「高卒から叩き上げのほうがおもしろい」特許技術で世界を目指す経営者のコンプレックスと原動力
高卒からキャリアを築き、現在は独自の特許技術を武器に世界を目指す株式会社秤の代表取締役社長・小川貴史氏。その異色の経歴の裏には、学歴へのコンプレックスと、それをバネにした飽くなき探究心がありました。
「『高卒からの叩き上げのほうがおもしろくね……?』みたいな考えがずっとあるんです(笑)」
そう語る小川氏の原動力はどこにあるのか。そして、彼がこれから目指す未来とは? 波乱万丈のキャリアと、その根底に流れる仕事への情熱に迫ります。
「日本発の技術」で海外で稼ぎ、日本に貢献する
株式会社秤は、マーケティング投資の意思決定に特化したコンサルティングファームです。特に、テレビCMなどに代表される多額の投資が、どれほど売上リターンに繋がっているのかを分析する「マーケティングミックスモデリング(MMM)」の分野を強みとしています。
その分析力は、日本で特許を取得した独自技術によって支えられています。米国と欧米でも特許を出願し、グローバルで戦う準備をしています。その背景には、壮大なビジョンがありました。
「世界の調査市場で、日本はわずか2〜3%程度のシェアしかありません。アメリカとヨーロッパで約7割を占めています。私の特許をグローバルスタンダードにして海外で稼ぐ。それが人口が減少し、社会インフラの維持さえ困難になるこれからの日本のためになると信じています」
日本のマーケティング水準は海外に比べて低いと指摘する小川氏。自身の技術で海外市場を切り開くことが、日本のマーケティングレベルを底上げすることにもつながると熱く語ります。
唯一のコンプレックスが学歴だった
独自の技術と高い志を持つ小川氏ですが、もし今、学生だったらどんな働き方を選ぶのでしょうか。
「今、学生だったら死ぬほど勉強して、マッキンゼーかボストンコンサルティングに入ってみたいです。高卒で大学すら行っていないので唯一のコンプレックスが学歴。叩き上げでやってきた自負がある一方、裏返しのコンプレックスもしっかりあるんです」
高校卒業後はフリーターとして、営業やホストのような仕事まで、さまざま経験を積んだといいます。初めて正社員として就職したのは、イベントのテクニカルスタッフ。そこから電通グループ会社、NTTデータ子会社へと転職を重ね、さまざまな分野を網羅する独自のキャリアを戦略的に築き上げてきました。
「『高卒から叩き上げのほうがおもしろいだろう』と昔から思っていたので、学校では勉強しませんでしたが、仕事で必要なことはなんでも吸収するようにしてきました」

データ分析ではなく、コミュニケーション
日々、定量化されたデータと向き合う小川氏ですが、そのキャリアを語る上で欠かせないポイントは、意外にもデータ分析ではないといいます。
「原点はどこまでいってもコミュニケーションです。もし一人で年商10億円稼げるようになったとしても、同じ話をすると思います」
そのルーツは20代の頃に熱中したというサーフィンやナンパにあると自己分析します。
「決して二枚目ではなかったので、どうすれば相手に受け入れられるか、常に考えていました。度胸試しでもあり、それは今の営業活動にも繋がっています」
また、仕事が楽しいと思えた最初の原体験は、高校2年生の時に働いた湘南の海の家でのアルバイトでした。
「小さな海の家だったんですが、友人と二人で大声を張り上げたり、ダンスをしたりして必死に呼び込みをしたんです。そしたら、僕らの店だけシャワー客がものすごく増えて。バイト代は変わらないけど、自分たちの力で店を大きくできた。あの成功体験は大きかったですね」
新入社員としてコンサートスタッフになった際も、仕事の覚えは悪く「おろおろするから“オロ”」というあだ名をつけられながらも、持ち前の「人を惹きつける魅力」で誰からも可愛がられたそうです。

原動力は素直さ。お前はそのまま行け
さまざまな経験を経て、今では「好きなクライアントとしか仕事をしない」という理想の働き方を手に入れた小川氏。そんな彼に、もし新入社員時代の自分にアドバイスするとしたら、どんな言葉をかけるか尋ねました。
「『お前はそのまま行け』ですね。後悔は何もありません。辛いときもありましたが、すべてを積み上げて今の自分がある。こんなに良くなれるなんて、当時は想像もしていませんでしたから」
そして、こう付け加えます。
「すべての原動力はお前の素直さだ。辛いことがあっても、わからないことはわからないと正直に言える、その素直さだけは曲げるなよ、と」
最後に「どんな若者と一緒に働きたいか」という問いにも、その哲学は一貫していました。
「素直に、見栄を張らず、わからないことをわからないと言える人。そして、スポンジのように吸収できる人です。『聞くは一時(いっとき)の恥、聞かぬは一生の恥』、これは48歳になった今でも僕が実践していることです」
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Future Leaders Hub 編集部