「迷う」と「探す」はまったく別物…自分らしいキャリアを築くための“思考の距離”の広げ方
才能の有無よりも、何かと向き合い続ける姿勢を磨くこと。それが「人生の軸」を確立する鍵となる。
28歳で独立するまで自分を探し続けた株式会社muse代表取締役の勝友美氏は「若いうちは、誰かの評価を気にする前に、まず行動を起こすことが大事」だと語ります。
自分を信じ、ノーボーダーに挑戦し続けるために大切なことや、将来への葛藤や焦りを感じる若者に向けてのアドバイスについて勝氏に話を聞きました。
悩む前にとりあえずやってみる

── もし今、学生だったとしたらどんなキャリアを選びますか。
一度は留学に挑戦してみたかったですね。言葉の壁を越えて英語が話せるようになれば、見える景色はまったく変わりますし、世界中の知見や情報にアクセスできるため、自分の思考や視野も大きく広がると思うんです。
留学していたら、アパレルではない世界に飛び込んでいる可能性もあるんですけど、結局は「人が好き」なんです。もちろん服は大好きなんですが、それ以上に人が好きで。
アパレルで働いていたときは、「好きなもの」と「好きなこと」が掛け合わされていたからこそ、すごい幸せだったんですよ。ただ、もし別の人生を歩めるのなら、パリやミラノに行って、食べることも寝ることも全部忘れて、服のことだけを考えて生きるような時間も過ごしてみたかったですね。
── 今の若者が壁や悩みにぶつかっていたら、どんなアドバイスを送りますか?
10代や20代のうちは、悩むことがあったら「とりあえずやってみる」といいのではないでしょうか。その時期は誰かの期待や評価を気にしすぎるよりも、自分自身を知るために行動することが大切だと思うんです。
同じ場所に居続けていると、出会える自分もいつも“同じ”ですが、新しい環境に飛び込んだり、新しい人と出会ったり、何かに挑戦したりすることで初めて、「こんな自分もいたんだ」という発見があるわけです。
また、自分の親との関係についても思うことがあります。結局のところ、人は行動そのものだけで相手を判断しているわけではなく、その人との信頼関係の中で見ている部分が大きいのではないでしょうか。
私自身も、若い頃はたくさん遊びましたし、時には親を心配させたこともあったかもしれません。それでも「自分との約束だけは破らない」という一線は、絶対に超えないよう強く意識していました。
私にとっては、短大を卒業するということでしたし、アルバイトでお金を稼ぐにしても「お金がほしい」からといって一線を超えたことには手を出さないという考えを常に持ち続けていましたね。
多種多様な価値観に触れたのが「人生の基準」になる
── 行動力を増やすために、「若い人はこういうことをやったほうがいい」という習慣や考え方はありますか。
「思考の距離」を広げることが大切だと思います。その思考の幅は、行動の範囲を広げることによって同時に拡がっていきます。
例えば、自分の生活圏から遠い場所に行ってみることや、気になる人の講演会に足を運んで直接話を聞きに行くことはおすすめです。
若い頃は「現実」と「視点」の距離が近いものですが、その距離をどのように広げていくかが、その後の人間力に大きくつながっていくのです。そのためには自分よりも少し質の高い環境や人に触れに行くことが必要です。
例えば、限られた収入の中で服をたくさん買うのか。あるいは、少し背伸びした高いものを思い切って買うのかによっても、まったく違うものになるでしょう。
私自身も、若い頃はかなり極端な使い方をしていました。貯金がほとんどない状況であっても、どうしてもほしいものに思い切ってお金を使ったんですね。
今では「高いから買わない」「安いから買う」といったお金を理由にした選び方はせず、本当に「欲しい物にお金を使う」ようにしているのですが、この自分の中の“基準値”は、10代後半から20代にかけて作っていった感覚があります。
── 自分の基準値を作るために、どんなことに取り組んだのでしょうか?
あえて1000円のスカートを買ってみることもあれば、思い切って28万円の財布を購入する機会も作ってきました。また、ボランティア活動や海外経験を通じて、未知の世界に触れることで「自分なりの基準」を作っていったんです。
そうやって若い頃に多種多様な価値観に触れ、視野を広げてきたのが、結果として「人生の基準」になっていると感じていますね。
人生の感動を死ぬほど体感できるのが10代や20代だと思うんです。若い間に自分の基準を作ってきたからこそ、私はそれに沿って今まで走ることができたんですね。
そして、40歳を迎えた時、これからの生き方や人生観をあらためてチューニングするために、かつての若い頃とまったく同じ行動をとりました。日本を離れ、もう一度自分自身と向き合った結果、やはり私は経営者として事業を動かしていくことが一番好きなんだと実感したんです。
心から夢中になれるものを焦らずに探し続けること

── もし夢を掴む方法があるとすれば、それはどのようなものだと思いますか?
私は10代の頃からずっと、「何者かになりたい」という思いを抱いていました。でも「何者か」が具体的にわからなかったし、どの生き方が自分にフィットしているのかが見つからなくて。そのため、17歳頃から短大を卒業するまでの間は、自分の将来について結構な葛藤がありました。
とはいえ、「迷うこと」と「探すこと」はまったく別で、私が17歳の時に自分を探していたのはそもそも選択肢がなかったからなんです。AかBかを選べるわけでもなく、とても苦しかったのを覚えていますね。
本当に会社を辞めて独立する28歳まで、ずっと探し続けていて。最終的には「自分で作るしかない」という結論に達しました。
自分の中で、「言葉の定義」を持っておくのはすごく大事だと思うんです。そうしないと、「迷う」も「探す」も「モヤモヤ」も、さらには「好き」や「嫌い」まで全部一緒くたになって混同してしまいますからね。
それともう一つ、若い世代の「わからない」という状態の多くは、単にまだ「知らない」だけなのだと思います。
20歳の人であれば、持っているのは20年分のデータに過ぎず、その経験値だけで答えを出そうとしても無理があります。そのため、外に出たり、人に会ったり、経験を増やしたりして、データを取りに行く必要があるのだと考えています。結局のところ、「自分を知ること」が何より大切なのではないでしょうか。
私自身、たまたま夢を持って生きる人生にたどり着きましたし、その生き方は本当に素晴らしいものだと感じています。でも、必ずしも大きな夢を持つ必要はなくて、自分が心から夢中になれるものを探し続けることができれば、それだけで十分価値のある人生だと思うんです。
ただ、その答えが見つかるタイミングは人それぞれ。私は28歳で見つかりましたが、同世代でもまだ模索している人はいますし、50代になって初めて自分の情熱に出会う人もいます。そう考えると、焦らずに探し続けるという過程そのものが、自分らしい人生を築き、自分自身を深く理解することにつながるのではないでしょうか。
今悩んでいる人に伝えたいのが、「人生は思っている以上に何とかなる」ということ。人生には必ず終わりがあるからこそ、今の苦しみも永遠には続きません。
完璧な答えがなくても、探し続けること。そして、自分を信じて人生を思い切り生きれば、きっと道は開けていきます。
何かと向き合い続けられる姿勢を大切に

── ご自身の経験も踏まえて、これから社会で活躍する若手世代に伝えたいことはありますか?
学生時代の私は、決して胸を張れるような過ごし方をしていたわけではありません。ただ、そんななかでも「これなら人より少し得意かもしれない」と思えるものを、自分なりに見つけては大切に磨き続けてきました。
ほんの小さな興味や得意なことでも、諦めずに育て続けていけば、それはいつしか自分だけの強力な武器になります。そして気づけば、周囲から「すごく素敵だね」と評価してもらえるものに変わっていく可能性もあるわけです。
本当に若い時は「ノーボーダー」でいいと思います。「何かができる才能」よりも、「何かと向き合い続けられる姿勢」を持てるかどうかの方が大切なのかもしれません。
たとえ今は夢中になれるものが見つかっていなくても、いつか頑張りたいものが見つかった時に、その姿勢は必ず生きてくるでしょう。
<構成/古田島大介 撮影/星 亘>
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Future Leaders Hub 編集部