「言い訳ができない環境を作る」組織マネジメントが警鐘…“頑張るリーダー”が陥る落とし穴【編集後記】
この夏、伊豆の海に遊びに行ってきました。海の中をのぞくと、小さな魚たちの群れが泳いでいました。
この魚たちの群れに、リーダーっているのでしょうか? 魚の群れのリーダーと聞くと、物語「スイミー」を思い出す人もかなりいるのではないでしょうか。
小さな魚スイミーが、仲間たちと協力して大きなマグロを追い払う、アレです。一匹だけ黒いスイミーを取り囲むように赤い小さな魚たちが群れとなり、大きな魚のふりをしたという話。物語のスイミーは、みんなに協力を呼びかけた、とても立派なリーダーです。
ただ、自然界ではちょっと様子が変わります。水産研究者によると、群れの内側は外敵に襲われにくいので安全地帯。リーダーと呼べるのは、群れが進む方向を決める先頭の魚なんだそうです。
しかも、魚の群れでは、リーダーがどんどん入れ替わるのが普通。それぞれの個体が群れの内側に入り込もうとする結果、あのような群れの形になるそうで、実は「自己中心的な魚の集まり」だとも言えるそうです。(スイミー好きの人、ごめんなさい。あくまでも自然界での話です)
組織のリーダーに本当に求められていること
さて、人間界のリーダーはどうでしょうか?
会社でも、バイト先でも、大学のサークルでも、「うちのリーダーは、メンバーに指図するばっかりで、自分は何も動かない」なんて不満があふれています。そして、「先頭でチームを引っ張るリーダーがいてくれたら…。もし自分がリーダーになったら、あんな風には絶対ならない」と思ったことがある人もいるかもしれません。
「リーダーってどんな人?」
そう聞かれたら、多くの人は「みんなを先頭で引っ張る人」と答えるのではないでしょうか。
ただ、人間のチームは、それだけではうまくいかないようです。
今回インタビューした組織マネジメントの専門家・安藤広大さんは、リーダーに必要なのは、自分が先頭を走ることでも、メンバーのやる気を引き出すことでもないと言います。
大切なのは、メンバーが何をすべきか、はっきりわかる状態を作ること。安藤さんはそれを「言い訳ができない環境を作ること」と表現しています。
「あの人は指図ばかりする」と言われてしまう悪循環

「頑張っているのにチームがまとまらない」という多くのリーダーの悩みは、この考え方を知ることで解決できるかもしれません。
実際にリーダーをやってみると、チームをまとめるのは思った以上に難しいものです。
ついに選ばれた念願のリーダー。自分が先頭に立ってチームを引っ張るぞ! さあ、みんなついてこい! 誰よりも早く出社する。面倒な仕事は率先して引き受ける。メンバーにも気を使う。でも、おかしい。先頭で自分が動いているのに、なぜかチームはついてこない。
そうか、リーダーたるもの、みんなのモチベーションを高めないといけないのか。ここは自分がやっておくから、気にしないで休んで。君は自分のやるべき仕事を、なるべく早く仕上げてね。細かいルールは設けないから、やりにくいことがあったら言ってね。
みんなのモチベーションが下がらないよう気を付けていたのに、ある日、チームメンバー同士が噂している声が聞こえてきました。
「あの人は指図するばかりで、自分では何も動かない。先頭でチームを引っ張るリーダーがいてくれたら……」
あれれ? 自分では頑張っていたつもりなのに、なぜこんなことになってしまったのでしょうか。
「モチベーションを高める」は仕事ではない
安藤さんによれば、多くのリーダーがしている勘違いが、「まずはメンバーのモチベーションを高めることが自分の仕事だ」と考えてしまうこと。
モチベーションを高めることにリーダーが時間と労力を使ってしまうと、メンバーはいつからか、モチベーションを高めてもらえないと頑張れなくなってしまいます。
そして、結果的に弱いメンバーになってしまう。リーダーが良かれと思ってやった行動で、結局、みんなが損をしているというのです。
では、リーダーがすべき「言い訳ができない環境を作る」とは、具体的にどういうことでしょうか? それは、メンバーに「求めていること」と「足りていないこと」を『具体的』に示すことです。
「小さな不完全性」が大きな溝を生む
「あなたの100点満点の状態はこうだ、とちゃんと伝える。その100点満点に対して何が足りておらず、その不足を埋めるためにどういう風に努力するのか、しっかり約束させる。そうしたサイクルを回すのが、成長の仕組みです」
先ほどの悩めるリーダーは「自分のやるべき仕事をなるべく早く仕上げてね」と言っていました。しかし、「仕事」の定義も、「なるべく早く」が意味する期限もあいまいです。
今日中なのか、今週中なのか、それとも来月なのか。受け取った相手にはまったく違うニュアンスで伝わっているかもしれません。
こうした不完全性が、やがてチームの大きな溝になってしまうのです。もしあなた自身がリーダーにならなくても、そうした「リーダーに求められる理論」を知っておけば、チームはきっと強くなります。
誰かとチームを組んだときには、ぜひ思い出してほしい考え方です。
人も魚も誰についていくかで未来が変わる
魚の話に戻ります。
魚には、より強い刺激に反応して動く習性があるそうです。そのため、魚に目隠しをして通常ならあり得ない危険な動きをする個体を作ると、それが先頭になり、群れ全体がついていってしまうことが多いのだとか。
もしかしたら、これも人間界に似ているかもしれません。魚の群れも、人のチームも、誰についていくかで未来が変わります。
進むべき方向を見失わないためにも、ぜひ安藤さんのインタビュー動画をご覧ください。
<文/清水俊宏 撮影/星 亘>
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清水 俊宏