女性の平均年収314万円という現実… 「AIを構築できるエンジニア」への転身で変わるキャリア
日本における男女の賃金格差は、先進国の中でも依然として大きい現状がある。こうした格差をなくし、キャリアと年収を伸ばす手段として注目されるのが「AIエンジニア」への転身。
今回は女性のAI・IT人材育成に取り組むMs.Engineer株式会社 代表取締役CEOのやまざきひとみ氏に、AI時代に求められるスキルの本質や、需要の尽きない市場価値を手に入れるためのキャリア戦略について話を伺った。
市場に求められ続ける存在になるための教育

── エンジニアの世界では「学んだ人」と「学んでない人」で年収が違うとのことですが、これはどういう意味なんでしょうか?
日本はOECD加盟国の中でも、男女の賃金格差が特に大きい国の一つです。特に地方で働く女性は事務職に就いている方や出社前提の働き方が多く、キャリアアップやスキルアップの機会を得にくいという課題があります。
現在、日本の女性の平均年収は約314万円と、男性と比較して低い水準にとどまっています。こうした現状に対し、単なるAIスキルを身につけるだけでなく、「AIを構築できるエンジニア」を目指すことで、エンジニア未経験からでも1年目から年収400万円超えを狙えます。
専門性や経験を深めることで、市場価値や収入を高めていける可能性があるのも、ITエンジニアという職種の魅力だと思います。
── 「AIを構築できるエンジニア」とは、具体的にどのようなスキルを指すのでしょうか。
当社のカリキュラムでAIエンジニアを目指す場合、まずはプログラミングから始めて、「ソフトウェアはどうやって作られているのか」「コンピューターはどういう仕組みで動いているのか」という基礎から学んでいきます。
その上で、「AIはどうやって作られているのか」を学び、最終的にはAIを使ったアプリケーションまで自分で作れるようになる。つまり、「AIを使う人」ではなく「AIを作る側」に回るところまで、しっかりとスキルを身につけてもらうんです。
私たちのプログラムは業界の中でもかなりハードだと言われています。平均すると8か月ほどのプログラムですが、その期間はかなり集中して勉強していただく必要があります。ただ、そこまでして身につけたスキルだからこそ、「今後も需要がなくならない領域」に進むことができるわけです。
あえて「女性限定」のコミュニティで学ぶ意味
── プログラムがハードすぎると、やはり途中で挫折してしまう人も少なくないと思うのですが、その辺りはいかがでしょうか?
Ms.Engineerが提供するAI・ITスキルブートキャンプの卒業率は95%と非常に高いのですが、その理由の一つは、オンラインで全員が参加する授業形式にあります。Zoomでカメラオンにして受講するなど、出席率を重視した仕組みが学習の継続を支えています。
リスキリングや新しい学びで、一番難しいのが「学習時間の確保」です。オンライン受講の強みは、あらかじめスケジュールに学習の枠を組み込むことができるため、無理なく継続できる点です。
また、「プログラミングには数学が必要だ」と思われがちですが、実際には新しい概念を学ぶものです。実は、日本の女性は世界的に見ても理系分野の基礎学力が非常に高いため、Ms.Engineerでも未経験から学び始めて途中で挫折するケースはほとんどありません。
── プログラムの受講者は全員女性なんですか?
Ms.Engineerが「女性限定」の学習環境にこだわるのには、大きな理由があります。現在のIT・テクノロジー分野は依然として男性比率が高く、女性がわずか2割程度という環境もあると言われています。女性が少数派となる環境では、人によっては質問や発言に心理的なハードルを感じることもあるんですよね。そのため、私たちはあえて“女性”だけで学ぶ環境をつくっています。
全員が女性だけのコミュニティだからこそ、心理的安全性が生まれ、子育て中の方でも気兼ねなく受講することができます。極端に言えば、すっぴんで参加していても誰も気にしないですし、そういう気楽さがあるからこそ、学習だけに集中できるのです。
「AIを使いこなす側」に回ることで広がるキャリア

── AIを活用すれば、誰でも一定の成果を出せるようになった中で「若いうちはとにかく時間を使って仕事をするべき」という考え方は変化していると感じますか?
AI時代において人間に求められるのは「AIに何をさせるかの指示を出すこと」と「最終的な責任を持つこと」です。要するに、何かを考えたり作業したりするところはAIがやってくれるので、コードを書くスキルよりも、AIが生成したコードを修正し、品質を保証するスキルの方が重要になっているわけです。
私は文系出身で、これまでビジネスサイドの視点から、エンジニアとともに事業を推進してきました。これからの時代はまさに、「AIやテクノロジーを最大限に使いこなす人が活躍できる時代になる」と確信したからこそ、2021年に今の会社を創業したのです。
── 優秀な人材を確保するために、採用で意識していることはありますか?
スタートアップなので、採用で優位性がないといい人材は集まりません。また、自社だけで小さく閉じてしまうと風通しが悪くなるため、副業を認めることのメリットはすごく大きいと考えています。
また、創業翌年の2022年から自らも含めて「週休3日制」を実践しています。副業がしやすくなるだけなく、お子さんがいる方には家族優先の時間をつくってもらったり、各自がリフレッシュする時間を設けたりしています。
そういった施策を継続していくことで、優秀な人材が集まり、長く働き続けられる環境をつければと考えています。
<構成/古田島大介 撮影/星 亘>
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Future Leaders Hub 編集部