」という確信へと変わっていきました。
病院の中で課題を感じるだけではなく、自ら解決する側に回りたい。その思いが、古井戸氏のキャリアを大きく動かしていきました。
医療への還元を見据えた「逆転の発想」

その後、プログラマーへ転職。さらにマーケティング業務やフランチャイズの立ち上げ、店舗出店など、技術だけにとどまらない幅広い経験を積みました。
それでも、視線の先にあり続けたのは医療業界です。
「最終的には、自分が積み上げてきた経験や技術を医療業界へ還元したいと考えていました。ただ、医療・介護・福祉の領域だけで、継続的に大きな利益を生み出すのは簡単ではありません。そこで、まず別の領域で収益とナレッジを生み出し、それを医療業界に還元していく形を目指すことにしました」
一見すると遠回りにも見える戦略ですが、医療現場を持続的に変えていくために考え抜いた、古井戸氏なりの現実的な答えでした。
2025年に設立したWellAIは、初年度から売上6000万円を超える規模へと成長。現在は正社員はおらず、専門性を持つ業務委託メンバーと連携しながら、複数のプロジェクトを推進しています。今後は、組織としての採用も本格化させていく方針です。
求めているのは、未知の領域を楽しめる人
古井戸氏が一緒に働きたいと考えているのは、変化を恐れず、自ら考えて行動できる人です。その人物像を象徴する一冊として挙げたのが『ベンチャーの作法』でした。
「この本を読んで、考え方に共感してくれる人と働きたいと思っています。AIはまだ正解が決まっていない領域です。未知のものを怖がらずにまずは試してみて、『これは面白い』『別の領域にも応用できるのではないか』と発想を広げられる人と一緒に事業をつくっていきたいですね」
決められた業務だけをこなすのではなく、自ら考え、動き、改善を重ねていく。
職種や担当領域にスピード感を持ち、仕事の領域を自ら線引きせず、必要なことにスピードを持って取り組める人。それが古井戸氏の理想とするチームの姿です。
変化の激しいAI領域では、最初から明確な答えが用意されているとは限りません。だからこそ、完璧な計画を持つのではなく、仮説を立て、実行し、そこから学び続ける姿勢を大切にしています。
「とりあえず一歩踏み出す」こと、が未来を切り開く

最後に、これから社会へ出ていく若い世代や、新しい挑戦を考えている若者へのメッセージを尋ねました。
「AIの登場によって、世の中の変化のスピードは急速に上がっています。そして、これからはさらに大きく、激しく変化していくはずです。そのときに大切なのは、AIに仕事を奪われると恐れるのではなく、AIをどのように使いこなすかを考えることだと思います。
その上で、古井戸氏は「自分自身の軸を持つことが重要だ」と続けます。
「AIができることが増えても、自分が何を大切にしたいのか、どのような未来をつくりたいのかは、自分で決める必要があります。その軸を持った上で、一歩踏み出してほしい。最初から完璧である必要はありません」
失敗を恐れず、まずは試してみる。うまくいかなければ修正し、もう一度挑戦する。
その言葉は、医療現場で感じた悔しさを原点に、副業でプログラミングを学び、異業種で経験を重ね、起業へと進んできた古井戸氏自身の歩みに裏打ちされています。
古井戸氏が目指しているのは、単なる業務効率化の先にある、AIと人が共存し、一人ひとりが心身ともに健やかに過ごせる社会です。
医療現場で抱いた小さな違和感から始まった挑戦は、今、さまざまな業界を巻き込みながら、その実現へ向けて動き始めています。
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Future Leaders Hub 編集部