「変わりたいだけでは1ミリも進まない」派遣社員から代表取締役に…“40代で習慣を変えた男”の経営哲学
「前に向かって進んでいるから、いろんな課題にぶち当たるだけであって、何の問題もないというのはできる範囲のことしかやっていない、ということです」
こう語るのは、株式会社ユニックス代表取締役の大貝範夫氏です。熊本県と福島県を拠点に、地震に強い2×4住宅パネルの製造販売から現場躯体工事まで手がける同社。グループ売上は約42億円にのぼり、10年後に100億円を目指す成長企業です。
しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。
代表就任初月に突きつけられた「キャッシュ不足」
大貝氏が代表取締役に就任したのは、今から約3年前のこと。就任の打診を受けたのは8月8日。9月1日から正式に代表として歩み始めたその直後、想像を絶するピンチが待ち受けていました。
「8月の締めで請求書が次々と届いてきて、キャッシュが1億円ほど足りないという連絡があって。就任して1か月で潰れるのかと思いました」
さらに、グループ会社の立ち上げ費用である41億円の連帯保証の問題、157枚に及ぶ書類への確認と承認……何も聞かされていなかった重荷が、一度に肩にのしかかってきたのです。
そのストレスは、やがて体にも現れました。大腸憩室出血という症状が続き、血が止まらない日々を経験します。それでも病院に行く暇もないほど仕事に追われていたと、大貝氏は淡々と振り返ります。
「借り入れもできて、支払いもできた。いい形で乗り越えてきたところでした」
ピンチはチャンスになる。そう信じてきた大貝氏にとっても、就任直後のあの時期だけは「本当のピンチかもしれない」と感じた瞬間だったといいます。

山から伐採して植林まで…循環型ビジネスモデル
ユニックスの事業は、住宅パネルの製造販売にとどまりません。
宮崎県にある製材工場で国産材の柱材を製造し、熊本県では木質バイオマス工場を稼働。製造過程で出た端材をチップ化して燃やし、新たなエネルギーを生み出す循環型のビジネスモデルを構築しています。
「山から切られた丸太を製材して、パネルを作って現場でパズルみたいにはめ込んでいく。そこで出た端材を木質バイオマスでチップにして燃やすことで新しいエネルギーを生み出す。最終的には山からの伐採と植林までを自社・グループ内で一気通貫でできるようにする、それが『林業の6次産業化』だと考えています」
木に二酸化炭素を閉じ込めることで地球温暖化に貢献し、森林を守り続けるというビジョンは、世界的な「木を使う建築」への潮流とも重なります。国産材への回帰が進む今、同社の取り組みは時代の要請そのものといえるかもしれません。
「変わりたい」だけでは1ミリも進まない
大貝氏は大学時代、携帯電話の普及期に販売の仕事にのめり込み、大学よりも仕事に夢中になった経験がありました。その後、佐川急便で約5年間働き、そこで出会った顧客の紹介で現在の会社へ。最初の3年間は派遣社員として勤め上げ、現在は代表取締役を務めます。
若い頃の自分に何かアドバイスできるとしたら——そう問いかけると、大貝氏はこう答えます。
「変わりたいと思っているだけでは1ミリも進まない。やっぱり行動して、習慣を変えていくことが大事です」
特に強調するのが「やらないことを決める」という習慣の作り方です。テレビは見ない、必要のないSNSをだらだらと眺めない。そうして生まれた時間を、自分の成長に向けていく。大貝氏自身が本格的に習慣を変えはじめたのは40代に入ってからだといい、「もっと早くやっていれば」と苦笑いします。
「失敗は、そこで終わってしまえば『失敗』で終わりです。でも改善してやっていけば、価値のある『経験』になる。試合終了のホイッスルを鳴らすのは自分自身ですから」

「無敵の人間関係」を築くために
大貝氏が社員に向けて繰り返し伝えている言葉があります。それが「無敵の人間関係を作る」というメッセージです。
「無敵って聞くと、スーパーマリオの無敵のイメージがありますよね。でも字で書くと敵がいない、と書く。本当の意味で敵を作らず、どこへ行っても自分の居場所がある。それが私の思う無敵です」
そのために大切にしているのが、経営スローガンとして全拠点の壁に貼り出している3つの言葉が「誠実・親切・かっこよく」です。
誰も見ていないときでも誠実であること。自分よりまず相手の幸せを考える親切さ。そして、何かを決断するとき「それをしたら自分はかっこいいのか、かっこ悪いのか」を判断基準にすること。
「かっこいい方に進んでいれば、他の人から見てもあの人かっこいいよねとなる。今日もかっこいい仕事をしたなと自分に言えるような一日を過ごせたら、それだけで最高じゃないですか」
外国人実習生のために英語バージョンも用意し、トイレや社員入口にまで貼り出すほどの徹底ぶり。その言葉を社内に浸透させることが、無敵の組織への第一歩だと大貝氏は信じています。
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Future Leaders Hub 編集部