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2026.07.30 16:00

スキルより「嘘をつかない」が強くなる…AI時代に重宝される“人間力の本質”


「働きたい会社がひとつも見つからなかったから、自分でつくりました」

オフィスの設計デザインからウェブ制作、不動産仲介まで、空間と企業成長を掛け合わせたクライアントワークを手がけるきのもと商会の代表の村山太一氏。その起業の原点には、前職での深い葛藤と静かな決意がありました。

自分が働きたいと思える会社を考え続ける

前職では事業部長として組織を立ち上げ、10人を超えるチームを育て上げたものの、経営陣との方針の衝突は避けられなかったという。

「経営陣のオーダーと自分がやりたいことがだんだんとずれていって、『これはちょっと違うんじゃないか』と思って、その会社を辞めることにしました。当初は転職も選択肢にありましたが、どこを見ても『ここで働きたい』と思える会社がありませんでした。ならば、自分でつくるしかない。そうして生まれたのがきのもと商会です」

会社のコンセプトはシンプルで根本的なものでした。「自分が働きたいと思える会社」であること。それがすべての制度設計の起点になっています。

顧客と真剣に向き合うための社内制度

きのもと商会には「プロジェクトオーナー制」という独自の制度があります。プロジェクトに任命されたメンバーが、そのプロジェクトにおける最高決裁者になる仕組みです。村山氏自身も例外ではありません。

「僕がこうしたほうがいいんじゃないかと言っても、断れる権利を持っています。お客さんの代わりに、お客さんのために真剣に向き合ってほしいという思いからです」

採用においても、きのもと商会のやり方は一般的な順序とは逆です。多くの企業では採用担当者が最初の窓口となり、社長は最終面接に登場する。だが村山氏は、最初のカジュアル面談に自ら出るといいます。

「この規模で社長と会えなかったら、もう終わっていますよね。採用は『営業』だと考えています。求職者の話を聞いたうえで、こちらから『うちはこういう会社で、こういうことをやっている』と能動的に伝えて、取りたい人材を取りにいくようにしています」

年間200件前後のカジュアル面談をこなしながら、最終的に10人前後を採用。新卒は2〜3人の採用を決めているそうです。

「最後まで立ち続ける人」が好かれる

経営者として最も大きかった気づきは何か。そう問うと、村山氏は少し間を置いてから答えました。

「みんな自分と同じくらい働きたいと考えているだろうと、ずっと思っていたんです。でも、そうじゃなかった。自分が『異常者』側だということに、ある時気がついたんです。自分より上の人ばかり見ていた頃は、自分もまだまだだという感覚がありました。ですが、組織を率いると、今度は動いてくれない人たちへの苛立ちが芽生えてきました」
「自分の基準」を無理に押し付けることをやめ、メンバー一人ひとりの特性を受け入れることで、リーダーとしての器を広げていった村山氏。

次に「仕事を任される人とはどんな人か」を尋ねると、今度は答えが迷いなく返ってきた。

「最終的には、逃げない人です」

プロジェクトが進む中で、誰も悪くないのに全員が悪くなるような瞬間がある。誰かがリーダーシップを取って、一人で引き受けなければ前に進めない局面です。

「そこで脱落していくと、全体に悪影響が波及する。でも最後まで立ち続けた人は、終わった後に『あのとき苦労したよね』と笑い話にできる。そっちのほうが本質的に人に好かれると思っています」

何もない場所で自分を問い直してみる

技術が変わっても、人が人を信頼する構造は変わらない。だからこそ、スキルよりも人間力を磨くことが、長期的な価値につながるというのが村山氏の信条とのこと。

「AIができますとか、何々ができますというのをメインで言っていた人は、誰でもできるようになったら価値がなくなってしまう。でも、この人は嘘をつかないとか、話せばわかってくれるという信頼は、たぶんずっと変わらない。焦って間に合わせの努力をしても意味がない。結果が出なくても、見ている人は見てくれています」

最後に、今の若者へのメッセージを求めると、村山氏はこう話しました。

「もっと人間力を上げるように動いてほしいです。おいしいものを食べて、なるべく出かけてほしい。自分が今まで通用してきた場所から出て、プリミティブな人間としてどこまでできるかを試してほしいですね」

学歴も、人間関係も普段から無意識に背負っているものを一度すべて脱ぎ捨てて、何もない場所で自分を問い直す経験。それが「いい経験」だと、村山代表は考えます。

「自分の中で満足していると、つまらない。他者から見た自分がどう変わっているか。それを意識して動き回ってほしい。人生を楽しめるくらい強い大人になってください」


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