「社長の代わりを育てようとするのが、そもそもの間違い」プロ経営参謀が断言する“幹部育成の本質”
自身も学生起業の経験を持ち、数多くの大企業で経営参謀を務めてきた株式会社サクラサク代表取締役の山崎伸治氏が、次世代を担うZ世代経営者の悩みに答え、ともに将来を切り開いていく「SpecialMentor」。
今回の相談者は、システム開発事業とプラットフォーム「AWLL Studio」の展開を手がける注目のIT企業、株式会社AWLLの代表取締役・林恭輝氏。組織を運営するなかで直面した「幹部育成」「AI時代におけるエンジニアの生存戦略」「財務と資本政策の捉え方」という3つのリアルな悩みに、山崎氏が自身の経験を交えながら真正面から切り込みました。

「社長の代わり」を育てようとするのが、そもそもの間違い
山崎:まず、経営課題について教えてください。
林:端的に言うと、幹部社員を育てること、事業をどんどん任せられる人を増やしていくことが今の一番の課題です。
山崎:スタートアップの経営者ほど、意思決定を下に下に委ねようとしがちです。ところが、200人規模になるまでは、経営者がほぼ直接管理するくらいの気持ちでなければ実質的に無理だというのが、37年間の経営経験と多くの経営者へのサポートを経て得た結論です。誰もが知る大企業のトップでさえ、いまだに自分で決定していることが少なくありません。
だからこそ、「幹部に自分の代わりを務めさせよう」という発想自体が、そもそもの間違いなのです。ファーストリテイリングの柳井(正)氏であれ、京セラの稲盛(和夫)氏であれ、経営者の代わりが誰かに務まるとは思えません。その前提に立てば、幹部への期待値の置き方も、自然と変わってきます。
幹部がやるべきことは、まず経営者の世界観・理想・やりたいことを完全に理解すること。そして、社長との間で握った自分の役割——いつまでに何を提示し、最後に社長がジャッジする準備を整えるところまで——を完璧にやり遂げることです。
次のステップは、「なぜ社長がそのジャッジメントをしたのか」を学んでいくことに尽きます。これは一朝一夕には身につきません。何十回、何百回と繰り返す中で、「うちの社長ならこう言うだろう」と感覚的にわかるようになる。それが、いわば幹部教育の本質だと思います。
林:今まで、「とにかくやれ」という形で任せておいて、2〜3か月後に振り返るようなサイクルでやってきました。でも、それでは期待が大きくなりすぎて、うまくいかないときの苛立ちも増してしまっていました。
山崎:そこはもっとサイクルをもっと細かく回したほうがいいです。自分の代わりを務めさせようとするから期待値が上がりすぎる。そうではなく、「自分が最高のジャッジメントをするために、いつまでにどんな情報をくれ、そしてあなたはどう考えるかも教えてくれ」と伝える。その上で判断を下し、なぜそう判断したかを丁寧に説明することで、「あ、うちの社長やったらこれこう言うよな」ってだんだんわかってくるということです。
林:帰ってからすぐに、「俺はこう考えてる。お前も教えてくれ」という、コミュニケーションの時間を作りたいと思います。

エンジニアが生き残るための「適材適所」
林:これからはエンジニアも営業しなければならない時代が来ると個人的には感じています。実際に社内で伝えてもいるのですが、なかなかお金に対する危機感が根づかない。収入は「降ってくるもの」だと思ってしまっているところが課題です。
山崎:おそらく、システム会社が手がけている業務の9割はやがてAIが担うようになるでしょう。それでも人間が関わる領域は必ず残る。それは「最終的なジャッジメント」です。AIによる判断をそのまま受け入れる時代はまだ来ていないし、おそらくしばらくは来ません。
だとすれば、エンジニアひとりひとりも、そのジャッジメント能力を磨いていかなければ存在価値がなくなる。単にプログラミングができるだけでは、近い将来、本当に必要とされなくなる可能性があります。「早く動かないと職を失うぞ」というメッセージを、社長自らが明確に伝えることがまず必要です。
林:営業意識の醸成についてはどのようなアプローチが有効でしょうか。
山崎:いきなり「営業感覚を持て」と言っても、彼らの発想の中では繋がりません。まずやるべきは、ビジネスの構造をきちんと教えてあげること。このプロジェクトでクライアントからいくらもらって、原価はこれくらいで、この時間内でこのアウトプットを出さなければマイナスになる。その構造を分解して示すのです。エンジニアは論理的・構造的に考えるのが得意ですから、そこから入るほうが伝わりやすい。
その上で大切なのは、全員に同じものを求めないことです。営業センスとSEとしてのジャッジメント能力は、別のスキルです。両方を中途半端に求めると、どちらでも中途半端な人材になってしまいます。コミュニケーション力があり、本人も前向きなエンジニアには営業にチャレンジさせる。そうでない人には、AIを使いこなして5人分の業務をまとめるような役割を担わせる。
AI時代に備えた適材適所の割り振りを、今の段階から明確に始めておく必要があります。SEの危機は、もうあと1年後には現実になっているかもしれない。それほど焦りを持って取り組むべきテーマです。

財務が苦手なら難しく学ぼうとしなくていい
林:会社を創業してまだ3年ほどで、財務や資本の考え方には詳しくありません。将来的にはIPOも視野に入れているので、最低限かじっておきたいと思っているのですが、どこから学べばいいのかわからないのが正直なところです。
山崎:CEOになる方は、営業ドリブンか技術ドリブンか、どちらかから出発することが多く、財務が苦手な方は非常に多い。だから、あまり難しく学ぼうとしなくて大丈夫です。
まず理解すべきは、BSとPLという財務諸表を構造として理解することです。細部まで精緻にチェックする必要はなく、資産がこういう形で増えていて、ここが減っているという全体の流れが掴めれば十分です。
次に売上の分解。売上は「単価×個数×頻度」に分解できます。うちはいくらのものが何個、何回売れているのか。このシンプルな構造を把握することが第一歩です。そしてコストは固定費と変動費に分けて理解する。固定費が重ければ重いほど、リーマンショックやコロナのような有事に経営は苦しくなります。だから固定費はできるだけ軽く保つ。変動費については、業界標準に比べて高すぎないかというコスト意識を持つ。それだけで十分です。
林:銀行借入れと投資家からの資本調達は、どう違いを理解すればよいでしょうか。
山崎:この2つをごっちゃにしている経営者が多い。銀行は貸したお金と金利が返ってくればそれでいい。会社が成長するかどうかよりも、返済できるキャッシュフローがあるかどうかを見ています。
一方、投資家はまったく違う視点で見ています。スタートアップの多くは失敗に終わる。だからこそ、投資した先が50倍・100倍になるかどうかを基準にしているのです。銀行と投資家では求めるものがまるで異なる。この違いを頭に入れておくことが大前提です。
また、現在の日本は世界的に見ても金利水準が低く、スタートアップがこれほど安く借りられる環境は珍しい。借りられるうちに借りておくというのが基本的な考え方です。その上で足りない部分を資本調達で補う場合、時価総額には「足元の利益」と「物語(ストーリー)」の2つが掛け合わさります。この会社は化けるのではないか、投資家にそう思わせる何かがあるかどうかが、時価総額を動かすのです。

シンプルに、フォーカスして、深掘りを
山崎:いろいろなことをしようとせずに、自分がやるべきことに集中することが大切です。幹部の育て方や組織の作り方、また、お客さんに対しての差別化においても、複雑に考えている人が多いです。
しかし、最大限シンプルに考え、自分がやるべきことだけにフォーカスをしながら深堀りをしていく。これができると、経営者として大成功されると思うので、このようなことを意識しながら頑張ってほしいと思います。
林:ありがとうございます。

本記事でご紹介した対談の様子を、動画でもご覧いただけます。
記事だけでは伝えきれない「現場の熱量」を感じてみてください!
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Future Leaders Hub 編集部 