「人を大切に、夢をカタチに」コーチングと児童福祉、2つの事業をつなぐ経営者の哲学
採用コストゼロ、定着率100%。この数字を聞いて、すぐに信じられる人は多くないかもしれません。
香川県を拠点に活動する株式会社かのんの代表・山本カオル氏は、コーチング・コンサルティング事業と児童福祉事業という、一見まったく異なる2つの領域を経営している。2007年の個人事業主時代から現在に至るまで、広告宣伝費ゼロ、口コミとリピートだけで十数社との顧問契約を維持してきた。
その実績の背景には、どのような経営哲学があるのか。山本氏に伺いました。
アパレルの現場で出会った「コーチングという光」
山本氏のキャリアの原点は、アパレル小売業の管理職時代にあります。全国に多数の店舗を展開するファミリーブランドにおいて、フランチャイズ加盟店として売上日本一を達成した経歴を持っていました。しかし、その道のりは決
して平坦ではありませんでした。
「人が辞めるのが悩みでした。コミュニケーションについてもずっと悩んでいました。そうした状況で出会ったのがコーチングでした。自身にコーチを付けたことや自らコーチングを学んだことで、コミュニケーションの取り方を学び、職場の定着率が改善。人材が育ち、販売力が上がり、売上が伸びるという好循環が生まれました」
「コーチングって、役に立つんだ」という確信が、独立への一歩を後押ししたそうです。
現在、山本さんが手がける事業は2つあります。ひとつは「社長不在でも行列のできる人材育成と仕組みづくり」をコンセプトとしたコーチング・コンサルティング事業。もうひとつは、放課後等デイサービスおよび児童発達支援の事業所運営です。
この2つの事業を、周囲から「接点がない」と見られることも少なくないそうですが、山本氏の考えは違います。
「人材育成という点では共通しています。ビジネスの現場で経験したことを、発達に気がかりなお子さんの未来に役立てることもできる。逆もまたしかりで、相乗効果があると思っています」
実業を持ちながらコーチングも深めている経営者は、山本氏の知る限りそう多くないそう。自社で試みた成功事例をクライアント企業へ持ち込むことが、他のコーチとの明確な差別化になっていると語ります。

「人を大切に、夢をカタチに」という経営理念
山本氏の経営理念は、「人を大切に、夢を形に」。この「大切に」という言葉には、山本氏ならではの定義があります。
「大切にするというのは、その人の未来を見越して、逆算して今必要なものを考えながら接するということです。だから、ときには厳しいことも言います。受容と共感ばかりではないんです」
福祉事業所の利用者であるお子さんに対しても、コンサルティングのクライアント企業に対しても、そして自社のスタッフに対しても、その姿勢は変わりません。「その人の未来のために、今何が必要か」を問い続けることが、山本さんの一貫したスタンスです。
そして、「夢をカタチに」についてはこう話します。
「業績を上げることは得意なほうです。コーチングの本質は、目標を引き出し、夢を形にすること。それを込めてこの言葉を選びました」
採用コストゼロ、定着率100%の現場
2018年から展開する児童福祉事業は、現在3事業所を運営しており、4つ目の事業所を2026年4月1日に開業しました。業界全体では赤字企業が4割に上り、人材不足による閉所も相次ぐ中、山本氏の事業所はキャンセル待ちが続く状態にあります。
驚異的なのは、2025年まで採用コストゼロ・定着率100%を維持してきたこと。新規事業所でも、すでに有資格者4人を費用をかけずに確保しているとのこと。
「コーチングも、広告宣伝費ゼロでリピートと口コミだけでやってきました。今は枠がほぼ埋まっている状態です」
ただし、山本さんはこの現状に満足して立ち止まっているわけではありません。これからスケールしていくためには、PRや採用広報が不可欠になると見据えています。
「狭い範囲で共感してくれる人だけを集めていてもしょうがない。四国全体に良質な事業所を広げていくためには、もっと広くアプローチしていく必要があります」

手間暇を惜しまず、相手の未来を逆算して関わる
最後に、今の20代に向けてのメッセージを尋ねた。山本氏は、一見矛盾するように見える二つのことを大切にしていると話してくれました。
ひとつは、相手の立場に立ち、相手が望んでいることを理解した上で、自分がどう役に立てるかを考え続けること。もうひとつは、自分自身の思いを言語化する力を磨くこと。
「今の若い方は、言語化がとても苦手な傾向があります。AIを使うことで、さらにその能力が失われていく面もある。でも、人を感動させる言葉は、自分の経験や体験からしか生まれません」
ビジネスの基本を身につけることの重要性も強調します。
「基本のビジネス力がわかっていない人がAIを使っても、何も役に立ちません。成功したいなら、まず基本を習得することが大事だと思います」
そして、若い頃の自分へ贈る言葉として、こうも語りました。
「失敗は早めにしたほうがいい。挑戦してうまくいかないことを、早めに経験する。失敗はないんです、あるのはフィードバックだけ」
手間暇を惜しまず、相手の未来を逆算して関わり続ける。山本氏の経営は、まさにそのメッセージを体現しています。
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Future Leaders Hub 編集部