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2026.09.18 16:02

「儲かりそう」から始めた事業はなぜうまくいかないのか…起業を重ねて見えてきた“成功の法則”


これまで起業や事業売却を経験し、現在は日本最大級の女性経営者コミュニティ「エメラルド倶楽部」を主宰する菅原智美氏。起業家人生の中で、さまざまな失敗や葛藤を乗り越えてきたからこそ行き着いた「人生は振り子」という哲学とは?

今回では、ビジネスの成否を分ける本質から個を生かす組織づくり、折れない心の保ち方まで菅原氏が培ってきた挑戦マインドの真髄を紐解いていく。

女性経営者の“悩み”を共有し、成長するコミュニティ

── 「エメラルド倶楽部」の会員同士では、どのような会話が交わされているのでしょうか。

やはり多いのは「お金」や「人」「売上が伸びない」といった経営に関する“悩み”の相談です。

資金繰りに苦しむ、融資が得られない、新規事業を始めたいが資金がない。採用ができない、頼りになる右腕がいない、スタッフ間でトラブルがある。

経営者の悩みは実に多岐にわたるわけですが、そうした課題を共有しながら、お互いに学び合い、成長し合える環境があります。皆さん共通して、「こんなことで悩んでいる」と話すと、「私も同じです」というように会話が広がっていくので、非常に勉強になりますし、勇気づけられますね。

また、定期的に情報交換や商談会の機会も設けています。最近だとベトナム進出を支援するため、日本から約30社をベトナムにお連れし、現地企業100社をお招きしたマッチング会を計3回実施しました。

── 女性経営者ならではの悩みや課題もあるのでしょうか?

特に20代、30代の会員の方々は家庭との両立や子育てに関する悩み、あるいは夫からの事業反対といった葛藤も多く聞かれます。また、更年期障害をはじめとする体調面の課題など、女性ならではの悩みもたくさんありますね。

また、一時期セクハラが社会問題として大きく取り上げられたことがありましたが、実際の現場では親身に相談に乗ってくれたと思ったら、「お金を出すから一緒に事業をやろう」と言われ、ミーティングが夜の食事会ばかりといった事例もありました。

純粋に自分の事業や想いに共感してくれていると信じていた側からすれば、裏切られたも同然です。もし、会員の方からそういう相談をされた時は、「割り切ることができないなら、やめた方がいい」と伝えています。

「儲かりそう」よりも「誰かの役に立つ」事業

── これまで数多くの事業を立ち上げてこられたと思いますが、どのような失敗経験があるのでしょうか?

実際に事業を立ち上げてみたものの、うまくいかなかった事例はたくさんあります。その経験から思うのは、「これ、儲かりそうだな」という気持ちから始めた事業は、あまりうまくいかないということです。

もちろん事業なので、利益を出すことは大切です。ただ、「儲かりそう」という欲が先に立って始めたものは、なぜかうまくいかない。

一方で、「これは誰かのためになる」と思える事業は、やっぱり強いんですよね。

例えば、私がエメラルド倶楽部を始めたときも、最初からお金になるとはまったく思っていませんでした。逆に、「一人でも多くの女性を助けたい」「成功するためのお手伝いをしたい」といった思いのほうが強かった。だからこそ、その事業に真剣に取り組み、日本最大級の女性経営者コミュニティを築くことができたのだと思います。

── 差し支えない範囲で「儲かりそうだと思って取り組んだが、結果的に失敗した事業」についてお聞かせいただけますか。

20代の起業する前の話なんですが、当時はちょうどレコードからCDへと時代が移り変わる時期で、TSUTAYAのような大型チェーンもまだ少なかったんです。そんななか、「24時間稼働の自販機でCDを売れば、不労所得のように収益が入り続ける」という話に乗せられ、貯金をすべて投げ打って中古の自動販売機を購入したんです。

しかし、現実は厳しく、東京の亀戸に設置した自販機はさっぱり売れず、月に1〜2枚売れるのがやっとでした。「ここから巻き返せる」と自分に言い聞かせていましたが、あっという間にCDショップやレンタル店が街中に増えてしまい、結局この事業は失敗に終わりました。

また、コロナ禍の際にも「コロナバスターズ」という会社を設立し、「抗菌コーティングで安心を届ける」というコンセプトのもと、飲食店などを対象にウイルス対策の清掃・コーティング事業を計画していました。ロゴやパンフレットの制作、防護服風の専用ユニフォームや液剤の仕入れ、営業体制の構築まで、万全の準備を整えて臨んだのです。

ところが、いざスタートしようとしたら、街中の飲食店が一斉に営業自粛へと追い込まれてしまって。そうなると、当然ながら営業に行く先もなく、仮にサービスを導入してもらったとしても、お店自体が営業していなければ売上につながらない。

結果として売上はゼロのまま事業を撤退することになりました。今思えば、ビジネスのタイミングを完全に読み違えてしまった大失敗でしたね。どれだけ準備して、いいサービスをつくっても、「市場そのものがなくなってしまえば事業は成立しない」ことを身をもって学んだ経験でした。

成果を持続させるためには「休むことも仕事のうち」

菅原氏のビジネスマインドを形作ったドコモショップ時代

── 菅原さんの「挑戦マインド」はどのように培われてきたのでしょうか。

20代の頃、ドコモショップを運営する企業で働いていたのですが、当時は今ほど携帯電話が普及していない時代でした。そのため、「店舗でお客様を待っているだけでは、大きな売上は作れない」と強く感じたんです。私にはリクルート時代に培った飛び込み営業の経験があったので「携帯電話もこちらから企業へ飛び込めば売れるはずだ」と考え、自分で営業部隊をつくって、法人向けの飛び込み営業を始めました。

ドコモショップは基本的には店舗を構えて、お客さんが来店されるのを待つビジネスですよね。でも私は自分から企業に飛び込んでいって、「法人契約しませんか」と提案して回った。その取り組みがうまくいって、売上が大きく伸び、結果的に表彰もしていただきました。

この頃から「待っているだけではなく、自分から市場をつくりにいく」という姿勢が、自分の仕事のスタイルとして身についていったのかもしれません。

── 菅原さんご自身が飛び込み営業で成果を上げられた要因はなんだったと思いますか。

基本的なことですが、まずは「元気で明るい状態を保つこと」が大事だと思います。営業という仕事柄、断られることのほうが圧倒的に多いのは当然ですが、どうしても断られ続けていると気持ちが落ち込んでしまう。

そうすると、「今日もどうせ断られるんだろうな」と思いながら訪問することになりますよね。そうした自信のなさは、相手にも伝わってしまうんですよ。そんな状態でいくら訪問しても、うまくいくはずがありません。

だから私は、気持ちが沈んでいる時に無理して続けるくらいなら、「一度休んでリフレッシュすること」も立派な営業の仕事だと思っています。

どん底を経験するほど成功に近づく

── リクルートや携帯キャリアでの営業において、成果を出すために心がけていたことがあればお聞かせいただけますか。

どんなことがあってもネガティブにならず、プラス思考でいることを意識していました。「事実は1つで、考え方は2つ」と言いますが、私はいい方向に考えることがすごく得意だと思っています。事業をやっていると、本当に大変なことがたくさんありますし、人に騙されたりしても、「自分が成長するために今このトラブルが起きたんだ」と捉えています。

人生は「振り子」みたいなものだと思っているんですよね。悪いことや辛いことがあったぶんだけ、その振り幅と同じ分だけいいことが返ってくる。実際、さまざまな分野の成功者とお会いしてお話を聞く機会がありますが、本当にどん底がひどかった人ほど、成功を収められているんですよ。

── 組織として「ポジティブ思考」を浸透させるには、どのような方法があるのでしょうか。

人によって特性や得意なこと、苦手なことがあるので、その人に向いている仕事をさせてあげることが最も重要です。無理に苦手なことを伸ばそうとするのではなく、「この分野では誰にも負けない」という強みを見つけ、そこを伸ばしてもらう。そして、その頑張りをきちんと認めて、褒めてあげることが大事になります。

そうやって一人ひとりに合った役割や働き方を考えながら、適材適所で力を発揮してもらうことが、結果的に一人ひとりのモチベーションを高め、チーム全体の力にもつながっていくのではないでしょうか。

<構成/古田島大介 撮影/林 紘輝>


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