野心を持つ若者と働きたい…20代ビジネスマンの成長を左右する「時間資本」のとらえ方
PRコンサルティング事業を中核事業とするマテリアルグループにおいて、「事業拡大」と「人材育成」を両立させる上で鍵となったのが、属人化を排した研修の体系化だった。しかし、それ以上に若手の成長を大きく左右するのが、自己研鑽に励むための「時間資本の投下」だという。
今回は、個人の「野心」を組織の発展へと昇華させる同社の教育哲学や「時間資本」の使い方について、同社代表の青﨑曹氏に話を聞いた。
「研修の平準化」を進めることが必要だった

── マテリアルグループに入社後は、どのような人材教育を行っているのでしょうか?
詳細はお伝えできませんが、かなり細かくカリキュラムを組んでいます。
一般的には1週間とか、長くても1か月ぐらい研修して配属になっていくケースが多いと思います。でも、私たちの場合は本配属までに3か月近くの研修期間を設けています。
大学の講義のように、一定の基準をクリアしないと現場には出られないくらい、かなり体系的な研修を行っていますね。マーケティングの基礎知識から、仕事の進め方、ビジネスの基本的な作法、PCスキル、さらにはAIの活用方法まで濃密にインプットしてから現場に出てもらいます。
これは、いわば仕事をする上での「最低限の土台」をつくるための研修です。そこをしっかり身につけてもらって、初めて現場で成長していけると考えています。
── 組織づくりの観点から、社内の人材教育プログラムを整備しようと考えたきっかけを教えてください。
自分自身が新入社員として転職した直後に苦労したこともそうですし、あとは会社自体が急成長し、新しいスタッフが次々と入社してくる時期を長く経験してきたことも大きかったと思います。組織の成長フェーズにおいて、教育の質を一定に保つ「研修の平準化」を進めなければ、「事業の拡大」と「人材育成の両立」が困難になるという強い危機感がありました。
会社をさらにスケールさせるには、属人的な教育ではなく、誰が担当しても一定の水準で学べる教育プログラムの構築が不可欠だったのです。
私たちの会社にとって、最大の財産は「人」そのものであり、これからも現場で培ってきたナレッジやノウハウという“秘伝のレシピ”を継承しながら、次の世代へと体系的に受け継いでいく仕組みづくりに注力していきたいと考えています。
会社以外の時間でどれだけ「自己研鑽」できるか

── 研修後に現場へ出て、伸びる人と伸びない人の差はどういったところに出るんですか?
一概には言えませんが、持って生まれた特別な才能が成長の前提になるとは考えていません。採用時に心がけているのは、「地頭のいいミーハーを採用しよう」という考え方です。ここでいう「地頭のよさ」とは、クライアントとのコミュニケーション力や、マーケティングの概念を理解する力を指します。
PRの仕事では、専門知識や考え方を身につける必要があるため、物事を理解し、応用する力を重視しているんですね。“ミーハー”というのは、いい意味で「世の中の変化に敏感であること」です。PR会社では、社会のトレンドやメディアが注目しているテーマを常に追い続けなければなりません。そうした最新情報を追いかけることにある程度楽しさを感じられる人でなければ、長く続けるのは難しいと思っています。
加えて、若いうちは「時間資本」しか持っていないと考えたときに、会社の中で働ける時間こそ意義があるわけですが、それ以外の時間で「どれだけ自己研鑽できるか」というのも成長につながると思います。
実際に「すごく伸びている」と感じる若手を見ていると、共通しているのは「自分の時間を使って学び続けていること」なんですよね。会社から与えられた環境を活かすだけでなく、「自分自身でどれだけ学び、知識や経験を吸収できるか」という姿勢こそが、長い目で見た時の成長を大きく左右するのではないでしょうか。
── 「時間資本」をうまく使うというのは、「自分はとにかくアイドルが好きだから、推しのコンサートを調べて全部通い詰める」といった使い方でもいいんですかね?
それは本当に素晴らしいことだと思います。他の人を凌駕できるぐらい、自分が愛情や情熱を注げる対象があれば、自然とその分野への理解も深まっていきます。そこに自分の「時間資本」を継続的に投じることで、知識だけでなく、人との繋がりや新たなコミュニティも生まれてくるでしょう。
そうした経験が必ずしも直接仕事に結びつくとは限りませんが、クライアントワークの中で思わぬ形で活きる瞬間はあるはずです。「好きなものを突き詰める姿勢」は、私たちのようなエージェンシー業界において非常に重要な力だと思います。
人と会い、「一次情報」に触れることを意識
── 青﨑さん自身が、これまで時間をかけて取り組んで本当に良かったと感じていることは何でしょうか。
時間を使ってよかったということでいえば、お客様やメディア関係者、社員の方々と週5日で食事に行くことですね。代表になってから7年間、平日はできる限り外で人と食事をすることを続けてきました。
そのなかで、食事をご一緒した方から、本で得た知識や印象に残った考え方を教えていただくことがあります。私は活字の本を読むことに少し苦手意識がありますが、その人自身の心に残っている言葉だったり、自分の生き方として大事にしている考え方だったりと、本のエッセンスだけを凝縮して学べる機会は非常に効率的なインプットだと感じています。
本の要約アプリではなく、食事を共にする諸先輩の方々からそういったお話を聞けるのはとても価値のあることです。そのため、自分の時間を割いてでも、「一次情報」に触れに行く姿勢をこれからも大切にしたいですね。
── マテリアル本社の会議室には一つひとつ言葉が書いてありますね。この辺りも青﨑さんが好きな言葉なんですか?
メインの会議室には「Fun First.」や「Make New.」、「Aim Higher.」といった、私たちが大切にしているバリューを掲げています。それ以外の会議室には、我々が掲げている「Switch to Red」というビジョンが反映されており、「情熱を灯して、アップデートしたら楽しいもの」を会議室の名前につけてるんですよ。
これは「この世界の情熱の代弁者として、世界をもう一歩、熱く面白くしていこう」という思いを表したものです。私たちは日々、クライアントごとに異なる商材や課題に向き合っています。だからこそ、チームとして大切にする価値観は、全員で共有しておく必要があると思っています。
そして日々の行動も、誰かに指示されたから動くのではなく、チームや仲間として大切にしているものを守り、実現するために行動する。その意識を持つうえで、こうした言葉や価値観はすごく大切なんです。
「何かを成し遂げたい」という“野心”を持つ
── 会社が急成長するなかで、どんな若者と一緒に働きたいと思っていますか。
必ず面接で聞くのは「どんな野心を持っていますか」という質問です。
“野心”とは「こうなりたい」という上昇志向とか欲望のようなもの。誰かから持ちなさいと言われて簡単に持てるものではなく、自分の内側から自然に湧き上がってくるものだと思っています。世の中に対する違和感や怒り、自分自身への悔しさも含めて、「こうありたい」という根本的な欲求を持っている方は、どんな形であれ成長していけるのではないでしょうか。
野心の内容自体はどんなものでも構わなくて、「何かを成し遂げたい」という情熱がある方には、非常に魅力を感じますね。
── 学生の頃から「自己PRをしっかりしたい」と考えている人は多いと感じますが、その中で勘違いしていると思うことはありますか?
「自己PR」という言葉には、どちらかというと「自分をアピールする」という意味合いが強いんですよ。でも、PRはそもそも「Public Relations(パブリック・リレーションズ)」というように、社会や公共との関係をつくっていくことです。
自分たちが伝えたいことを一方的に発信するのではなく、相手が何を知りたいのか、何を求めているのか。あるいは、何を伝えれば心が動くのかというのを理解した上で、コミュニケーションを設計していく。それがPRの本質だと思います。
ちなみに、マテリアルグループの採用面談では、「自己PRをしてください」という質問はあまりしていません。というのも、自己PRをお願いすると、どうしても一方的な自己紹介になってしまうことが多く、PRそのものを正しく理解していないと判断せざるを得なくなってしまいます。
それよりも採用の段階では、「この人と一緒に仕事をしたいと思えるか」「自分たちの考え方や価値観と合うか」など、人としての相性やスタンスを大切にしています。
── 青﨑さんご自身はどのような野心を持っていたのでしょうか?
私自身、学生時代から「お金持ちになりたい」という気持ちがありました。その根底には強い成長意欲や上昇志向があったんだと思います。新卒の頃は「自分の好き」を優先してアパレル業界に進みましたが、このままでは自分の野心を満たせないと次第に感じるようになって、ベンチャー企業に進むことを決めました。
私の場合は“お金”という明確な指標が、自分の野心を測る一つの物差しになっていたかもしれません。今はお金に執着しているわけではありませんが、若い頃は同世代の誰よりもお金を稼ぎたいという気持ちがありました。
収入は数字で比較できるため、自分の価値や成長を分かりやすく証明できるものだと考えていたんですね。そのため、マテリアルに入社する際は、社長に「20代で年収1000万円を稼ぎます」と宣言したんです。それは当時の自分にとっての野心であり、一つの約束でもありました。
会社は人材を社会へ輩出するプラットフォーム

── もし今の若者が御社の面接で「お金持ちになりたい」とストレートに語ったとして、それはそれで受け入れられるのでしょうか。
「お金持ちになりたい」というのは一つの手段であって、それ自体は素晴らしいことだと思っています。今の時代、キャリアを変えていくことも当たり前になっていますし、当社の中で継続的に価値を発揮し続けてくれている人も数多くいます。
私は会社というものを、「人材を育成し、社会へ輩出していくプラットフォーム」のような存在だと捉えているんです。もちろん、将来にわたって一緒に働き続けてもらえれば、これほど嬉しいことはありません。
ただ、その方が当社で何を学び、どのような経験を積み、将来どうなりたいのかといったことを具体的にイメージできていることが大切です。その解像度が高い人ほど、日々の行動も明確になり、組織への貢献度も高くなるため、成果にもつながりやすいと感じています。
── マテリアルグループに入ってくるのは、どんな野心を持った若者が多いんですか。
「地元を活性化させ、日本ブランドが世界に衝撃を与えるような土壌をつくりたい」、「家業を大きくするためのスキルと経験を身につけたい」といったように、私よりもずっと素晴らしい野心を持っている人がたくさんいます。
新卒採用の際にも、「世の中の前提をひっくり返せるような人になろう」というメッセージを伝えていますので、そうした考え方に共感してくれる方が多いと思いますね。
<構成/古田島大介 撮影/林 紘輝>
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Future Leaders Hub 編集部