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2026.05.21 16:00

「大人になるのは、本当に楽しい」俳優・南果歩が20代の不眠不休、大震災を経て気づいた“人生の本質”


先日、開催された『SDGs AWARD for University 2026』で特別審査員を務めた南果歩さん。俳優として第一線を走り続ける一方、サステナブルな暮らしやボランティア活動にも向き合ってきました。

無名の学生から主演に抜擢され、がむしゃらに走り続けた20代、そして震災を機に見つめ直した仕事の意味――その歩みには、常に「自分を感動させたい」という強い原動力がありました。

これから社会へ踏み出す若い世代に伝えたいこととは何か。その言葉の一つひとつに、人生を豊かにするヒントが詰まっています。

自分を自分で感動させる仕事をしたい

新聞で出会った公募記事が、私の人生を大きく変えました。私が役者の世界に足を踏み入れたのは、大学2年生の春です。

今の若い世代の人の話を聞いていると、ご自身のことはもちろん、社会や世界にまで見据えていて、その視野の広さに驚かされます。私の学生時代は、本当に視野が狭かったです。この先の人生をどう生きていくべきか、自分のことしか考えられていなかったように思います。

そんな頃に出会ったのが、映画の一般公募オーディションでした。当時はSNSもない時代です。新聞の記事で、小栗康平監督の第2作の主役を公募するという情報を偶然見つけたことが、私の人生を大きく変えるきっかけになりました。

事務所にも所属していない、関西から出てきたばかりの学生でした。演劇の稽古に明け暮れ、朝からジャージで過ごすような毎日から、私は映画界に入ったのです。

おかげさまで、そのオーディションでいきなり主演という大役をいただくことができました。人生の運のほとんどを、そこで使ってしまったかもしれません(笑)。

ですが、チャンスを生かすことは、人生で一番大事なことだと信じています。役を得るためにさまざまなことに挑戦し、役が決まってからは1年間大学を休学して、その映画に没頭しました。

20代の頃は、まさに不眠不休で働いていました。昼間は連続ドラマを2本掛け持ちし、夜はまた別のお正月のドラマを撮る、といった具合です。

今思えば酷い労働環境だったかもしれませんが、それが許された時代でもありました。なぜそこまでできたのか。それは、私自身が「感動したい」という強い思いを持っていたからです。

自分の仕事を通じて、まず私自身を感動させたい。その気持ちが、今も昔も私の大きな原動力になっています。

ライフワークとなっているボランティア活動

俳優という仕事は、私の生き方そのものです。しかし、私の活動の根底には、日々の暮らしの中で意識している「サステナビリティ」の考え方があります。

基本は、なるべくごみを出さないこと。家から出たごみは目の前から消えてすっきりしますが、どこかで燃やされているという事実を忘れてはいけません。私は「分別の鬼」ですし、まだ使えるものは捨てず、家の前に「必要な方どうぞ」と貼り紙をして置いておきます。そうすると、数日で綺麗になくなっている。誰かが使ってくれることが、私にとって一番の「スッキリ」なんです。

そして、私のライフワークとなっているのがボランティア活動です。

きっかけは、東日本大震災でした。あの日を境に、私は初めて自分の仕事への情熱を失いました。「俳優業なんて、世の中の何の役にも立たない」と、強い衝撃を受けたのです。

いてもたってもいられず、私は東北へ向かいました。4月に避難所を22か所回り、体育館の冷たい床に皆さんと膝をつき合わせてお話をさせていただきました。そのとき、多くの方から言われた言葉が、私の考えを大きく変えました。

「毎日ニュースばかりで、もう見たくないの。ドラマが見たいのよ」

生きるか死ぬかという状況にある方たちにとって、私たちの仕事が必要とされている。その事実に、逆に私が勇気をいただきました。現地に行くことで、反対に教わることがたくさんある。ボランティアに行くたびに、そのことを実感します。

大人になるのは、本当に楽しいことだから

今年2月18日、『還暦スマイル~人生を笑顔で生きるために必要なこと~』というエッセイを出版しました。還暦を迎えた私の、50代での失敗談がたくさん書かれています。

嬉しかったことや楽しかったことは、その瞬間に幸福を感じさせてくれます。でも、失敗したり、傷ついたりした経験こそが自分の心のひだを増やし、自分を強くしてくれたのだと今なら思えます。

学生だから失敗できる、自由がある、というお話がありましたが、本当にその通りです。社会に出た後も、人生の様々な局面でも、失敗を恐れずにやり続けることが、自分の人生を豊かにしてくれると私は信じています。

最後に、これから社会に出る皆さんにお伝えしたいことがあります。

大人になるのって、本当に楽しいんですよ。

10代より20代、20代より30代、そして40代、50代と、歳を重ねるごとにもっともっと楽しくなります。もし今、皆さんが「大人になりたくない」と感じているとしたら、それは私たち大人の責任です。「大人って楽しいんだよ」ということを、私たちが伝えきれていないのかもしれません。

私たちも頑張りますから、皆さんもどうか、これから大人になっていく時間、経験、そのすべてを楽しみ尽くしてください。

「大人になるのは、本当に楽しい」。還暦を迎えた南さんの言葉には、数々の挑戦と失敗を血肉に変えてきた人だけが持つ、圧倒的な説得力が宿っています。

仕事も暮らしも、すべては「自分自身を感動させるため」。失敗さえも心のひだを増やす糧だと笑い飛ばす彼女の生き方は、正解のない時代を歩む私たちに、もっと自由に、もっと欲張りに人生を楽しんでいいのだと教えてくれます。今日より明日、明日より来年。歳を重ねることを心待ちにさせてくれました。


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