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2026.10.22 16:00

管理職になりたくない74%の本音は「あの働き方はしたくない」…ベストセラー作家が考える“Z世代のキャリア戦略”


週3日休みながら、家族の介護をこなし、年に数冊の本を書く。越川慎司さんの1週間は、どこかの時間を削ることで成り立っているわけではない。

「仕事か、家族か、そのトレードオフ自体を疑うことから始めた」。9年前、週休3日・複業推奨の会社を立ち上げた動機は、華やかな働き方改革論ではなく、うつ病と介護というごく個人的な現実だった。

生産年齢人口は今後10年で約650万人減る日本で、Z世代はどう働き、どうキャリアを設計すればいいのか。タイムマネジメントの核心から、複業の始め方、管理職になる意味を越川さんに聞いた。

うつ病になった原体験が「週休3日」の会社を生んだ

越川慎司さん

――9年前に越川さんが立ち上げたクロスリバーは、日本でも珍しい週休3日や複業を掲げています。設立当初から、こうした働き方にこだわってきた理由を教えてください。

越川:僕自身の原体験が大きいです。働きすぎてうつ病を2回経験しているので、働く時間の上限を設けないとまた同じことになってしまうなぁと。あと、いま僕は家族の介護もしているので、週休2日だと両立できない。多くの人はここで「介護か、仕事か」を迫られると思うのですが、僕は「トレードオフ」ではなく「トレードオン」という考え方をしているので、家族も仕事も両方充実させたい。そのための実験が週休3日と複業でした。もちろん営利企業なので売上や利益が下がったら辞めるつもりでしたが、なんとか9年、10年続いています。

―― 一方の「複業」も新しい働き方ですね。

これは言葉の定義からもお話しさせてください。僕が使っている「複業」は、いわゆる「副業」とは違います。本業の片手間にやる副業ではなく、複数の仕事を対等な立場で持つという意味で使っていて、クロスリバーでは実は「専業禁止」なんです。一つの会社だけに所属することを禁止している。

理由の一つは、クライアントに勧めることを自社でやっていなければ説得力がないから。もう一つは、精神的な「余白」がないと外の情報が入ってこないという実感があるからです。近著の『会社から期待されている人の習慣115』(ダイヤモンド社)でも紹介していますが、実際、期待されている人の97%が他部署や他領域の業務に関わった経験を持ち、82%が「他部署の悩み」を3つ以上把握していました。社外での副業経験がある人も17%います。外に出ている人ほど社内で評価されるという逆説が、データにはっきり出ていた。だから、「複業」を推進しているんです。

大切なのは「アクセルとブレーキの踏み分け方」

『815社17万人を分析してわかった 会社から期待されている人の習慣115』

――越川さんは、週休3日ながらも、起業家、作家などの複業をこなしています。そのタイムマネジメントの秘訣はなんですか。

越川:僕の時間も、皆さんと同じ24時間しかありません。そのなかでやっているのは、アクセルとブレーキの踏み分けです。ずっとアクセルをベタ踏みしていては疲れてしまうので、ここぞという時だけ踏む。例えば、僕は定期的に上場企業の社長とのメンタリングや数千人規模の講演を行っていますが、前者には準備時間をほぼかけません。でも、講演には準備に3時間かけます。なぜなら経営者は僕の話より、自分の話を聞くことを求めていることのほうが多いし、講演で新たに僕の話を聞いてくれるほうが新規顧客になる可能性もあるからです。

――どのタスクに時間をかけるかを、どう判断しているのでしょうか?

越川:Z世代は1日にこなすべきタスクが平均7.5個あると言われます。でも、全部にアクセルを踏もうとしては、疲れてしまう。だから、配分を考えるべきなんです。まず、月曜の朝に「今週大事なことを2つ」だけ決めてみてください。その基準は、信頼を積めることと、評価につながること。これに時間を使えば十分です。実際、期待されている人の59%がこの習慣を実践していて、平均タスク数は2つ。一般社員は平均3.7個というデータもあります。

2つ目は脳のゴールデンタイムを知ること。本書の調査でも、期待されている人の70%が判断力や創造性を要する重要な仕事を午前中に仕上げているというデータがあります。僕の場合は特に朝7時台が一番冴えるので、朝起きたら、その時間に原稿や重要な準備を終わらせます。

3つ目は「週休3日です」と宣言すること。宣言すれば断れますから。仕事は受けた瞬間に労働時間が決まってしまうので、何を受けるかという判断が自然につくようになる。この「受注改革」を意識することが、するべき仕事に注力できる秘訣だと思います。

なぜZ世代に複業が「デフォルト」になるのか

――まだキャリアがそこまで深くないZ世代も「複業」を意識すべきでしょうか。

越川:今後、Z世代にとって複業は選択肢の一つになり、ポータブルスキル(他でも活用できる技能)は必須となります。日本は人を増やせば売り上げが上がるという労働集約型のモデルが根強く残っている一方で、生産年齢人口は毎年40万人、50万人減っています。とはいえ、移民に大きく舵を切る雰囲気でもないので、複業とAIを活用しないと社会が回らなくなってしまう。

例えば、週休3日でベンチャーに勤めながら、残り1日で大企業を手伝う、というようなことが普通に起きると思います。実は有給休暇を20日きちんと取れば、祝日や夏休みを含めて僕と同じ週休3日相当になるんですよ。その時間でベンチャーのお手伝いをすれば、月5万円、10万円を追加するのは十分可能です。

――なるほど、ひとつの会社に縛られず、複数の会社で経験と収入を得るということですね。複業には、収入面以外のメリットもあるのでしょうか。

越川:あります。AI時代だからこそ、多様な視点を取り入れられる複業の効果は、さらに大切だと思います。実はうちの会社のトップ営業は、お坊さんなんです。彼は説法のようなプレゼンテーションができて、それがお客さんに刺さる。普通の営業トークじゃなくて、彼にしかできない伝え方だからこそ結果が出ている。

こういう「外れ値」の強みをどう組み合わせるかは、AIには絶対に真似できない人間の価値ですね。従来、グローバルのエグゼクティブが先にやっていたことが、いま日本にも浸透してきている感覚があります。

複業を始める前にまず社内の信頼を得る

――複業に興味はあっても、本業での信頼構築とのバランスに悩む人も多いと思います。その兼ね合いはどうするべきですか?

越川:おっしゃる通りで、今所属している組織での「信頼のツムツム」がないと複業はできません。成果が出ていないと、複業のせいにされてしまいますから。信頼を積むポイントで重要なのが、他部署のお手伝いです。自分の会社の他部署すら助けられない人は、他の会社を助けることもできません。あとは休日、趣味で繋がった会合や読書コミュニティなどのサードプレイスに出かけてみることです。期待されている人の67%は、休日の体験を活かした提案を年に3件以上出しているというデータもあります。

普段関わらない人たちと接することで、自分の市場価値や、逆に非常識だと思っていたことが実は役立つと気づける。机の前に座っているより、外に出てみる実験をすることをお勧めします。

選択肢は「他人」からもらうもの

――Z世代が、これからのキャリアを積み重ねる上で大事なことは何でしょうか。

越川:自分軸でキャリアを構築することです。そして、自分軸のキャリアを磨くには、自分の選択肢を増やすことが重要です。出世、社内異動、大型プロジェクトへの参画、いい顧客の担当になること、転職、起業といった選択肢を、どれだけ多く得られるかで、キャリアを自分で選び、構築することができる。

ただ、大切なのは、キャリアの選択肢は、多くの場合、他人が用意してくれるものだということ。だからこそ、期待や信頼、評価が必要になる。だからこそ、日々の地道な「信頼ツムツム」が重要なんですね。

――最近は、責任が重くなるから管理職になりたくないという人も増えています。しかし、自分のキャリア形成において必要だと思えば、その道をめざすことも必要でしょうか。

越川:今は74%の人が管理職になりたくないと考えている時代ですが、拒否されているのは出世そのものというより「あの働き方はしたくない」という反応だと感じています。実際、508社の「働きがい調査」では、「自分のチームのリーダーが成功の手柄を独占しない」と答えた人の64%が、「将来の選択肢として管理職になることを考えている」と回答しました。

つまり、管理職になりたくない人が増えている理由の一つが「部下の手柄を横取りするような上司にはなりたくない」ということ。結論として、僕は出世できるならしたほうがいいし、管理職にもなったほうがいいと思っています。選択肢が増えますし、裁量権も持てる。

リモートワークを増やしたいと愚痴をいう一般社員のままでいるより、課長になって「うちのチームは週2日リモートにする」と決められる立場のほうが自由度は高い。管理職になれば、自分も周囲も働きたくなるような場を作る権限が手に入るともいえるのですから。


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