家具メーカー出身のコンサルタントが気づいた「看護師業界」の根深い問題

医療・介護業界のコンサルタントを行っている株式会社キュービック•ジョブズ代表の鈴木壮介氏は現在、まったく新しい挑戦に取り組んでいます。
オーストラリアでのワーキングホリデーを通じて、看護師・介護職の人材ミスマッチの解消を目指す。そんな構想でスタートさせたプロジェクト「HITOYASUMI」の立ち上げまでの経緯と込めた思いを伺いました。
家具メーカーから医療・介護業界へ
鈴木氏のキャリアは、医療・介護とはまったく縁のないところから始まりました。
中学生のころに家具の展示会に足を運んだことをきっかけに、インテリアやデザインの世界に強く惹かれた鈴木氏。滋賀県立大学でデザインや建築を学び、新卒で業務用家具メーカーに入職します。飲食店やオフィス、病院といった施設向けに家具を提案する仕事に就きました。
その後、家具に加えてレントゲンや機械浴槽、リハビリ機器などをパッケージで提案する医療・介護系企業に転職。さらに実際にデイサービスを運営する会社でも経験を積み、設備から運営ノウハウまでを幅広く身につけていきます。
「中小企業って、どうしても代表の考え方に合わせて動かなきゃいけない。もっとお客さんに突き詰めて寄り添っていってもいいんじゃないかって思う部分がありました」
そうした思いが積み重なり、「自分自身でこだわりを持って提案やサポートができる環境を作りたい」と決断。こうして設立したのが医療・介護に特化したコンサルティング会社である株式会社キュービック・ジョブズでした。
社名に込められた意味は「立体的に仕事を広げていく」こと。デイサービスの立ち上げ支援を例に取れば、立地選定からコンセプト作り、内装デザイン、採用活動、ホームページ制作まで、事業全体のトータルでクライアントを支えるスタイルが特徴です。

人材紹介料100万円払ってもすぐに退職する現実
コンサルタントとして現場に深く関わるなかで、鈴木氏は業界の根深い課題に直面します。採用におけるミスマッチです。
「看護師を採用する際、年収400万円だとして120万円ほど紹介料をお支払いしなきゃいけない。それでも、採用後にマッチングがうまくいかないことが往々にしてあります」
クライアントが高額の費用を投じても、入職後わずか数か月で「合わない」と退職してしまう現実を鈴木氏は何度も目の当たりにしてきました。この課題を自分の手で解決しようと、人材紹介事業の立ち上げを決意します。
しかし、単なる人材紹介会社では差別化が難しい。そんな折、知人を通じてオーストラリアでワーキングホリデーのサポートをする人物と出会い、新たな発想が生まれます。
ひと休みしながら、キャリアを見つける
「日本の病院の勤務内容がキツすぎてやめたいっていう声をよく聞きます。それでも頑張って働いてる人ももちろんいますが、一部の人は看護師自体をやめてしまう。せっかく頑張って学生のころから資格を取ったのに」
看護師資格を持っている人がワーキングホリデー先で「アシスタントナース」という資格を取得すると、現地で病院や介護施設で働くことができます。
そのため、日本から年間およそ1万2000~1万4000人がワーキングホリデーでオーストラリアへ渡り、そのうち約7〜8%、つまり1000人前後が看護師だといいます。
こうした現状への問題意識が、プロジェクト「HITOYASUMI」の核心です。日本の過酷な医療現場から一旦距離を置き、オーストラリアでアシスタントナースとして働きながら、自分のキャリアを見つめ直す。そして帰国後は、病院に戻るのか、デイサービスに転じるのか、あるいは語学力を生かして外国人が多く通うクリニックで働くのか……各々に合った選択肢を提示するサービスです。
2025年10月にオーストラリアとのコネクションが生まれ、翌3月には自ら現地を訪問。帰国後に職業紹介業の申請手続きを進め、認可は今年9月に下りる予定です。構想から1年も経たないうちに、着実に形になりつつあります。
AIで性格を言語化し、ミスマッチをなくす
「HITOYASUMI」が目指すのは、送り出すだけではありません。
ワーキングホリデー中の利用者が、滞在先の学校や職場での経験を定期的にアプリ上で発信する仕組みを開発中であり、その開発業務は大学生に依頼しています。食事の情報でも、仕事の記録でも、発信内容をAIが分析し、その人のキャラクターをレポートとしてまとめる。そのデータを帰国後の就職先に提供することで、採用のミスマッチを減らしていくシステムの構想です。
「ワーホリ中はそういったシステムを使ってサポートをしていく。彼女たち、彼らの性格や行動を日本に帰ってきたときにスムーズに自己紹介をできるように作っていってあげたいと考えています」
単なる人材紹介にとどまらず、海外滞在中のキャリア形成を支え、帰国後のマッチング精度を高める。そのための仕組みを今まさに構築している最中です。

「仕事に熱くなってくれる人」と一緒に
現在、鈴木氏は業務委託メンバーを活用しながら、実質1人で事業を推進しています。人材紹介業の認可取得を機に社員の採用にも本腰を入れる予定です。
「アグレッシブな性格でも、慎重に石橋を叩きながら進む性格でも、いろんなキャラクターな人がいていいと思います。ただ、『仕事に熱くなってくれる人』という点は一緒に働くうえで絶対外せないですね」
ワーキングホリデーの主な対象となる20代と対等に話し、海外に興味を持つ若者たちと共に事業を育てていきたいと語ります。
コンサルから始まり、人材へ、海外へ。仕事を「立体的に広げる」というキュービック・ジョブズの哲学そのままに鈴木氏の挑戦は着実に広がりを見せているようです。
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Future Leaders Hub 編集部