「市場価値は決断の数で決まる」名門ラグビー部⇒大企業⇒ベンチャーで学んだ“キャリアの本質”
独自の組織マネジメント論「識学」を提唱し、組織コンサルティング事業を展開する株式会社識学代表取締役社長の安藤広大氏。
学生時代に名門・早稲田大学のラグビー部で培った「組織のルールや違和感を受け入れる柔軟性」は、同氏の“ブレないキャリア”の原点になっている。
今回は、大企業とベンチャーの両方を経験した安藤氏が、激しく変化するAI時代を生き抜く若手ビジネスパーソンに向けて、大事なマインドセットや市場価値を高める普遍的なキャリア論を語る。
組織の一員である以上、“違和感”を受け入れる柔軟性が大事

── 学生時代に打ち込んだことは何ですか?
高校からラグビーを始め、早稲田大学では4年間ラグビー部に所属していました。本当に毎日“ラグビー漬け”の生活を送っていましたね。早稲田大学ラグビー部は常に日本一を目指すチームですが、僕自身は「どうすれば自分が試合に出られるか」と戦い続ける毎日でした。
そんななか、体育会系の組織なので、当然ながら納得しきれないことや一般的な感覚では納得しにくいルールが多くありました。しかし、そこで気づいたのは、「理不尽に感じるのは、自分の常識と違うだけ」ということです。
今振り返ると、大学時代に得た学びの中で、社会人として役立っているのは、「自分の常識や感覚と異なっていても、その組織の一員である以上は受け入れる」という姿勢を身につけられたことです。
社会人になり、ドコモやその後の転職先などいくつかの組織を経験する中でも、違和感を覚えるルールに出会うことも多々ありました。
それでも、まずはその環境に合わせて柔軟に動くことができたのは、自分にとって大きな財産だったと感じています。
── 学生時代に「将来こういうことがしたい」といった具体的なビジョンをお持ちでしたか。
実はラグビーしかやってこなかったので、まったく何もないんですよ。
就職活動もほとんどしておらず、新卒でドコモに入社できたのも、ラグビー部への入部を条件に採用されたからでした。しかし、早稲田のラグビー部では4年間努力したつもりでしたが、結局レギュラーにはなれませんでした。
そのなかで、自分より実力が下だと思っていた後輩や同期が必死に努力を重ね、試合に出場していく姿を目の当たりにしました。その時、「自分は努力しているつもりだっただけで、実際は全く足りていなかったんだ」と猛省したんです。
だからこそ、社会人では2度と同じ後悔はしないと誓い、入社を決意しました。
ドコモでの4年間で学んだ仕事の基本
── ドコモではどのような仕事をされていたのでしょうか?
ドコモでは4年間、ずっと代理店営業を担当していました。ラグビー一筋だったこともあり、ビジネスマナーやパソコンスキルといった仕事の基礎をここで身につけました。
また、代理店営業という立場上、若手でありながら一次代理店の支店長クラスと商談する機会もあり、目上の方との折衝や交渉については非常に多くの経験を積ませていただきました。
当時は数字を厳しく追う環境ではなかったものの、しっかりと成果を出したいと思っていたため、周りから言われなくても自ら目標を設定して動いていました。
担当している各代理店には明確な目標数値があったので、その達成状況を常に意識しながらサポートに注力しました。
── 定性的な評価という話が出ましたが、実際に「頑張っているから」「元気がいいから」といった理由で昇進することはあるのでしょうか。
ドコモで働いていた時は周囲からの評価は高かったのですが、本当に自分自身でしっかり数字を出せていた実感があったのは、入社後1年半から2年目くらいまでだったと思っています。
その後は当時作った実績や評価の延長線上で、実際にはそこまで成果を出せていない時期でも、“過去の貯金”のような形で評価されるという状況を経験しました。
もちろん評価されること自体は嬉しい一方で、「本当にこれでいいのか」という違和感は、当時からずっとありましたね。
「なぜ自分だけこんなに評価されているんだろう」と感じる場面もあり、実態が伴っていないのに評価されているような感覚には、どこか納得しきれない部分があったんです。この経験を通じて、評価と実態の“ズレ”のようなものについては、当時から強く意識するようになりました。
急成長ベンチャーで掴み取ったハイキャリア

── 結果的にはドコモを4年間で退職することになったそうですね。
ドコモはワークライフバランスが整い、安定した収入と時間的余裕にも恵まれたいい会社でした。しかし、そうした環境で働くうちに、自分を追い込む生活からはかけ離れた日々を送るようになっていました。
「もっと自分を追い込める場所に身を置かなければ、成長できなくなる」
そんな思いが強くなっていき、結果的にドコモを退職して携帯電話業界向けの派遣会社として業界1位のジェイコムホールディングス(現 ライク株式会社)に転職を決意しました。
── ジェイコムホールディングスへ転職した理由は何だったんですか?
もともとドコモの取引先という関係もあって、以前から接点のある会社でした。そんななか、ジェイコムホールディングスの社長と食事をご一緒する機会があり、「この社長の力で会社は急成長している」というのを強く感じたんですね。
その一方で、当時はそこまで大きくない会社だったため、成長スピードの速い環境の中で本気で頑張れば、比較的早い段階で経営に近い立場で仕事ができるかもしれないと考えたんです。
これが、転職を決めた大きな理由になっています。
── 実際に急成長中の会社へ入社し、どのように感じましたか?
もう本当に大変でしたね。ドコモ時代には代理店や派遣会社に対して要求を伝える立場で接していたのが、今度はキャリアからも代理店からも「上から物を言われる側」になったわけです。
携帯電話業界は、キャリア、代理店、派遣会社という構造の中で、派遣会社がどうしても下流の立場として見られがちです。そのような状況を踏まえ、まずは自分自身を根本から変えなければならないと感じたところからのスタートでした。
また、周囲からは「なぜドコモを辞めたのか」と言われることも少なくありませんでした。だからこそ、「絶対に結果を出さなければならない」という想いが強くなり、とにかく圧倒的な努力を積み重ねることを決意しました。
人材派遣は“人と人をつなぐ仕事”です。多くのスタッフと話し、お客様と向き合い、それぞれのニーズを深く理解する。それが成果につながる世界だからこそ、とにかく現場で人と向き合い続けました。
そして、この仕事は「誰よりも動いて、誰よりも多くの人と向き合った人が成果を出せる」という構造だと気づいたんです。
当時は今ほど働き方への規制も厳しくなかったので、徹底的に行動量を増やしたところ、比較的早い段階で成果を出すことができました。
入社3年目ごろには東京エリアの責任者を任され、そこからは経営に近い立場で仕事をさせてもらえるようになりました。
後悔しないキャリア選択の勘所
── もし今学生だったとしたら、どんなキャリアを選びますか?
キャリアはどんな選択であれ、「それをどう生かすか」が本質だと思っています。例えば僕自身、ドコモでの経験については全く後悔していません。
大企業ならではの研修制度や業務プロセスの中で、社会人としての基礎をしっかりと身につけることができた点で、非常に価値のある経験だったと感じています。
一方で、もし最初からベンチャー企業に入っていれば、より厳しい環境の中で早く成長できた可能性もあります。ただ、その場合は大企業で得られるような基礎が欠けたまま経営に進んでいたかもしれません。
本当にどんな環境にいたとしても、言い訳をせずにやるべきことに向き合い続け、全力でやり切ることが重要なんだと思います。
大切なのは、まず自分の直感を信じ、飛び込んでみることです。
たとえ厳しい環境や合わないと感じる環境であっても、それ自体が将来の糧になると捉え、「環境のせいにしない」という姿勢を持ち続ける。それがキャリアにおいて、非常に重要なポイントになるのではないでしょうか。
── もし今、学生に戻るとしたら何をやりたいですか?
正直なところ、本当は学生生活をもっと謳歌してみたいという気持ちもありました。周囲がサークル活動などを自由に楽しんでいるのに、自分だけが少しストイックで、もう少し違う時間の使い方もあったのではと思う瞬間もあったんです。
ただ、4年間という時間で見れば、早稲田大学のラグビー部で得た経験は本当にかけがえのないものでした。その環境を選んだこと自体はまったく後悔していません。
もし今、学生に戻ったとしても、やはり早稲田大学のラグビー部を選びますね。
市場価値は「どれだけ多くの決断をしたか」で決まる

── 学生や20代が持つべき、重要なマインドセットは何だとお考えですか?
どんな環境であっても構わないので、自分なりに高い目標を設定し、その達成に向けて一生懸命取り組む姿勢が大事だと思っています。その過程では、理不尽と感じる場面や思い通りにいかない壁に直面することもあるでしょう。
そうしたときに、「環境を言い訳にする」と成長は止まってしまいます。
その環境をしっかり受け入れ、自分自身をどう変えていくかに向き合えるかどうかが、その後の成長に大きく影響します。
そのため、どんな状況であっても、日々の目標に対して地道に努力を積み重ね、成果を出すためにやり切ることが重要だと思います。
── 社会人として「市場価値」を上げるポイントも同様ですか?
今後AIがさらに発展していくなかで、「不確実な状況で意思決定すること」が人間の大きな価値の一つになると考えています。
AIが判断を支援することはあっても、最終的な判断や責任を伴う決断は、簡単には置き換えられないはずです。そのような前提に立つと、社会人としての価値は「どれだけ多くの決断を経験したか」に表れていくと思っています。
そして、その決断の機会を得るためには、周囲から信頼されて、「任せても大丈夫だ」と思われる存在であること。
そのためには、自分のやりたいことだけを優先するのではなく、その組織において必要とされる役割をしっかりと果たしていくことです。
どんな環境でも、求められていることに応えられる人が、結果としてより大きな決断の機会へとつながっていくのではないでしょうか。
<構成/古田島大介 撮影/星 亘>
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Future Leaders Hub 編集部