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2026.09.18 16:01

「30年前の日本がそこにある」リクルート出身の女性起業家がベトナムに見出した勝機


日本市場で挑戦するよりも、成長性の高い新興国へ場所を移す。

一般社団法人エメラルド倶楽部 代表理事の菅原智美氏は、コロナ禍を経て映画制作へ挑戦。そこから誕生した香水ブランドを皮切りにベトナム市場へ進出した。

現在は拠点をベトナムへ移し、日本の美容商材の流通からラーメン店の出店まで、現地の熱気と需要を捉えたビジネスを展開している。

今回は、数々の事業を手がけてきた菅原氏の飽くなき挑戦と勝機を掴むための審美眼に迫っていく。

コロナ禍で問い直した「自分の存在意義」

── 菅原さんは、これまでどんな事業を立ち上げてこられたんですか。

私が起業したのは、今から17年ほど前になります。最初は貸会議室とレンタルオフィスの事業を立ち上げ、5年ほど経営した後に事業を売却しました。

その後はエステ事業にも参入し、10店舗を展開していました。赤字状態だった会社を引き継ぎ、1年で黒字化してバイアウトまで実現できました。

次に手がけたのがデリバリー専門の唐揚げ店で、こちらは半年で12店舗まで立ち上げ、3年ほど事業を運営した後、コロナ禍に入る直前に売却しました。

その後、コロナ禍で人と直接会うことが難しくなった時期に「自分は何のために事業をやっているんだろう」とあらためて考えるようになったんですね。もともと、できるだけ多くの人の人生を変えたい、成功するためのお手伝いをしたいという思いがあったのですが、コロナ禍では人と会うことすら難しい。そこで、「直接会えなくても、世の中に残るものをつくれないか」と考え、映画制作に挑戦することにしたんです。

── 「菅原智美」と調べたら「映画プロデューサー」と出てきて。本当にたくさんのことをやられている人だなと感じました。

コロナ禍という特殊な環境の中で、「自分がこれから何を残していきたいのか」を考えた結果、たどり着いた挑戦だったと思いますね。いざ取り組む段になってからはご縁にも恵まれ、黒木瞳さん・桜井日奈子さん出演の女性のサクセスストーリーを描いた映画を、企画段階からキャスティング、ストーリーづくりまで携わりながら、約2年かけて制作しました。

ちょうどコロナ禍だったこともあり、撮影現場でも全員がマスクを着け、ソーシャルディスタンスを保ちながら進めるなど、決して簡単な環境ではありませんでした。それでも、なんとか作品を完成させ、最終的には全国の東宝系劇場で公開することができました。

映画のキーワードから着想した香水ブランド

菅原氏が製作統括を担った映画『魔女の香水』

── 映画はどのようなストーリーになっているのでしょうか?

黒木瞳さんに香水店のオーナー役を演じていただき、そこにさまざまな悩みを抱えた女性が相談に来るという形で、ヒロイン役には桜井日奈子さんに出演していただきました。

悩みを相談すると、オーナーが「あなたに合った香りはこれだよ」とおすすめするんですけど、香りを嗅ぐことで気持ちが変わり、行動が変わって、人生が変わっていくというストーリーですね。

ちなみに、「ピンチをチャンスに」とか「相手の心を想像する」などのように、映画の中のセリフも一つひとつにこだわっていて。私自身が大切にしている言葉を10個ほどキーワードとして散りばめているんです。

映画を観ていると、自然と香水がほしくなるような作品だったので、「だったら、映画の中だけで終わらせず、本当に香水を商品化しよう」と考え、実際に香水のブランドを立ち上げて販売する事業にしました。商品づくりにあたっては、映画の中に出てくる10のキーワードから得たインスピレーションをもとに独自の香りを調合しました。

── もともと香水がお好きだったんですか。

いえ、そんなことはありません。映画のストーリーを制作するプロセスの中で、「香りの持つ力は本当にすごいな」と実体験として感じたことが始まりでした。

実は、国内における香水の日常的な使用率は3割にも満たず、世界的に認知されている「メイド・イン・ジャパン」の香水ブランドもまだ多くありません。しかし、この現状を裏返せば、未開拓の大きな可能性があるということです。そこで「これは海外市場に大きな勝機があるのではないか」と考え、台湾や香港、ベトナムといったアジア圏への卸展開を進めていったのです。

現在はベトナムに現地法人を設立し、約10人のベトナム人スタッフと一緒に事業を進めています。現地では飛び込み営業を行っているのですが、雰囲気がまさに「30年前の日本」なんですよ。

30年前、私はリクルートで飛び込み営業に明け暮れ、成果を出していた経験があるのですが、今のベトナムは当時の熱気そのものです。日本だとすぐに門前払いされてしまうようなアプローチでも、皆さん驚くほど親身に話を聞いてくださる。飛び込み営業がこれほど素直に成果につながるベトナムは、本当にすごい市場だと感じていますね。

ラーメンを「記念日に食べる特別な食事」に

── 香水の販売以外には、具体的にどのような事業を展開されているのでしょうか?

日本の美容健康商材を輸入し、ベトナムの美容サロン企業に卸すという事業を展開しています。私が代表理事を務める女性経営者コミュニティ「エメラルド倶楽部」には、美容商材を手がける会員様が数多くいらっしゃいます。

一方で、近年の国内市場は非常に厳しい状況が続いているため、「会員をはじめとする化粧品メーカーの商品を世界に届けよう」ということで始めた事業になります。そして、ハノイにJAPAN SHOP358という日本商品のセレクトショップをオープンし、店舗運営も並行して進めているような状況です。

ベトナムは目覚ましい経済成長を遂げており、まさにビジネスチャンスに溢れた市場だと実感していますね。

── 日本の商品はやはり売れ行きがいいのでしょうか?

日本の商品は現地でも非常に人気が高く、ニーズも確実にある一方で、日系企業がまだ十分に進出できていないという印象があり、そこに大きな可能性を感じました。

ベトナムとの関わりは、約2年前に現地の国営企業とお取引する機会をいただいたことが始まりでした。これまでアジアのさまざまな国を見てきましたが、ベトナムの市場を知れば知るほど、「今、最もチャンスがあるのはベトナムだ」と確信し、本格的な事業展開を決意したのです。

当初は定期的に現地へ通っていましたが、ここ3か月ほどは現地に拠点を移し、事業の立ち上げを急ピッチで進めています。

さらに直近では豚骨ラーメン専門店をオープンし、飲食事業を展開していきます。今後3年間のうちに30店舗ほどまで広げていきたいと考えています。ベトナムの方にとって、ラーメンは「記念日に食べる特別な食事」といった位置づけなんですよ。

価格帯は1杯1000円程度で提供する予定です。現地の一般的な食事が1杯500円に満たない価格であることを考えると、その約2倍の価格設定となり、“高級路線”として展開していくことを想定していますね。

── 面白いですね。なぜ、ラーメン屋を始めようと思ったんですか?

今まで世界的な飲食トレンドやシェアを見てきた中で、ラーメンが最もビジネスチャンスを秘めた分野だと感じています。私自身、これまで日本で唐揚げ店を経営したことはありましたが、ラーメン店の経験はありませんでした。

しかし、ラーメンを作るのは私ではなく、ラーメン職人を現地に連れていき、実際の味づくりをお願いしています。お互いを信頼し合い、一緒に事業を形にしていけば必ず成功できると思っているので「やる気があれば、何でもできる」というのが、私の持論ですね。

場所を変えるだけで、結果は劇的に変わる

── ベトナムで事業を立ち上げるにあたり、どのような点に勝算を見出していますか?

ベトナムの経済が成長しているということは、「一般の人々の収入も上がっている」ということなんですね。そのため、衣食住すべての分野が伸びると思っていて、特に女性の視点で見ると「美容・健康・教育」にお金をかける傾向があるため、これらの分野は必ず成長していくでしょう。

実際にベトナムで生活してみると、現地のニーズや課題がリアルに見えてくるんです。「これもできる、あれもできる」と、次々に事業の可能性を発見できるのに、なぜもっと多くの日本人が参入してこないのかと不思議に思えるほど、たくさんのチャンスに満ちあふれています。

ベトナムでやりたいことは本当にたくさんありますが、まずはラーメン店の展開と、日本の商品・商材を現地で広める事業を、確実に成功させたいと考えています。

私は本当に「起業するならベトナムも選択肢に入れたほうがいい」と思っています。日本人はどうしても、「まず日本で成功して、それから海外へ」と考えがちですよね。しかし、そもそも日本国内で成功すること自体が簡単ではありません。それなら、最初から海外で成功を目指す方がハードルは低いと考えています。

── 確かに、今から日本でラーメン屋を経営しようと思っても、激戦の中で生き残っていくのは難しそうですよね。

おっしゃる通りで、もし挑戦するのであれば、少し勇気を出してベトナムに行ってみることをおすすめします。日本でやっていることを、そのまま持ち込むだけでいいんですから。

「場所を変えるだけで結果が変わる」というのは、ラーメン事業に限った話ではなく、あらゆる事業に共通することです。何をやるにしても、“場所”を変えるだけで、大きな成功を収められる可能性が高くなる。

今のベトナムは、まさにそうしたチャンスが数多く存在している状況だと思います。

<構成/古田島大介 撮影/林 紘輝>


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