「今の仕事の7割は10代・20代の人間関係から生まれている」フリーランスから経営者に…“40代でキャリアチェンジ”の現在
呪術廻戦、北海道日本ハムファイーターズなど誰もが知るIPのポップアップストア/フラッグシップストアを多数手がけてきた株式会社THE・STANDARD。その代表を務める吉田宗平氏は、かつてフリーランスとして一人で事業を回していました。
しかし、40歳を目前に経験したある出来事が、吉田氏の働き方を根底から覆します。
「その時、これからの40代は、自分より1回り以上年下世代のみんなに頼りながらやっていこうと、心から目覚めました」
一人ですべてをこなすスタイルから、チームで価値を創造する経営へ。その劇的な転換の裏には、何があったのでしょうか。吉田氏のキャリアの原点からZ世代への熱いメッセージまで深く話を伺いました。
世の中にないオンリーワン店舗業態を企画プロデュースする
株式会社THE・STANDARDは、ポップアップストアやフラッグシップストアのトータルプロデュースを手掛けています。その事業内容について、吉田氏はこう語ります。
「2週間から3か月程度の期間限定で、特にプロモーションを目的とした店舗の企画から運営までをトータルでプロデュースしています。単に物を売るだけでなく、人生レベルで忘らない体験を提供したり、メディアに取り上げられたり、SNSで話題性が拡散されたりするような、世の中にまだないオンリーワン店舗業態を企画することが我々の強みです」
同社が手掛けた事例には、コカ・コーラ社の「綾鷹」のおにぎり屋や、ZOZOTOWNのAIとプロのスタイリストが お客様の「似合う」を見つける超パーソナルなスタイリング店舗のアパレル店など、大きな話題を呼んだものが並びます。
斬新な企画であるほど運営は難しくなりますが、同社は運営マニュアルの作成まで含めてサポートすることで、クライアントの挑戦を支えています。

きっかけは初めて経験した「ぎっくり腰」
吉田氏がこのような事業を始めたのは、実は「ポップアップストア」という言葉がまだ世にない20年以上も前のことでした。当時はカフェを貸し切ってイベントを行う「カフェジャック」や催事イベントのような形で、自然発生的に同様の仕事を手掛けていたといいます。
「会社を作る前からやっていたのですが、10年ほど前から毎月のように依頼が来るようになりました。当時は一人でやっていたので、飲食店のオーナーである友人に店を休んでもらったり、フリーランスの仲間に手伝ってもらったり、大変なことも多かったです」
特に、現金管理や責任問題の難しさなどから、専門の会社を設立する必要性を感じていた吉田氏。その背中を決定的に押したのが、40歳を目前にして経験した「ぎっくり腰」でした。
「1週間ほど動けなくなり、このままではいけないと痛感しました。それまでは一人で仕事を回すのが得意であり楽しかったですが、これからの40代はいろんな人を巻き込み、分担しながら、自分より1回り以上年下世代たちと事業を作っていくスタイルにしなければならないと。ぎっくり腰になったことで、チームで働くことに心から目覚めたんです」
この経験が、現在のTHE・STANDARDの経営理念の根幹を成しています。一人ではできない大きな仕事も、役割を持ったスタッフに任せ、チームとして取り組む。現場には20人、30人、多い案件では250名以上のスタッフがいることもあり、責任を持って仕事を回してくれる大事で優秀な仲間がいるからこそ、今の事業が成り立っているのです。
「就職するという概念がなかった」学生時代
そもそも、吉田氏はいつから「起業」を志していたのでしょうか。そのルーツは19歳まで遡ります。
「大学の映画研究会で企画を考えているうちに、テレビ制作会社で働く先輩など、大人たちから広告企画やテレビの仕事の依頼が来るようになったんです。『テレビ番組の企画を100個考えてくれ』といった依頼もあり、アルバイトよりも稼げるようになって。自分の考えたものでお金をもらえるようになったことで、就職するという概念が自然となくなってしまいました」
27歳で一度サラリーマンを経験するまで、フリーランスとして企画力で勝負してきた吉田氏。その企画力は、どのようにして培われたのでしょうか。
「一つは、常に人と違う視点を持つことを意識していました。もう一つは、半歩先、2年先くらいに流行るものを予測して提案すること。そして、それが「これからのSTANDARD」になる普遍性があるかどうかも同時に見極めること、そして何より、考え続けることです」
さらにその思考法の背景には、大学時代に研究していたという「ニューラルネットワーク」、つまり現在のAI(人工知能)につながる学問がありました。
「新しいアイデアを生むには、たくさんの情報をインプットする必要がある。その理屈を学び、自ら実践していました。当時は暇さえあれば本屋へ行き、興味のないジャンルの本でも買い漁っては、情報と情報を繋ぎ合わせる訓練をしていましたね」
10代・20代は友達も仕事仲間も圧倒的にできやすい

数々の経験を経て、チーム経営の重要性にたどり着いた吉田氏。もし過去の自分にアドバイスができるなら、どんな言葉をかけるのでしょうか。特に20代の若者に向けて伝えたいことがあると熱を込めて語ります。
「僕が今、一番実感しているのは、友達や仕事仲間が圧倒的にできやすいのが10代・20代だということです。僕の今の仕事の7割はその時にできた人間関係から生まれています。今の会社の役員たちもその頃に出会った仲間です」
若いうちは経験がないからこそ、本音で付き合える仲間ができやすい。だからこそ、「多種多様な業種の仲間をいっぱい作っておけば、30代、40代の仕事や事業のサポートにつながりやすい」と断言します。自身も20代前半に通ったビジネススクールでの出会いが、今の仕事の基盤の一つになっているそうです。
信頼できる仲間がいれば、新しいことを始めようとした時に「このことはあの友達に聞けばいい」とすぐに相談できる。業界の慣習や手数料の相場など、本やネットやAIも教えてくれないリアルな1次情報を教えてもらえる関係性は、何物にも代えがたい財産です。
自分の「型」を見つけ、やらないことを決める
最後に、これからの時代を生きるZ世代に向けて、力強いエールを送ってもらいました。
「まず、仲間と深く付き合うこと。そしてもう一つ伝えたいのは、自分の『型』を見つけることです。マイビジネスモデルと言い換えてもいいかもしれません」
「型」を見つけることの最大のメリットは、「自分が何をやらなくていいか」が明確になることだと言います。
「自分の型に合わないからやめる、というように、諦めることを分析できるようになります。20代は取捨選択の連続ですが、やみくもに手を出していては、自分の強みが積み重なっていきません」
吉田氏自身も、会社の代表になってからはリスクを考えてバイクや車の運転をやめるなど、多くの「やらないこと」を決めてきました。
やることと、やらないことを見極める。そして、信頼できる仲間と共に、自分の「型」を磨き上げていく。変化の激しい時代を生き抜くためのヒントは、そこにあるのかもしれません。
あなたにおすすめの記事
「やりたいことがなくてもリーダーになれる」南信州で歩みを進める“地方創生の新しい道”
「タイパなんて語る前に今日を真剣に生きているか」毎朝4時起きの経営者が若者に伝えたい“仕事の本質”
「集中できる時間を集約する働き方を選びたい」壮絶な労働環境の末に見つけた“理想のワークスタイル”
「若いときの失敗はノーリスク」社会課題に挑む起業家が“恥を忍んでも動き続けるワケ”
「受験は社会に出るための予行演習だ」 大学中退、アジア放浪、自衛隊入隊、公務員転職…“異色の塾経営者”の教育哲学
「起業は逃げに等しいかもしれない」大手IT企業から独立した経営者が明かした“自由を求めた本音”
「責任から逃げるな」薬剤師から起業家へ転身した女性経営者が20代に伝えたいキャリア論
利益の3割を決算賞与で還元する建設会社 「社員は“コスト”ではない」4000万円赤字からV字回復させた経営哲学
借金4億5000円からの再建…元リクルート経営者が「プロ野球選手の夢」の先に見出した理念と情熱
Future Leaders Hub 編集部